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消えかけている音
ユネスコが「緊急に保護する必要がある無形文化遺産」に記載した音楽の伝統から。地球儀の上では、赤い小さな輪で示しています。
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ユネスコが「緊急に保護する必要がある無形文化遺産」に記載した音楽の伝統から。地球儀の上では、赤い小さな輪で示しています。
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世界の35の旋法を、平均律に丸めない音程で並べ、楽器の録音で鳴らし、発祥の地を地球儀でたどるインタラクティブ図鑑。ピアノの鍵盤では弾けない音(マカームの4分の3音、ガムランの音律、ブルース・ノートなど)を目と耳で比べ、実際の音楽をApple Musicで試聴できます。調律ファイルとMIDIをDAW用に書き出すこともできます。
近代ヨーロッパの調性音楽の土台となった七音音階。16世紀にグラレアヌスが「イオニア旋法」と名づけた並びが、和声とともに世界中のポピュラー音楽へ広がった。この図の基準線(平均律)にすべての音がぴたりと乗る、いわば物差しの音階。
中世の教会旋法の第1旋法。自然的短音階の6番目の音を半音上げた形で、短調でありながらどこか明るい。ブリテン諸島の民謡に多く、1959年の「So What」ではモード・ジャズの代名詞になった。
長音階の6番目の音から始めたのと同じ並びで、短調の基本形。16世紀にグラレアヌスが「エオリア旋法」と名づけた。主音へ半音で引き寄せる導音をもたない素朴な短調として、ロックやポップスでもよく使われる。
自然的短音階の7番目を半音上げ、主音へ強く引き寄せる「導音」をつくった形。6番目と7番目のあいだに増2度が生まれ、12音に丸めればアラブのナハワンドと同じ並びになる。西洋の短調の和声を支えてきた。
隣り合う音がすべて全音で並ぶ六音音階。中心になる音がなく、どこから始めても同じ形になる浮遊感が特徴で、19世紀末から20世紀初頭のパリでドビュッシーが印象的に用いた。
アフリカ系アメリカ人の歌から生まれた響き。3度・5度・7度の「ブルー・ノート」は鍵盤の音と音の間に落ち、歌やギターでは引きずり上げるように歌われる。図では揺らぐ音として示した。
アンデス高地の音楽に広く聞かれる、半音を含まない五音音階。ケーナやサンポーニャで奏でられ、並びは日本の民謡音階と同じになる。地球の反対側で同じ骨組みが育ったことになる。
主音のすぐ半音上に第2音をもつフリギア旋法を土台に、終止の和音で第3音を半音上げるのがフラメンコ流(図の白抜きの音)。ラ・ソ・ファ・ミと下る「アンダルシア終止」が、ギターと歌に独特の哀愁を与える。
東欧ユダヤ人の祈りの旋法(アハヴァ・ラバ)であり、婚礼で奏でられるクレズマーの響きを支える音の並び。2番目と3番目の音のあいだの広い増2度が特徴で、アラブのヒジャーズとほぼ同じ骨組みをもつ。
増2度を上下二か所にもつ七音の並び。オスマン帝国の都市音楽やギリシャのレベティコで愛され、1927年に録音された「ミシルルー」は、1962年にディック・デイルのサーフ・ロックで世界中に知られた。
短調の3度と、半音高い4度をあわせもつ旋法。ウクライナの叙事歌ドゥーマ、ルーマニアのドイナ、クレズマー、ギリシャのレベティコまで、東欧と地中海に広く聞かれる。ユダヤの祈りの名から「ミ・シェベラフ」とも呼ばれる。
オスマン古典音楽のマカーム。トルコの理論ではオクターヴを53の「コンマ」に分け、ヒジャーズの4音を5・12・5コンマ(約113・272・113セント)で数える。アラブのヒジャーズとよく似ていながら、増2度の幅などが少しずつ違う。理論値と実際の演奏の高さにも違いがある。
アラブ古典音楽の基本とされるマカーム。3番目と7番目の音が長短どちらでもない「中立音程」で、平均律のピアノでは弾けない。その高さはエジプトでは低め、シリアでは高めなど、地域と時代によって揺らぐ。下行では7番目を低く取ることも多い(白抜き)。
主音のすぐ上に4分の3音ほどの狭い音程を置く、アラブ世界で広く親しまれるマカーム。半音でも全音でもないその一歩が、素朴で温かな表情を生む。ペルシャのシュールと骨組みがよく似ている。
アラビア半島西部の地名をもつマカーム。主音の上に短2度と増2度が続く緊張感のある響きで、東欧のフライギッシュ、北インドのラーガなど、遠く離れた土地に同じ形が見つかる。
4番目の音が完全4度より低い「減4度」に沈むのが最大の特徴。上へ進もうとするたびに足元が少し下がるような響きで、嘆きや祈りの表情と結びつけて語られることが多い。
主音そのものが「半フラット」、つまり鍵盤の間にあるマカーム。主音のすぐ上に4分の3音を置くため、主音からの距離で見ると半分以上の音が平均律から外れる。ピアノではどの音から始めても弾けない。
