- 2026-05-31
- 2026-05-28
女性ヴァイオリン奏者率いるスウェーデンの北欧ジャズ・クインテット新譜『Phoenix』
ノルウェー出身、現在はスウェーデン・ヨーテボリを拠点とする女性ヴァイオリン奏者テレーセ・リーン・エヴェンスタ(Terese Lien Evenstad)率いるクインテットの2026年作『Phoenix』は、ヴァイオリンとクラリネットをフロントに据えた珍しいクインテット編成で、北欧ジャズ特有の静謐さだけではない、生命のエネルギーを感じさせる作品だ。
ノルウェー出身、現在はスウェーデン・ヨーテボリを拠点とする女性ヴァイオリン奏者テレーセ・リーン・エヴェンスタ(Terese Lien Evenstad)率いるクインテットの2026年作『Phoenix』は、ヴァイオリンとクラリネットをフロントに据えた珍しいクインテット編成で、北欧ジャズ特有の静謐さだけではない、生命のエネルギーを感じさせる作品だ。
「静謐」と「強烈」、この一見相反するとも思える言葉が最も当てはまるというのが、スウェーデン出身のピアニスト、ヨエル・リュサリデス(Joel Lyssarides)への世間の評価らしい。私は彼の過去作について“まるで冬の冷たく引き締まった空気のように端正な音。クラシック音楽からの影響の強いジャズで、思慮深く紡いでいく絶妙なハーモニーは深呼吸したくなるほどの澄んだ美しさ”と評したが、なるほど、静謐なだけでなく「強烈」という言葉も言い得て妙だな、と2026年最新作『Late on Earth』を聴いて思った。
リリースのたびに深く美しい抒情性で極上の安らぎを与えてくれる「Liberetto」が、5年ぶりの完全なる新作で再び戻ってきてくれた。アルバムタイトルは 『Liberetto V: Echomyr』、「echo」は音が響き渡る広大な空間を表し、「myr」は古ノルド語で“荒野”を意味する造語なのだという。いつものように、親しみやすさの奥に隠された複雑な構造の美しい楽曲を、単に卓越した技巧だけではない“心の込められた”演奏で聴かせてくれる彼らの心の奥底から湧き上がる情熱と魂によって奏でられた音で、その空間は満たされている。
ウクライナ出身のピアニスト/作曲家アンドリー・ポカズ(Andrii Pokaz)と、スウェーデン出身のドラマー、マグヌス・オストロム(Magnus Öström)のデュオEP『Wakeido Island』。6曲の収録曲はそれぞれに異なる物語性を持ち、ピアノとドラムスの多層的な対話が様々な景色を描き出す、じっくりと耳を傾け浸りたい作品となっている。
アルバム・タイトルの『Døgnville』とは、どうやらノルウェー語に特有で翻訳が難しい言葉らしい。「døgn」(24時間、昼夜)と「vill」(野生の、道に迷った、混乱した)という単語が組み合わさっており、文字通りには「昼夜迷子」のようなニュアンスを持つという。単に時差ぼけの場合もあれば、ノルウェー北部での白夜や極夜で時間感覚を失った状態、あるいは数日間病気で寝込んだ後の時間の混乱といったときに使われるようだ。
ノルウェーの先進的なジャズを牽引するピアニスト/作曲家ブッゲ・ヴェッセルトフト(Bugge Wesseltoft)が、個性豊かなゲストを迎えて制作した2025年新譜『Am Are』。アルバムではソロからトリオまでメンバーを変えて様々な編成やサウンドを試すなど実験的な要素がありつつ、ジャズの伝統にもしっかりと根差し、聴きやすくも刺激的な作品だ。
