- 2026-08-05
- 2026-08-04
古来より人類がその叡智をかけて探求した“宇宙創世”を辿る旅。スルジャン・イヴァノヴィッチ・カルテット新譜
ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエヴォ出身のドラマー、スルジャン・イヴァノヴィッチ(Srdjan Ivanovic)が率いるカルテット「Blazin' Quartet」の2026年新譜『Cosmogonie』は、ギリシャ神話の天地創造(Cosmogony)にインスパイアされた、壮大なコンセプト・アルバムだ。
ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエヴォ出身のドラマー、スルジャン・イヴァノヴィッチ(Srdjan Ivanovic)が率いるカルテット「Blazin' Quartet」の2026年新譜『Cosmogonie』は、ギリシャ神話の天地創造(Cosmogony)にインスパイアされた、壮大なコンセプト・アルバムだ。
パンデミックの最中、ニューヨークの公園や街角で演奏する動画をSNSに投稿し、世界中の注目を集め急速にフォロワーを獲得したジャズ・トリオがいる。彼らはニュー・ジャズ・アンダーグラウンド(New Jazz Underground)。このサックス、ベース、ドラムスというコードレス編成のトリオは、全員がジュリアード音楽院の出身で、ジャズの伝統に根差しながらヒップホップやインターネット文化という時代性を武器に、多くの若者たちからの支持を集めた。
今、これほど面白い一流のジャズトリオは、ほかにないと思う。トリオ・グランデ(Trio Grande)。ギタリストのギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)、サックス奏者のウィル・ヴィンソン(Will Vinson)、そしてドラマー/ベーシストのネイト・ウッド(Nate Wood)から成るトリオだ。特に、器用にベースを弾きながらドラムスを叩く(ドラムスを叩きながらベースを弾く、の方が正しいかもしれない)ネイト・ウッドの姿を初めて見れば「大道芸か」と見紛うかもしれないが、聴けば聴くほどに彼らが音楽的にも“人並外れた”存在だと気付くはずだ。
アルゼンチンのドラマー/作曲家ナウエル・ラマヨ(Nahuel Ramayo)による珠玉のアルゼンチン・ジャズ新譜『De Paisajes Y Colores』。クインテット編成のバンドにはアルゼンチン現代ジャズを牽引するピアニストのセバスティアン・マッキ(Sebastián Macchi)も参加し、ハイレベルかつ、この地の音楽に特有の清々しく澄んだ空気を感じさせてくれる素晴らしいアルバムだ。
ジョーイ・ワロンカー(Joey Waronker)、ルーク・レイノルズ(Luke Reynolds)、そしてザック・レイ(Zac Rae)という長年アメリカの音楽を支えてきた3人のセッション・ミュージシャンによる新プロジェクト『Proof』。その源泉にあるのは、1960〜70年代のサイケロックへの憧憬と、英語以外の言語で歌われるポピュラー音楽への関心だった。
アルゼンチン第3の都市、ロサリオを拠点とするインストゥルメンタル・ジャズファンクバンド、ラテロニアス(Latelonius)の2026年新譜『Lonius』が最高だ。パーカッション奏者2人を含むソリッドなリズム隊と強力な管楽器セクション、変幻自在のギターにキーボード、さらにはターンテーブル奏者も備えた12人の大編成(バンドメンバーは8人だが、準メンバー的に4人が加えられている)で繰り出される完膚なきグルーヴが脳天を貫き、神経を電流で刺激する。
グアドループの伝統的な音楽「グウォカ」を現代的に再解釈する活動で知られるドラマー、ソニー・トルーぺ(Sonny Troupé)。2026年リリースの『Evy Danse』は、2013年の『Voyages et rêves』、2017年の『Reflets Denses』から連なる三部作の完結編として位置付けられており、アルバムを通して断片的に語られる架空の女性「Evy」の物語を通して、ソニー・トルーぺ自身の音楽の変容とその終着点を表現する野心的な作品となっている。