イラン古典音楽の体系ラディーフの中で、最も基本とされるダストガー。2番目の音が4分の1音ほど低い「コロン」で、5番目の音は旋律の流れによって高さが変わる「モタガイエル(変わる音)」になる(白抜き)。イランの民謡の多くもこの旋法に根をもつ。
二つの中立音程と、増2度に近い広い音程を二度含む力強いダストガー。叙事的な音楽に向くとされ、悲しみを帯びたシュールやセガーとは対照的な性格をもつ。
北インド古典音楽の夜のはじめに奏でられるラーガ。4番目の音(マ)が半音高い「ティーヴラ・マ」で、並びは西洋のリディア旋法と同じになる。インドの音程は純正律に近い響きで取られることが多く、図もそれに近い値で示した。
夜明けに奏でられる北インドのラーガ。2番目と6番目の音を低く取り、ゆっくり揺らす(アンドーラン)ことで厳かな表情が生まれる。12音に丸めるとヒジャーズ・カールと同じ並びになる。
2・3・6・7番目の音をすべて低く取る(コーマル)ラーガ。演奏会の最後を締めくくる曲として親しまれる。12音に丸めると西洋のフリギア旋法と同じ並びになる。
4番目と7番目を抜いた五音のラーガ(南インドではモーハナム)。中国の五声、エチオピアのティジタ、日本のヨナ抜き長音階と同じ骨組みを、インドでは装飾と滑らかな音の移りで歌い上げる。
南インド古典音楽(カルナータカ音楽)の五音のラーガ。4番目と6番目を抜いた明るい響きで、演奏会の冒頭に象の神ガネーシャを讃えるディークシタルの「ヴァーターピ・ガナパティム」がよく歌われる。
ジャワのガムランの五音音階。オクターヴをほぼ5つに分けた並びで、西洋の半音も全音も当てはまらない。実際の調律は楽団ごとに異なり、その違いが各ガムランの個性になる。図は5等分の理想値。
大小の音程が不均等に並ぶ、ガムランのもう一つの音階。実際の曲では7音から5音ほどを選んで使い(パテット)、一つの楽団がスレンドロとペロッグの両方の楽器を揃えることが多い。図はオクターヴを9等分した近似。
オクターヴをほぼ7等分すると説明されてきたタイ古典音楽の音律。1885年のエリスの測定に始まるこの「等分説」には実測にもとづく異論もあり、歌い手や管弦楽器はもっと柔軟に音程を取る。図は7等分の理想値。
宮・商・角・徴・羽の五つの音からなる中国の音階。どの音を終止の中心にするかで「宮調式」「羽調式」などに分かれ、東アジアの広い地域の音楽に影響を与えた。図は宮を主音とした並び。
散調(サンジョ)やパンソリで中心となる、哀切な表情の旋法。音の並び自体は日本の民謡音階に近いが、ある音を大きく揺らし、別の音を折り曲げるように下げる装飾が、旋法そのものを形づくる。音の数え方は研究者によって説明が分かれる。
長音階から4番目(ヨ)と7番目(ナ)を抜いた五音音階。明治の唱歌から演歌、昭和の歌謡曲まで日本の近代の歌に浸透した。1961年の「上を向いて歩こう」はこの音階で書かれ、世界的なヒットになった。
日本の民謡やわらべうたに多い五音音階。音楽学者の小泉文夫は、日本の音階を完全4度の枠とその中の一音の組み合わせ(テトラコルド)で説明し、民謡・都節・律・琉球の四つを示した。その一つ。
半音を二つ含む五音音階。江戸時代の箏曲や三味線音楽など、都市の芸能に多く用いられた。「さくらさくら」や、八橋検校の作と伝わる「六段の調」が代表例として知られる。
雅楽や声明で用いられてきた音階。雅楽の六つの調子のうち、平調・黄鐘調・盤渉調が律、壱越調・双調・太食調が呂に分類される。「越天楽」は平調の曲として最もよく知られる。
ド・ミ・ファ・ソ・シの五音音階。本土の五音音階が半音を避けるのに対し、ミとファ、シとドの二つの半音を含み、特にシからドへの動きは沖縄らしさのしるしになる。
エチオピアの四つの基本旋法(キニト)の一つで、名は「郷愁」を意味する同名の歌に由来する。中国の五声と同じ骨組みだが、3番目を下げた短調型の変種もある(白抜き)。1970年代のエチオ・ジャズでも数多く録音された。
女性歌手が拍子木を打ちながら歌い、リュートと太鼓が伴奏する北ベトナムの詩歌の芸。宮廷や文人のサロンで洗練されたが、担い手が減り、保護が急がれている。
コルシカ島の男声三声の無伴奏歌。三つの声部が重なり合い、教会の典礼と村の世俗の場の両方で、口伝えで受け継がれてきた。
縦笛ツォールを吹きながら、喉で低い持続音を同時に鳴らす、モンゴルのウリャンハイの人々の音楽。自然の音を写す曲が多い。
喉を震わせるような独特の発声で、二人以上が歌い交わすクロアチアの歌。一人が息の続くかぎり音を伸ばすのが聴きどころとされる。
横笛リンベで、鼻から息を吸いながら頬にためた息を吐き続ける循環呼吸により、モンゴルの長い歌(オルティン・ドー)を途切れずに吹き通す技法。
一本で一音しか出ない瓢箪のラッパを五本以上、順番に吹き継いで一つの旋律を作る、ウガンダのソガの人々の音楽と踊り。王の儀式で演じられてきた。
北マケドニア西部の男声二部の歌。一人が旋律を歌い、もう一人が持続する声で寄り添う。婚礼や祝いの席で即興的に歌われ、羊飼いの笛やバグパイプが加わることもある。
棹の長いリュート、チャペイを弾きながら、民話や詩、仏教の物語を歌うカンボジアの芸。内戦期に多くの担い手を失った。