- 2025-12-23
- 2025-12-22
フィンランドの鬼才イーロ・ランタラ、原点に立ち返った初のスタンダード曲集『Trinity』
これまでに数々のユニークな作品をリリースし、そのユーモアと群を抜く抒情的かつ技巧的なピアニズムで世界中を魅了してきたフィンランドを代表するピアニスト、イーロ・ランタラ(Iiro Rantala)の新作 『Trinity』は、意外なことに彼自身初の“スタンダード曲集”だった。
これまでに数々のユニークな作品をリリースし、そのユーモアと群を抜く抒情的かつ技巧的なピアニズムで世界中を魅了してきたフィンランドを代表するピアニスト、イーロ・ランタラ(Iiro Rantala)の新作 『Trinity』は、意外なことに彼自身初の“スタンダード曲集”だった。
パキスタンに生まれ、ヨーロッパやアメリカに住んだあとロンドンでヨガインストラクターとして活動するマニーゼ(Manizeh)のデビューアルバム『Mahku』が素晴らしい。共同プロデューサー/ゲストシンガーとして、オバマ元大統領が「2025年のお気に入り」にも挙げたガナーヴィヤ(Ganavya)が全面的に参加。マニーゼ自身が弾くハルモニウムと歌を中心に、ハープやダブルベース、ピアノなどの楽器で優しく彩られた楽曲群は深く感動的で、ヨガの実践者であり指導者である彼女の哲学と精神を余すところなく反映している。聴けば聴くほどその世界に没入し、心が浄化される感覚にさせられる──。
インド出身のドラマー/作曲家、タルン・バラーニ(Tarun Balani)の2025年新譜『ڪڏهن ملنداسين Kadahin Milandaasin』は、彼の祖父がシンド1からニューデリーへ移住した旅を辿りながら、シンド人としてのルーツとアイデンティティを探究している。カルテットのメンバーにはキューバにルーツを持つトランペット奏者アダム・オファーリル(Adam O’Farrill)、フィンランド出身のギタリストのオーリ・ヒルヴォネン(Olli Hirvonen)、そしてピアノにはインド出身のシャーリク・ハサン(Sharik Hasan)を擁し、多文化が混交した思索的な演奏を聴かせてくれる。
ブラジルの新世代ピアニストの代表格、サロマォン・ソアレス(Salomão Soares)。今年11月に初の来日公演でその才能の片鱗を見せてくれた彼のディスコグラフィ(サロマォンのリーダー作)を紹介したい。
イスラエル出身のピアニスト/作曲家ヨタム・イシャイ(Yotam Ishay)が、8ヶ国から23人のミュージシャンを招き、伝統的なユダヤ音楽をベースに、ジャズを通じて世界との対話を試みた新作『Singing of The Herbs』。ピアノを中心とし、ヴォーカルやスポークン・ワード、ストリングスなども交えたバラエティに富んだ楽曲が収録されており、どこか神秘的で厳かな雰囲気を漂わせる美しい作品だ。
ドイツ出身の作曲家/音楽プロデューサー、マーティン・スタートハウゼン(Martin Strathausen)を中心とするプロジェクト、テイプ・ファイヴ(Tape Five) の2025年新譜『Fizzy Far Niente』。まさにエレクトロ・スウィングの王道を行く、100年の時を超えるレトロモダンなサウンドは今もなお、かっこいい。
フランス出身、米国NYを拠点に活動するジャズギタリスト、ミカエル・ヴァレアヌ(Michael Valeanu)のトリオによる新譜『Road Songs』。“旅”をテーマに、タイムレスな名曲をメインに演奏する親しみやすいアルバムだ。旅路を共にするトリオのメンバーはチリ出身のドラマー、ロドリゴ・レッカバレン(Rodrigo Recabarren)と、米国のベース奏者ジュリアン・スミス(Julian Smith)。
⚫︎圷 滋夫(あくつしげお/ライター) 本作は2019年にブラジルで公開されたが日本では未公開だった作品で、事実を基にした物語だ。主役を演じるのはブラジルが誇るベテラン実力派女優マルセリア・カルターショで(主演作の『A Hora da Estrela/星の時』が、1986年のベルリン国際映画祭でブラジル人として初めて銀熊賞=最優秀女優賞を受賞している)、撮影当時はまだ50代ながら(1963年生まれ)まだまだ溌剌とした姿と、逆に老境の切なさと残酷さを見事に表現しており、その円熟の演技を堪能出来る。そして本作は、世界の様々な映画祭で作品賞や脚本賞、主演女優賞、観客賞など、多数の部門で受賞している。
クルドをルーツにもつオランダのシンガーソングライター、メラル・ポラト(Meral Polat)の2025年作 『Meydan』は、彼女のルーツであるアナトリアとメソポタミアの音楽や、イスラム教の少数派であるアレヴィー派の文化的背景を基調に、トルコのサイケデリック・ロックやクルドのソウル、プロテスト・ブルース、ワールド・フュージョンを融合させた強烈な音楽体験を約束するアルバムだ。
フランスのジャズピアニスト、アントワン・エルヴィエ(Antoine Hervier)の2025年新作『Navigue loin - Looking at Christian Escoudé』は、彼がそのバンドの最後のピアニストとして在籍していた、2024年に他界したフランスを代表するジプシージャズ・ギタリストであるクリスチャン・エスクーデ(Christian Escoudé, 1947 - 2024)のトリビュート・アルバムだ。アルバムにはエスクーデが遺した10曲(11トラック)が選ばれており、ピアノトリオを中心に、数曲でゲストを加えて魅惑のジプシー・ジャズの世界へと誘う好盤となっている。
ノルウェーの先進的なジャズを牽引するピアニスト/作曲家ブッゲ・ヴェッセルトフト(Bugge Wesseltoft)が、個性豊かなゲストを迎えて制作した2025年新譜『Am Are』。アルバムではソロからトリオまでメンバーを変えて様々な編成やサウンドを試すなど実験的な要素がありつつ、ジャズの伝統にもしっかりと根差し、聴きやすくも刺激的な作品だ。
スコットランド出身のシンガー/作曲家ルイーズ・ドッズ(Louise Dodds)の新作『All I Know』。アヴィシャイ・コーエン・トリオに参加したことで世界的に知られるアゼルバイジャン出身ピアニストのエルチン・シリノフ(Elchin Shirinov)とのデュオで発表した前作『Two Hours After Midnight』はスコットランドの美しい歌曲集だったが、今作は全曲を彼女のオリジナルでまとめ上げ、ジャズ・ヴォーカリストとしてオリジナリティを追求した作品となっている。
レニーニが戻ってきた!切れ味抜群のガットギターと、スウィングしながらラップするように歌う独特のヴォーカル。ブラジル北東部(ノルデスチ)の伝統音楽とロックを融合させた革新的なスタイルは、今も変わらない。1990年代にイノベーターとしての彼を発見した人も、そうでない人も、この独創的な音楽にぜひ触れてみてほしい。
積み重ねてきた文化の深み、絆の強さを感じさせる。ジャズの半世紀を支えてきた二人のレジェンド、ジョン・スコフィールド(John Scofield)とデイヴ・ホランド(Dave Holland)の初のデュオ・アルバム『Memories of Home』がECM Recordsからリリースされた。今作では二人が過去に作曲した代表曲や、新たに書き上げた曲を演奏する。