- 2024-02-08
- 2024-02-07
調律の異なる2台のグランドピアノとルネサンス・ヴァイオリンによる異色のデュオ作
ヴァイオリニストのアダム・バウディヒ(Adam Baldych)と、ピアニストのレシェック・モジジェル(Leszek Możdżer)。ポーリッシュ・ジャズを代表するこの2人によるデュオ・アルバム『Passacaglia』は、期待を超える素晴らしい作品だった。クラシックとジャズを内包しながらもそのどちらとも異なる、プリミティヴな“音楽そのもの”の体験はまさに唯一無二だ。
ヴァイオリニストのアダム・バウディヒ(Adam Baldych)と、ピアニストのレシェック・モジジェル(Leszek Możdżer)。ポーリッシュ・ジャズを代表するこの2人によるデュオ・アルバム『Passacaglia』は、期待を超える素晴らしい作品だった。クラシックとジャズを内包しながらもそのどちらとも異なる、プリミティヴな“音楽そのもの”の体験はまさに唯一無二だ。
ピアニスト/作曲家、クバ・チホツキ(Kuba Cichocki)『Flowing Circles』は、随所に前衛的な表現を交えた刺激的なジャズが楽しめる優れたアルバムだ。1984年ポーランド生まれ、現在はニューヨークで活動する彼の信条は心、精神、身体が三位一体となった音楽表現。伝統と革新、感情と技術といった一見相反する概念を融合することに情熱を捧げる彼らしい独創性が各楽曲の中に凝縮され、素晴らしい仕上がりとなっている。
ノルウェーのピアニスト、ブッゲ・ヴェッセルトフトと、ともに元e.s.t.のベース奏者ダン・ベルグルンドとドラマーマグヌス・オストロムによるトリオ、リムデン(Rymden)。3枚目のスタジオ・アルバムとなる『Valleys and Mountains』は一聴した感じ、これまでの開放的で冒険的な印象のサウンドから地に足のついたサウンドにシフトしたような印象を受けた──だが、…
デンマークのピアノ奏者カーステン・ダール(Carsten Dahl)と、ノルウェーのベース奏者オーレ・モルテン・ヴォーガン(Ole Morten Vågan)、そしてラトビア出身のドラムス奏者イヴァルス・アルトゥニアン(Ivars Arutyunyan)。北欧の名手3人による『Prism』は、ジャズらしいスウィング感も、欧州らしい抒情性も兼ね備えた見事なアルバムだ。
ジャケット絵に驚いて聴かずにスルーしてしまうのはあまりに勿体ない。これはフィンランドの現代ジャズシーンを代表するピアニスト、アキ・リッサネン(Aki Rissanen)の2023年新譜『Hyperreal』。同郷トランペット奏者ヴェルネリ・ポーヨラ(Verneri Pohjola)と、トルコ出身ドラマーのロバート・メメット・イキズ(Robert Mehmet Ikiz)を迎えた今作で、知的で情熱的なサウンドスケープを繰り広げる。
ノルウェーのピアニスト、ヘルゲ・リエン(Helge Lien)の新譜『Funeral Dance』は、彼が師と仰ぐウクライナ生まれのピアニスト、ミハイル(ミーシャ)・アルペリン(Mikhail Alperin, 1956 - 2018)への追悼を込めて制作したアルバムだ。自身のトリオに加えミーシャとの共演歴もあるサックス奏者のトーレ・ブルンボルグ(Tore Brunborg)を迎えており、静かに、そして確かな意志をもって偉大なピアニストを悼む。
傍に寄り添い、疲れた心を優しく洗ってくれるような音楽だ。ノルウェーのピアニスト/作曲家、マレン・セルバーグ(Maren Selvaag)の2019年作『Bare Være』。ピアノ、ダブルベース、ハーディングフェーレ(ハルダンゲル・フィドル)、そしてフォークハープという珍しい編成で、素朴な音色と洗練された演奏で心の脆い部分を直接癒す“北欧ジャズ”の絶品。
ジャズとクラシックに跨って活躍し、他の追随を許さない圧倒的な超絶技巧とユーモアのセンスで知られるフィンランドの奇才ピアニスト/作曲家イーロ・ランタラ(Iiro Rantala)。ソロピアノ作『Potsdam』から1年ぶりのリリースとなる2023年新譜『Veneziana』は、多くの芸術家たちが憧憬した水の都ヴェネツィアをテーマに、かの地に生きた作曲家たちへの敬意を表し新たに書かれた楽曲群を、ベルリン・フィルハーモニーの名手たちを従えて演奏した実況録音盤だ。
ウクライナ出身の歌手ローラ・マルティ(Laura Marti)が、スウェーデンのベーシスト/作曲家ラーシュ・ダニエルソン(Lars Danielsson)へのトリビュート・アルバム『Africa』をリリースした。アルバムには(1)「Africa」や(3)「Lviv」といったラーシュ・ダニエルソンの過去の名曲のほか、ラーシュがローラのために書き下ろした新曲(5)「For Laura」も収録されている。アレンジはウクライナを代表する女性ピアニストのナターリヤ・レベジェヴァ(Nataliya Lebedeva)によって施されている。
ラーシュ・ダニエルソンの人気プロジェクト“Liberetto”の名曲をシンフォニー・オーケストラで再演する、ファン垂涎ものの作品が登場した。『Lars Danielsson Symphonized』と題された2枚組の今作は、おなじみのカルテットに加え、スウェーデンのイェーテボリ交響楽団(Gothenburg Symphony Orchestra)の絢爛なオーケストラが参加。ジャズ・カルテットとクラシカルなアンサンブルが一体となり、Liberettoシリーズの各作品から厳選された名曲を奏でる。
今もっとも“北欧的”で、底知れぬ叙情を感じさせてくれる高い音楽性を誇るピアノトリオといったら、彼らの右に出るものはほかになかなか居ないだろう。スウェーデン出身のドラマーエミル・ブランクヴィスト(Emil Brandqvist)が率いるEmil Brandqvist Trio。2013年に弦楽四重奏も加えたファースト・アルバム『Breathe Out』をリリースし、徐々にヨーロッパでの地位を築き上げていった彼らは、2023年の通算6枚目のアルバム『Layers of Life』でもその音楽に宿る見えない力を失わない。
イスラエル出身、現在はデンマークを拠点に活動するピアニスト/作曲家エヤル・ラヴェット(Eyal Lovett)の4thアルバム『Through the Rain』。感傷を運ぶ媒体としての音楽の役割を最高のレベルで体現した、アーティストの感性と表現力がリスナーの想像力を強く刺激する傑作だ。
2018年のデュオ作『Hummingbird』も好評を博したノルウェーのピアニスト、ヘルゲ・リエン(Helge Lien)と同国のスライド・ギター奏者クヌート・ヘム(Knut Hem) による新作『Villingsberg』が届いた。カントリーやブルーグラスのフィーリングを持ちながら、やはり曲調や音は北欧そのものの装いで、前作がアメリカーナならぬ“ノルディカーナ(Nordicana)”と評されたという逸話も頷ける。
西アフリカ・ガンビアのグリオの家系を継ぐコラ奏者ダウダ・ジョバルテ(Dawda Jobarteh)の最新作『Do You Know a Place Called Flekkeroy?』は、ノルウェーのトランペット奏者グンナー・ハレ(Gunnar Halle)を大々的にフィーチュアした北欧とアフリカそれぞれの叙情性が見事にマッチした稀有な作品だ。