ヨーナ・トイヴァネン・トリオ(Joona Toivanen Trio)はフィンランドでももっとも長い活動歴を誇るトリオのひとつだ。日本でも、彼らの存在は比較的知られているだろうと思う。なにせ、彼らのデビュー作『Numurkah』(2000年)を“若干21歳のトリオ、フィンランドからの新風!”と紹介し大々的に売り出したのはあのレジェンダリーな澤野工房だったからだ。実際、彼らの音は北欧ジャズらしいリリカルさがあり、さらに若手特有の背伸びした青さもあり、非常に魅力的に映った。
1960年にノルウェーのオスロで生まれ、小さな港町ラルヴィクで育ったベーシスト/作曲家テリエ・ゲヴェルト(Terje Gewelt) 。10歳のときにギターを手にし弦の振動に心を奪われ、14歳でエレクトリックベースに魅了され、17歳でアコースティックベースと運命的な出会いを果たした彼はその後渡米し名門バークリー音楽大学でジャズを学び、ジャコ・パストリアスやデイヴ・ホランドに個人指導を受け、その技と感性を磨いてきた。
ジャズの名門・ECMレーベルより、トランペット奏者マティアス・アイク(Mathias Eick)の新作『Lullaby』がリリースされた。メンバーはカルテット編成で、ピアノのクリスチャン・ランダル(Kristjan Randalu)、ベースのオーレ・モルテン・ヴォーガン(Ole Morten Vågan)、そしてドラムスのハンス・フルベクモ(Hans Hulbækmo)で、エストニア出身のクリスチャン・ランダル以外は全員がノルウェー人という構成。アルバムは全体的にメランコリックで、深く沈むような美しさがあるが、同時に温かな情熱を秘めている。
2020年にアルバム『Storstrejk』でデビューして以来、スウェーデンのジャズシーンで注目を集める5人組、ヘドロスグルッペン(Hederosgruppen)の3枚目のアルバム『Stilbrott』がリリースされた。彼らのスタイルはジャズの伝統に則りつつも独自の創造性や芸術性を追求するもので、ジャケットに描かれた“V字ジャンプの先駆者”であるスキージャンプ選手ヤン・ボークレブ(Jan Boklöv)が象徴するような自由と革新性を賛美している。
革新的なスタイルで知られるノルウェーのピアニスト/作曲家、シェーティル・ムレリド(Kjetil Mulelid)のトリオによる4枚目のアルバム『And Now』がリリースされた。ピアノ、ダブルベース、ドラムスという一般的なピアノトリオ編成だが、手数の多い攻めのピアノ、ときにフリージャズを思わせる高次元の絡みを見せるアンサンブル、それでいて北欧らしい叙情性を失わない好盤となっている。
モニカ・ゼタールンド(Monica Zetterlund)がビル・エヴァンス(Bill Evans)のトリオをバックに、アメリカのスタンダードやスウェーデンの伝統歌を歌った『Waltz For Debby』(1964年)というアルバムを愛するジャズファンは多いだろう。幼い頃からジャズに親しみ、ジャズとともに育ったアイスランド生まれのピアニスト/歌手アンナ・グレタ(Anna Gréta)もまた、その魔法の虜になり、それを自身の音楽的指針としてきたひとりだった。
ピアノとトランペットのドイツの兄弟デュオ、ジュリアン&ローマン・ヴァッサーフール(Julian & Roman Wasserfuhr)がチェロ奏者のイェルク・ブリンクマン(Jörg Brinkmann)を迎え録音したアルバム『Safe Place』は、アルバムタイトル“安全な場所”が示すとおり、日常の喧騒から離れ、雑念を取り払い、静かに心を洗うための音楽だ。
フィンランドのピアニスト/作曲家のアレクシ・トゥオマリラ(Alexi Tuomarila)の新作『Departing the Wasteland』は、エスビョルン・スヴェンソン・トリオ(e.s.t.)以降の現代的な北欧ジャズの雰囲気を持つ作品だ。ロックや現代音楽の趣向を反映した構成で、技巧と感情のバランスの取れた総合的に優れたアルバムとなっている。