• 2024-10-20
  • 2024-10-21

個性的かつ創造的な一大叙事詩。マリア・ジョアン&アンドレ・メマーリ 稀代の音楽家のデュオ作

ポルトガルの鬼才歌手マリア・ジョアン(Maria João)と、ブラジルの天才ピアニスト/作曲家アンドレ・メマーリ(André Mehmari)の共演作『Algodão』が登場した。二人の卓越した表現力により、極めてアーティスティックな大傑作といって過言ではないだろう。

  • 2024-10-19
  • 2024-10-19

ルゾフォニアと地中海音楽の魅力を凝縮したバンド、Ayom。3つのテーマから成る傑作新譜『Sa​.​Li​.​Va』

ブラジル、アンゴラ、イタリア、ギリシャ出身の6人のメンバーで構成され、ポルトガルのリスボンとスペインのバルセロナを拠点とする多文化バンド、アヨム(Ayom)の2ndアルバム『Sa​.​Li​.​Va』が素晴らしい。ブラジル出身で2008年にバルセロナに移住した女性ヴォーカリスト/打楽器奏者ジャブー・モラレス(Jabu Morales)を中心とするバンドは、ブラジル、アンゴラ、そしてカーボベルデというルゾフォニア(ポルトガル語圏諸国)の音楽文化を結び、そこに地中海沿岸の伝統音楽の影響も加え、とても面白い作品を作り上げた。

  • 2024-10-18
  • 2024-10-18

多文化共生の象徴的オリエンタル・ポップ、Kit Sebastian 世界へ羽ばたく3rdアルバム

従来の音楽の“常識”や“法則”を打ち破りながらも、排他的なマニアたちの溜飲を下げるだけでなく、市井の多くの人々の間でインフルエンスしそうな興味深いグループが現れた。ロンドンを拠点に活動する男女ユニット、キット・セバスチャン(Kit Sebastian)の奇妙な音楽には従来なかった新しさがあり、同時に時代を超えたノスタルジアがあり、そしてポップスの純粋な至福と安心感もある。

  • 2024-10-16
  • 2024-10-13

精神世界を解き放つ。ピアノとチェロによる清らかで静謐なデュオアルバム『Pauses in Shades』

チェリスト/歌手のマヤ・ベルシッツマン(Maya Belsitzman)と、ピアニストのウリエル・ヘルマン(Uriel Herman)はともにクラシック音楽を学んでいた20年以上前からの友人だったが、これまでにレコーディングを行ったことはなかった。COVID-19によるパンデミックは彼らに再会と初めての録音の機会を与え、二人は事前のリハーサルも楽譜も計画も何もないままにスタジオに入り、互いに深い精神的な対話を重ねることによって僅かなコンポージングを即興で彩った素晴らしい音楽『Pauses in Shades』を作りあげた。

  • 2024-10-14
  • 2024-10-12

現代の歌姫マイラ・アンドラーデ、ロンドンのユニオン・チャペルでのライヴ盤リリース

カーボベルデ出身のSSW、マイラ・アンドラーデ(Mayra Andrade)の5年ぶりのアルバム『reEncanto (Live at Union Chapel)』は、自身2枚目となるライヴ盤となった。歴史ある教会でありながら、優れた音響のライヴ・コンサート会場としても有名なロンドンのユニオン・チャペルで2023年11月に行われた演奏を記録したもので、伴奏者はギターのジョジェ・アルメイダ(Djodje Almeida)のみという編成で極上のクレオール・ポップのひとときを味わえる。

  • 2024-10-13
  • 2024-10-12

ブラジル史上最高のギタリスト、ガロートの優美なワルツを現代に伝える傑作。『Valsas de Garoto』

ブラジルの名手、ギタリストのアンドレ・シケイラ(André Siqueira)とアコーディオン奏者のトニーニョ・フェハグッチ(Toninho Ferragutti)が、ブラジル音楽史最高のギタリストと称えられるガロート(Garoto)が遺したワルツ曲集『Valsas de Garoto』をリリースした。その洗練された楽曲、そしてアレンジと演奏は驚くばかりで、クラシカルな優美さと、フランスのミュゼットにも通じる静かに踊りたくなるような抒情性、ショーロの即興に潜む独特のサウダーヂは、どれをとっても一級品だ。

  • 2024-10-11
  • 2024-10-11

ブラジル音楽の粋が浮き立つ。ドイツのSSWドータ・ケール、深く美しい幸福感を醸す新作

ドイツ・ベルリンを拠点とする女性SSWドータ・ケール(Dota Kehr)と、ブラジル北東部のセアラー州フォルタレザ出身の男性SSWダニーロ・ギリェルミ(Danilo Guilherme)による双頭名義(通称 Dan & Dota)のアルバム『De Repente Fortaleza』がリリースされた。ブラジル北東部特有の空気を纏った軽妙で美しいロック/トロピカリアを継承するサイケロックで、主にポルトガル語で歌われる二人のヴォーカルが織りなす世界観が素晴らしいアルバムだ。

