- 2023-08-06
- 2023-08-05
黄昏時の魔法のような音楽。フィンランドの“電気羊飼い”が示す伝統と革新の狭間
“電気羊飼い”を意味するグループ名を持つフィンランドの3人組ユニット、セーコパイメン(Sähköpaimen)の2ndアルバム『Hämärä』は非常に興味深い音楽作品だ。アルバムタイトル「Hämärä」とは“黄昏”の意味で、昼と夜の曖昧な境界線を彼らの伝統と革新の両方に足を踏み入れた音楽性に喩えている。
“電気羊飼い”を意味するグループ名を持つフィンランドの3人組ユニット、セーコパイメン(Sähköpaimen)の2ndアルバム『Hämärä』は非常に興味深い音楽作品だ。アルバムタイトル「Hämärä」とは“黄昏”の意味で、昼と夜の曖昧な境界線を彼らの伝統と革新の両方に足を踏み入れた音楽性に喩えている。
この夏、二人の天才が来日する。それもBlue NoteやBillboardといった格式高いジャズ箱ではなく、フェスへの出演である。一人は本サイトでも取り上げたことのある「神童」ジェイコブ・コリアー(Jacob Collier) 。そしてもう一人が、そのMVも含めすべてにおいて独特なクリエイティビティを見せつけながらも、質の高さからそれすらもスタンダードに昇華されてしまう「奇才」と呼ぶべきマルチアーティスト、ルイス・コール(Louis Cole)だ。2022年のベストアルバムに入れそびれてしまった最新作『Quality Over Opinion』を今回は来日を記念してご紹介したい。
現在のアゼルバイジャンのジャズシーンをリードする二人の音楽家、ピアニストのエティバル・アサドリ(Etibar Asadli)と木管楽器奏者アラフサル・ラヒモフ(Alafsar Rahimov)。深い音楽的パートナーシップを築いてきた二人が、デュオの名義で新作『Sexy Caffards』をリリースした。アゼルバイジャンの伝統音楽ムガームに強く影響されたジャズが、プログレシッヴ・ロックやエレクトロニックの衣を纏い、グロテスクでもあり美しくもある異様な世界観を創出する。
Orbitalの最新作『Optical Delusion』。UKテクノ四天王(Underworld,Chemical Brothers,Prodigy,Orbital)の一角である大ベテランが約5年ぶりに放つ本作は、まさに作品とも呼べるOrbitalらしいメッセージ性の強いアルバムに仕上がった。
レイドバックしたシンセサイザーがゆったりとバックに流れる別名「癒し系EDM」であるトロピカルハウスは、オーストラリア出身のアーティスト、トーマス・ジャック(Thomas Jack)が生みの親と言われており、まさに南国感溢れるサウンドを特徴としたハウスの総称である。今回発表された最新作『Thrill of the Chase』は今までの作品通り、個性豊かなボーカリストを迎えたアルバムであるが、これまでの作品に比べ、より肩の力の抜けたアルバムとなっている。
まもなく活動開始から20周年を迎えるエレクトロ・スウィングのパイオニア、テイプ・ファイヴ(Tape Five)が8枚目となるアルバム 『Both Sides of the Moon』をリリースした。今作も変わらずレトロなスウィング・ジャズとダンサブルなエレクトロ・サウンドの完璧な融合が楽しく、リスナーを細胞レベルで元気づけてくれる最高のアルバムだ。
フランス北東部の街ストラスブールを拠点に活動するジャズユニット、エミール・ロンドニアン(Emile Londonien)の新作『Jazz Contenders』。2021年にデビューし、ロンドンのニュージャズのシーンからも注目される彼らの洗練されたグルーヴィーなサウンドが楽しめる好盤だ。
10冊を超える著書を持つ文学者であり、投資銀行の重役も務め、音楽家としてはベーシスト/プロデューサーとしてグラミー賞5回、ラテングラミー賞3回の受賞歴を持つインド系アメリカ人カビール・セガール(Kabir Sehgal)が、北インドの楽器サロード奏者のアマーン・アリ・バンガシュ(Amaan Ali Bangash)とアヤーン・アリ・バンガシュ(Ayaan Ali Bangash)の兄弟とともに制作した2022年新譜『Sand and Foam』。
ペドロ・ルイスの2022年の最新作『Terral』は、彼の最高にかっこいい過去曲に焦点を当てながら、ペルナンブーコのプロデューサー、ユリ・ケイロガ(Yuri Queiroga)がエレクトロニックの要素を加えて蘇らせた一大プロジェクトだ。
フランスの気鋭トランペッター、アントワーヌ・ベルジュー(Antoine Berjeaut)が自身の新譜『Chromesthesia』をリリースした。各プレイヤーもアンサンブルも複雑なことをやっていながら、アルバム全体の温度感は低め。有機的なリズムなのに、どこか無機質的な印象も受ける。この不思議な感覚もフランスの前衛ジャズらしい。
ワシントン州シアトルに生まれ、ブラジルに移住し2000年代初頭にブラジルの民族音楽とヒップホップやベイス・ミュージックを組み合わせ、グローバル・ベイスのムーヴメントの立役者の一人となったDJ/プロデューサー、マガ・ボー(Maga Bo)が実に10年ぶりの新作『Amor (É Revolução)』をリリースした。
ジャズとヒップホップの両分野で活躍するフランスのフルート奏者、リュディヴィーヌ・イッサンブール(Ludivine Issambourg)が彼女のバンド、アンチループス(Antiloops)を率いて制作した新譜『Supernova』。ジャケットやMVでの衣装はなかなかに強烈だが、アグレッシヴなフルート演奏を中心とした音楽の内容は申し分なくかっこいい。
イタリア・ナポリのディスコファンクユニット、ニュー・ジェネア(Nu Genea)の4年ぶり新譜『Bar Mediterraneo』。シンセやベース、ギターのカッティングが効いたディスコ・ファンクを基幹に、南イタリアやアフリカ、中東、南ヨーロッパのさまざまな民族音楽が組み合わさり誕生したサウンドは懐かしさもあり、何よりも心を躍らせる。
新型コロナウイルスの影響で日程を延期しての開催となった2022年グラミー賞。王者ブルーノ・マーズ(Bruno Mars)率いるシルク・ソニック(Silk Sonic)が主要部門で強さを見せる中、ジョン・バディステ(Jon Batiste)の最多5部門受賞がサプライズを起こしたのは記憶に新しいのではないだろうか。最優秀アルバム賞に輝いた『We are』の楽曲「Sing」を共作・プロデュースしたのが、ザック・クーパー(Zach Cooper)とヴィック・ディモツィス (Vic Dimotsis)のプロデューサーデュオ、キング・ガービッジ(King Garbage)。彼らは同グラミー賞にノミネートされたリオン・ブリッジズ(Leon Bridges)の楽曲「Sweeter」でもペンを執る、まさに今後のアメリカン・ソウルを牽引していくと言っても過言ではないアーティストだ。