- 2026-08-15
- 2026-08-07
“変わり者”と呼ばれようとも、自分の周波数で生きること──NYのラッパー、Homeboy Sandman の境地
2026年に登場したラッパーのホームボーイ・サンドマン(Homeboy Sandman)とプロデューサーのジャック・スプラッシュ(Jack Splash)とのコラボ・アルバム『Resonance Frequency』は、ジャズ・ヒップホップの長い系譜の最新章として必聴の作品だ。
2026年に登場したラッパーのホームボーイ・サンドマン(Homeboy Sandman)とプロデューサーのジャック・スプラッシュ(Jack Splash)とのコラボ・アルバム『Resonance Frequency』は、ジャズ・ヒップホップの長い系譜の最新章として必聴の作品だ。
中国出身、現在は米国ニューヨークで活動する作曲家/ピアニストのストラッキー・イー(Strucky Yi)が初のジャズ・アルバム『Setting Out』をリリースした。ギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman, g)やサイモン・ムーリエ(Simon Moullier, vib)といったNYの最前線で活躍するミュージシャンを迎え、楽曲ごとにバンド編成を変えつつ、高度なインプロヴィゼーションを交えながらストラッキー・イーの美しいオリジナル曲の演奏が繰り広げられる。
マーシャル・アレン(Marshall Allen)、1924年生まれ。サン・ラ・アーケストラ(Sun Ra Arkestra)のリーダーを、サン・ラ亡き後30年以上務めている人物だ。筋力は30歳頃をピークに加齢で低下し、80歳以降は低下速度がさらに大きくなるという。サックス演奏に必要な呼吸筋、姿勢保持、指の巧緻性を100歳超で維持することは生理学的にも極めて難しいはずだ。これらの事実を鑑みれば、100歳で初のソロ名義のアルバム『New Dawn』をリリース後、わずか1年で第2作目となる本作『101: An Audio Odyssey』をリリースしてきたことに、奇跡に限りなく近いものを見る驚きを禁じ得ない。
「カーヌーン」という楽器名を聞いて、すぐにピンとくる人は多くはないかもしれない。しかし、ひとたびその音色に触れたなら、誰もが瞬く間にその魅力の虜になってしまうはずだ。今回紹介するのは、1995年にハイファで生まれたパレスチナ人で、米国の名門バークリー音楽大学でジャズを学んだカーヌーン奏者フィラス・ズレイク(Firas Zreik)。近年の音楽はますますグローバル化が進み、カーヌーンでジャズを演奏する音楽家も増えているが、そんな中でもカーヌーンを即興音楽の主役へ押し上げた重要人物の一人とみなされている。
パンデミックの最中、ニューヨークの公園や街角で演奏する動画をSNSに投稿し、世界中の注目を集め急速にフォロワーを獲得したジャズ・トリオがいる。彼らはニュー・ジャズ・アンダーグラウンド(New Jazz Underground)。このサックス、ベース、ドラムスというコードレス編成のトリオは、全員がジュリアード音楽院の出身で、ジャズの伝統に根差しながらヒップホップやインターネット文化という時代性を武器に、多くの若者たちからの支持を集めた。
米国ロサンゼルスを拠点に活動するインド系のヴォーカリスト/作曲家/マルチ器楽奏者シャラダ・シャシダール(Sharada Shashidhar)は、現代の西海岸のジャズシーンでも一際異彩を放つ存在だ。スピリチュアルなバンドサウンドを中心とした前作『Soft Echoes』(2023年)からより深化し、エレクトロの比重を増しつつ更なる内面性を志向するような新作『A Foot on the Ground』で、彼女は“何を奏でるか”より、“どのような心で音を生み出すか”を自問自答する。
今、これほど面白い一流のジャズトリオは、ほかにないと思う。トリオ・グランデ(Trio Grande)。ギタリストのギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)、サックス奏者のウィル・ヴィンソン(Will Vinson)、そしてドラマー/ベーシストのネイト・ウッド(Nate Wood)から成るトリオだ。特に、器用にベースを弾きながらドラムスを叩く(ドラムスを叩きながらベースを弾く、の方が正しいかもしれない)ネイト・ウッドの姿を初めて見れば「大道芸か」と見紛うかもしれないが、聴けば聴くほどに彼らが音楽的にも“人並外れた”存在だと気付くはずだ。
