リオの名音楽家ホドリゴ・レッサ、COVID-19の犠牲になった父に捧げるサンバ

Rodrigo Lessa - No Jeito

バンドリン名士ホドリゴ・レッサ新譜『No Jeito』

新しいショーロやサンバの形を模索するブラジルの超絶技巧バンドリン奏者、ホドリゴ・レッサ(Rodrigo Lessa)の2021年新譜『No Jeito』。全曲がホドリゴ・レッサの作曲で、伝統的なショーロをベースとしながらも現代的で物語性に富んだ展開を見せる豊かなソングライティングに脱帽、さらにリオデジャネイロの一流奏者たちとの鉄壁のアンサンブル演奏も楽しめるブラジル音楽好きには堪らない一枚となっている。

(2)「Rala Coxa」にはリオを代表するサックス奏者エドゥアルド・ネヴィス(Eduardo Neves)らとのプロジェクト、パゴーヂ・ジャズ・サルヂーニャス・クラブ(Pagode Jazz Sardinha’s Club)をフィーチュア。バンドリン、トロンボーン、サックスのソロも秀逸。

ヴォーカルにその優れたリズム感覚から“ミス・ヒチモ(Miss Ritmo)”の愛称で呼ばれるタイス・モッタThaís Motta )を迎えたサンバ(5)「Pro Dia Nascer Aldir」はホドリゴ・レッサの作曲家としてのセンスが光る。イントロにはイタリアの有名な歌曲「Bella Ciao(さらば恋人よ)」の一節を引用し、ブルーノートを効果的に用いたメロディーラインは明らかにジャズの手法を意識したもので、ブラジル特有のリズムやコード進行とも相まって新鮮なサンバの様相。女性クイーカ奏者マヌー・ダ・クイーカ(Manu da Cuíca)の演奏も素敵だ。

軽快なサンバ(1)「No Jeito」

リオ界隈の優れた演奏家が多数集結したこの作品。未曾有のコロナ禍ということもあり、おそらく殆どは各自の自宅で録音されている…そのためか一部の楽器は音質に難があるものもあるが、聴いていると自然と体が踊りだすような魂に迫るサンバだ。

サンバとカルナヴァルを愛する家庭に育ったホドリゴ・レッサ

ホドリゴ・レッサは1962年リオデジャネイロ生まれ。父は著名な経済学者であり、リオデジャネイロ連邦大学学長やブラジル開発銀行総裁などを歴任したカルロス・レッサ(Carlos Lessa)。

父カルロスは高官でありながらリオのカルナヴァルを心から愛する人物で、主にリオ連邦大学の生徒と職員で構成されるサンバチーム、Minerva Assanhadaを設立したことでも知られている。そんな父も新型コロナ感染症に伴う合併症のため2020年6月に83歳で逝去してしまった。
息子ホドリゴによる今作は、そんな偉大な父へ捧げた作品でもある。

1997年に最初のアルバム『Solbambá』をリリース、作曲家/バンドリン奏者をメインにPagode Jazz Sardinha’s Clubなどでも活躍してきた。ブラジルの音楽とキューバ、アフリカ、カーボベルデなどの音楽の融合を試みた『Das Ilhas Mestiças』(2007年)など多くの作品をリリースしている。

Rodrigo Lessa – bandolim
Rogério Souza – guitar
Luís Louchard – bass
Xande Figueiredo – drums
Celsinho Silva – pandeiro

Guests :
Paulo Moura – clarinet
Lula Galvão – guitar
Roberto Marques – trombone
Edu Neves – saxophone
Antonio Guerra – piano
Thaís Motta – vocal
Manu da Cuíca – cuica
Jessé Sadoc – trumpet
Felipe Radicetti – keyboards
Bernardo Aguiar – percussion
Gabriel Improta – guitar
Fernando Leitzke – piano
Everson Moraes – trombone
Lucas Brito – clarinet
Pagode Jazz Sardinha’s Club

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