セシル・マクロリン・サルヴァント、失われたものへの憧憬滲む新譜『Ghost Song』

Cécile McLorin Salvant - Ghost Song

セシル・マクロリン・サルヴァント『Ghost Song』

現代最高峰のヴォーカリスト、セシル・マクロリン・サルヴァント(Cécile McLorin Salvant)の新譜『Ghost Song』は、彼女の豊かな歌の表現力が楽しめるだけでなく、タイトル通り亡霊やノスタルジア、憧れをテーマとしたコンセプト・アルバムとしてトータルに楽しめる作品に仕上がっている。

セシル・マクロリン・サルヴァントはこの2年間で自身の祖父と、バンドのドラマーであったローレンス・レザーズ(Lawrence Leathers)を亡くすという出来事を経験。今作では7曲のオリジナルの他、ケイト・ブッシュの(1)「Wuthering Heights」をはじめとする5曲を独自の解釈でカヴァーし、プロデューサーとしての個性と才能を発揮する。共同プロデューサーも務めるピアニストのサリヴァン・フォートナー(Sullivan Fortner)を中心としたバンドをバックに、表現者としての成熟を見せた。

(3)「Ghost Song」

アルバムのコンセプトを象徴するような(7)「I Lost My Mind」はパンデミックによるロックダウン中に書かれた曲とのことで、「わたしは自分自身を見失ってしまった/わたしを探すのを手伝ってくれる?」と繰り返させる力無い叫びが悲痛に響く。

サウンド面でも彼女の声を中心に、ピアノ、ダブルベース、ドラムスなど伝統的なジャズ編成のほか曲によってフルートやラテン・パーカッション、リュートなども用い多彩な表現を見せ、完成度の高さを窺わせる。

(5)「Until」

グラミー賞を3度受賞、現代ジャズを代表するヴォーカリスト

作曲家、歌手、そしてビジュアルアーティストとしても活躍するセシル・マクロリン・サルヴァント。1989年にフランス人の母親とハイチ人の父親のもとに生まれた彼女はフロリダ州マイアミで育ち、5歳でクラシックピアノを習い始め、8歳で児童合唱団で歌い、10代の頃からクラシックの声楽レッスンを始めた。フランスのダリウス・ミヨー音楽院ではバロック音楽とジャズを学んでいる。

早くから頭角を表し、2010年のセロニアスモンク国際ジャズコンペティションで優勝。
グラミー賞最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバムを『For One to Love』(2015年)、『Dreams and Daggers』(2017年)、『The Window』(2018年)でそれぞれ受賞。名実ともに現代のジャズ・ヴォーカルを代表する存在となっている。

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