アメリカ合衆国のピアニスト、ゲイリー・ヴェルサーチェ(Gary Versace)の新譜『Three Track Mind』は、今年(2026年)のジャズ・ピアノトリオ作でベストの一枚だろう。オーソドックスなピアノトリオ編成で、収録曲のうち半数がスタンダードという構成は、一見すると保守的でつまらなそうに思えるかもしれないが、何よりもジャズという音楽の即興によるインタープレイの楽しさに改めて気づかせてくれる。あるいは、2回演奏される「Autumn Leaves」といった古典的な楽曲でさえ、これだけ自由で創造的に生まれ変わることができるのだという最高の事例だ。
バークリー・グローバル・ジャズ・インスティテュート(Berklee Global Jazz Institute)で出会った3人──米国出身のピアニストのチェイス・モリン(Chase Morrin)、キプロス出身の打楽器奏者ジョージ・ラーニス(George Lernis)、パレスチナ出身のチェロ奏者ナシーム・アラトラシュ(Naseem Alatrash)による新作アルバム『Ize Trio: Global Prayer』は、各地の伝統音楽を取り込みながらますますグローバルに多様化してゆく現代ジャズの中にあって、その独自性から一際興味の惹かれる作品だ。
ポルトガルのシンガーソングライター、マヌエル・リニャレス(Manuel Linhares)の2026年新作『Atlântico』がリリースされた。プロデュースは前作『Suspenso』に引き続き、現代ブラジル音楽の最重要人物のひとりであるアントニオ・ロウレイロ(António Loureiro)が務め、演奏にはロウレイロ(ds, synth, key)のほかニューヨークのジャズの第一線で活躍するグレン・ザレスキ(Glenn Zaleski, p)やオル・バレケット(Or Bareket, b)、小川慶太(Keita Ogawa, ds, perc)ら国際色豊かなメンバーが参加。録音はニューヨークとポルトガル・ポルトで行われ、名実ともに越境的な作品となっている。
ジョーイ・ワロンカー(Joey Waronker)、ルーク・レイノルズ(Luke Reynolds)、そしてザック・レイ(Zac Rae)という長年アメリカの音楽を支えてきた3人のセッション・ミュージシャンによる新プロジェクト『Proof』。その源泉にあるのは、1960〜70年代のサイケロックへの憧憬と、英語以外の言語で歌われるポピュラー音楽への関心だった。
インドのシタール奏者プルバヤン・チャタジー(Purbayan Chatterjee)と、アメリカ合衆国のギタリスト、マーク・レッティエリ(Mark Lettieri)の興味深い共演作『Feathered Creatures』がリリースされた。自身の音楽的基礎を超越したい、という根源的な欲求から生み出されたこのアルバムは、インドのシタールと西洋のエレクトリック・ギターというそれぞれの文化を代表する弦楽器が対等に対話し、新しい音楽の風景を見せてくれる作品だ。
現代のブラジル音楽やジャズ、あるいは音楽という概念そのものに絶大な影響を与え、2025年に惜しまれつつ亡くなったブラジルの音楽家エルメート・パスコアールへの最大限の敬意が込められたトリビュート・アルバム『Hermeto Universal』がリリースされた。アルバムはブラジル出身の超絶的なハーモニカ奏者ガブリエル・グロッシ、フランス出身の鍵盤奏者ローラン・クーロンドルの双頭名義だが、リズムセクションにスナーキー・パピー主宰者でベーシストのマイケル・リーグ、キューバ出身の名ドラマー ルイ・アドリアン・ロペス・ヌッサを擁するスーパーバンドでの演奏が核となっている。
ロサンゼルスのジャズ文化の発信拠点であり、同時にあらゆるクリエイティヴなインスピレーションの源であったジャズクラブ・ブルーホエール(Bluewhale)は、かつて世界を覆った、あの狂乱のような新型コロナ禍の影響で2020年末に閉店を余儀なくされた。リトル・トーキョーとして知られるLAのダウンタウンで韓国出身の元ジャズシンガーであるジュン・リー(Joon Lee)が2009年に創業したこの店は、自由で開かれた資本主義社会のなかにありながら、商業至上主義に陥らずに、新しい芸術や文化の発信拠点として頑固なまでにその独自路線を貫き、数多くの音楽家たちからリスペクトされていた。