  • 2024-10-10
  • 2024-10-09

至福の歌とギター。イスラエルのSSWナルキス・ラアムのデビュー作『אחיזה אחרת』

イスラエルのシンガーソングライター/ギタリストのナルキス・ラアム(Narkis Raam, ヘブライ語表記:נרקיס רעם)のデビュー・アルバム『אחיזה אחרת』がとても良い。穏やかで瑞々しい彼女の歌とギターを中心としつつ、センスよく注意深くアレンジされた控えめなバンドによる彩りが添えられている。

  • 2024-10-08
  • 2024-10-08

6ヵ国で育った気鋭ギタリスト、シュブ・サラン。今も探し続けるアイデンティティー

作曲家/ギタリストのシュブ・サラン(Shubh Saran)が新作EP『Being Anybody Else』をリリースした。インドの外交官の息子として各国を転々として多様な文化の中で育ちグローバルな感覚を身につけると同時に、それはつまり逆説的に彼の帰属意識を希薄にしており、“アイデンティティの探求”はこれまでの彼の作品における重要なテーマでもあった。今回の作品は各メディアから絶賛された前作『Inglish』のささやかな続編とも言える内容で、楽曲のタイトルにも彼がいまだに自己探究の途上でその心を浮き沈みさせている様が垣間見える。

  • 2024-10-06
  • 2024-10-05

ポスト・ボッサの旗手ジョン・ローズボロ、妙々たるアンサンブルで魅せる新譜『Fools』

2021年のデビュー作『Human Nature』が絶賛され、新世代の有力なボサノヴァ・ミュージシャンとして名乗りをあげたNYのSSWジョン・ローズボロ(John Roseboro)が待望の2枚目となるフルアルバム『Fools』をリリース。メイ・シモネスをはじめブルックリンの実力派の友人たちが強力にジョン・ローズボロをサポートしており、前作でも味を出していた程よい塩梅のユルさはそのままに、アンサンブルの魅力も楽しめる極上の一枚となっている。

  • 2024-10-05
  • 2024-10-03

レゲエとボサノヴァに恋するクロード・フォンテーヌ、程よい軽さが心地よい新作『La Mer』

レゲエとボサノヴァを60〜70年代のフレンチポップ・テイストで歌うアメリカ合衆国のシンガーソングライター、クロード・フォンテーヌ(Claude Fontaine)の2ndアルバム『La Mer』がリリースされた。“ホンモノ”を求めるなら他を当たった方が良いが、気軽に夏の終わりのアンニュイをいい感じのムードで包み、なんとなくアダルトで小洒落た時間を過ごしたいなら、この作品をおすすめしたい。

  • 2024-10-04
  • 2024-10-03

「踊れ、誰も見てはいない」──UKジャズ新時代を拓くエズラ・コレクティヴ、音楽の喜びを覚醒させる新譜

2022年リリースのアルバム『Where I'm Meant To Be』で、ジャズバンドとして史上初めてマーキュリー賞を受賞した頃から、UKジャズの中心には常にエズラ・コレクティヴ(Ezra Collective)という存在があった。ジャズバンドがおおよそ到達できるものとは多くの人が思ってもいなかった高みに到達した彼らは、多くの人々に音楽的な豊かさや発見をもたらし、そのポジティヴな音楽は人々を勇気づけた。

  • 2024-10-03
  • 2024-10-01

ブラジルの鬼才ギンガ&ベベ・クラメール。“燻し銀”のデュオ作品

ギタリストのギンガ(Guinga)とアコーディオン奏者のベベ・クラメール(Bebê Kramer)、ブラジルの2人のベテランによるデュオ作『Par Constante』がリリースされた。収録曲はラストのベベ・クラメール作曲の(8)「A casa」を除きすべてギンガの作曲で、彼のファンにとってはお馴染みの名曲たちを実に慈しみ深い2人による演奏で楽しめる極上の作品だ。

  • 2024-09-29
  • 2024-09-27

パキスタン発・稀代のミクスチャージャズバンド Jaubi、新章の始まりを告げる2ndアルバム

パキスタン北西部の都市ラホールを拠点とするバンド、ジャウビー(Jaubi)の音楽には目を見張るものがある。ウルドゥー語で“何でも”を意味する言葉にちなんで名付けられた彼らのモットーは「良い音と良い気分のものを何でも作る」であり、その宣言通りにヒンドゥスターニー古典音楽、スピリチュアルジャズ、ファンク、ヒップホップなどをごちゃ混ぜにする。そんな彼らが、“新章”と呼ぶに相応しい新作『A Sound Heart』でさらに進化した姿を見せた。