イスラエル出身のドラマー、ジヴ・ラヴィッツ(Ziv Ravitz)と、フランス出身のクリストフ・パンザニ(Christophe Panzani)のデュオによる『Warp & Weft』は、おそらく2026年屈指のジャズの名作だ。まるでそのテイクの少なさや、スタジオをレンタルした時間の短さで競うかのように、短期間のセッションでテーマと即興演奏を主体に録音されることの多いジャズという分野の、しかもデュオとしては間違いなく異例の、2年間という制作期間を経て誕生したアルバムは、タイトル「経糸と緯糸」という言葉が喚起するイメージの期待を裏切らない、素晴らしい芸術だ。
サックス、シンセ、ドラムスというユニークな編成のオルタナティヴ・ジャズトリオ、ラスト・シーン・アライヴ(Last Scene Alive)のデビューアルバム『World Class Pep Talk』が面白い。バンドは米国ワシントンD.C. とオランダ・アムステルダムを拠点とするミュージシャンによって構成されており、即興演奏を主体にジャズやパンクロック、フュージョンなどジャンルを超越した刺激的な音楽を激しく展開する。
BLM運動と密接に関わってきたNYブルックリンのジャズ・コレクティヴ、イレヴェーシブル・エンタングルメンツ(Irreversible Entanglements)が、5作目となる『Future Present Past』をリリースした。これまでの彼らの作品、特に初期の激しい怒りと痛みの表現と比べ、本作は「喜び(joy)」に焦点を当てており、フロント・ウーマンであるムーア・マザー(Moor Mother)の詩も従来のような正義心から沸く怒りよりも、高揚する喜びや励ましといったポジティヴな感情へと変化している。
二人の“魔法使い”の名は、イスラエル出身のピアニスト/作曲家ヤキール・アルビブ(Yakir Arbib)と、カメルーン出身のドラマー/パーカッショニスト/作曲家コンティ・ビロング(Conti Bilong)。アルバムのタイトルのとおり、二人のルーツである中東と中央アフリカの伝統的なリズムや旋法を基調とし、J.S.バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685 - 1750)に代表されるバロック様式の対位法やジャズのダイナミックな即興が高度に融合した、複雑なのに親しみやすく、伝統の上に成り立っているのに斬新な演奏が繰り広げられる。
UKを代表するジャズトリオ、ママール・ハンズ(Mammal Hands)。新しいドラマーとして元ゴーゴー・ペンギン(GoGo Penguin)のロブ・ターナー(Rob Turner)が加わり、さらにレーベルをゴンドワナ・レコード(Gondwana Records)からアクト(ACT)に移しての最初のアルバム『Circadia』がリリースされた。タイトルは生物の約24時間周期のリズムである「サーカディアン・リズム(概日リズム)」に由来する造語で、循環や反復するリズムの上で自由な即興を繰り広げる彼らの音楽性を象徴している。
米国のベーシスト/作曲家/プロデューサー/YouTuberのアダム・ニーリー(Adam Neely)と、ドラム奏者ショーン・クラウダー(Shawn Crowder)によるユニット、サンゲイザー(Sungazer)の2枚目となるアルバム『Against the Fall of Night』は、メトリック・モジュレーションや変拍子の多用といった数学的なアプローチで構築された楽曲群が魅力的な作品だ。
米国オックスフォードで生まれ、京都や横浜、そして米国サンタバーバラで育ち、現在はロンドンを拠点とする音楽家モモコ・ギル(Momoko Gill, ギル桃子)のソロデビュー・アルバム『Momoko』が2026年2月にリリースされた。多文化環境で豊かな感性を育み、長年UKのエレクトロニック/ジャズシーンの“秘密兵器”と囁かれた彼女のデビュー作は、実験音楽やエレクトロ・ミュージックだけでなく、多様なシーンから影響を受けたシンガーソングライターとしての充実ぶりが垣間見える劇的な作品となっている。