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サックス

  • 2024-07-03
  • 2024-07-02

80歳を超えた巨匠ケニー・バロンの優しいジャズが、疲れた夜を救ってくれた

イマニュエル・ウィルキンス(Immanuel Wilkins)が吹くアルトサックスの音色で、全ての疲れが身体から抜けていく感じがした。冒頭の有名なスタンダード(1)「The Nearness of You」、これほど水分のように沁みるジャズは久々だ。無理でもしないと生きてはいけないと思い込んでいたが、立ち止まることも必要だということを思い出させてくれるような温かさがあった。

  • 2024-06-16
  • 2024-06-16

チャーリー・パーカーの“予言”を具現化する気鋭サックス奏者が示す、未来のジャズ

米国ミズーリ州カンザスシティ出身のアルトサックス奏者、ローガン・リチャードソン(Logan Richardson)が自身のバンドBlues Peopleを率いた新作『Sacred Garden』をリリースした。アルバムはカンザスシティが生んだ偉大な巨人チャーリー・パーカー(Charlie Parker, 1920 - 1955)のインタビュー音源がサンプリングされた(1)「Dna」で始まる。

  • 2024-06-09
  • 2024-06-09

複雑すぎる時代に生き、感情の全てを発露する驚くべきテナーサックス。先駆者オデッド・ツール新譜

“21世紀のコルトレーン・カルテット”を率いる求道者にとって、この1年間はどのような心境の変化を与えたのだろうか。(2)「Child You」も(3)「Through A Land Unsown」も、曲が佳境に入り感情が昂るにつれ、彼のサックスとしてはこれまであまり聴いたことのない急激で激しい音色の変化を見せる。ガーディアン紙はかつて彼の音色を“サックスのささやき”と表現したが、今作でのサックスの表現はより機微に富み、抑制と発散を絶え間なく行き来し、時折激しい怒りとも深い悲しみともつかない叫びをあげる。

  • 2024-05-07
  • 2024-05-06

パリに住む才気煥発なベネズエラ出身気鋭ギタリスト、GAüD デビュー作『Looking for Home』

ベネズエラ出身でパリを拠点に活動する新進気鋭のギタリスト/作曲家ガウド(GAüD)が、デビュー作『Looking for Home』で秘めた才気を爆発させている。新型コロナのパンデミックによるロックダウン中に制作が開始されたこの作品は、フィリップ・ソワラ(Philippe Soirat, ds)やニコラス・フルーリー(Nicolas Fleury, b)そしてヤニック・ベノワ(Yannick Benoit)といったフランスの音楽家たちを迎えたバンドで録音され、とりわけガウドの好奇心旺盛な音楽性を巧みに引き出している。

  • 2024-04-17
  • 2024-04-17

どこか懐かしい気分を誘う、ベルギーの新進エチオジャズバンド、Kolonel Djafaar

ベルギーのエチオジャズバンド、コロネル・ジャファール(Kolonel Djafaar)の2ndアルバム『Getaway』がリリースされた。エチオピアに特徴的な音階(いわゆる“ヨナ抜き”、日本の演歌で用いられる音階と同一のもの)がアフロビート/ファンク/サイケロックがシームレスに融合するサウンドに乗り、どこか郷愁を感じさせる魅惑のグルーヴを生み出す。

  • 2024-04-06
  • 2024-04-06

中南米音楽への憧憬が生んだ多幸感溢れるジャズ。スイス出身ルイ・マトゥテ 4th

前作『Our Folklore』でジャズ、ブラジル音楽、ネオソウルなど多様な音楽的バックグラウンドを凝縮した優れた音楽を提示してみせたスイス出身のギタリスト/作曲家ルイ・マトゥテ(Louis Matute)が、自身4枚目のアルバムとなる『Small Variations of the Previous Day』をリリースした。今作も中南米や大西洋の島々の音楽への深い探求心がサウンドの中核を担う。

  • 2024-03-28
  • 2024-03-28

新時代のジャズを探求する南アフリカのバンド Kujenga、セプテット編成の新譜『In the Wake』

南アフリカ・ケープタウンを拠点とする7人編成のジャズバンド、クジェンガ(Kujenga)。スワヒリ語で“構築する”を意味するバンド名を持つ彼らの2枚目のアルバム『In the Wake』がリリースされた。トランペット、トロンボーン、テナーサックスの3管や電化ギター、ベースなどよくあるジャズ編成ではあるものの、アフリカ南部のアイデンティティを感じさせる力強いサウンドがとても素晴らしいアルバムだ。

  • 2024-02-04
  • 2024-02-03

ファビアーノ・ド・ナシメント&サム・ゲンデル、音楽の普遍の美しさを体現する初デュオ作

7弦ギター奏者のファビアーノ・ド・ナシメント(Fabiano do Nascimento)と、サックス奏者のサム・ゲンデル(Sam Gendel)の初デュオ作『The Room』は、南米のシャーマニックな土着音楽が主なレパートリー。ギターとソプラノサックスのみという編成ながら、多彩な奏法を用い、実に色彩豊かで美しい音楽を作り上げている傑作だ。

  • 2023-12-23
  • 2023-12-19

無数のインスピレーションから創られたロシアのラージ・アンサンブル。アンドレイ・クラシルニコフ『Bloody Belly Comb Jelly』

ロシアのサックス奏者/作編曲家アンドレイ・クラシルニコフ(Andrew Krasilnikov)が、2008年のデビュー作『Serpentine』以来15年ぶりとなる2ndアルバム『Bloody Belly Comb Jelly』をリリースした。サックス、ピアノ、ベース、ドラムスのカルテットを核とし、ラージ・アンサンブルの表現を効果的に取り入れた優れた作品だ。

  • 2023-12-15
  • 2023-12-15

種を蒔くため、大地を耕す。バルセロナの新進気鋭の女性デュオARAR、温かなガットギターとサックスに歌が溶け込む珠玉のデビュー・アルバム!

バルセロナの女性二人組ユニット、アラル(ARAR)のデビュー作『Arar』は、ガットギターとサックスを中心とした温かみのあるサウンドに、二人によるコーラスが優しく溶け込むとても穏やかで素敵な作品だ。グループ名でありアルバム・タイトルでもあるararとは、カタルーニャ語で“耕す”、つまり種を蒔くために大地を掘り返し、豊かな作物が実る土壌をつくることを意味する。

  • 2023-12-11
  • 2023-12-11

フランスを代表する女性サックス奏者ソフィー・アルール、自己の内面を深く探求する9枚目のアルバム『Le temps virtuose』

フランスのサックス/フルート奏者ソフィー・アルール(Sophie Alour)の9枚目のスタジオ・アルバム『Le temps virtuose』に派手さや分かりやすさはない。サックス、ギター、チェロ、ドラムスという編成も珍しいし、ジャズらしいスウィングもない。リズムはあるが、それを強力に推進するグルーヴも希薄。それでも不思議とどこか惹かれるものがあり、ふとしたときに自然と再生してしまうような類のアルバムだ。

  • 2023-12-10
  • 2023-12-09

ドイツの新星サックス奏者ヴィクター・フォックス、やり場のないエネルギーが炸裂するデビュー・アルバム『Mumble Jazz』

サーキュラー・ブリージー(Circular Breeezy)の名でも知られる2000年生まれのドイツのサックス奏者/作曲家ヴィクター・フォックス(Victor Fox)。彼のデビュー作『Mumble Jazz』で彼の音を初めて聴いたが、もうめちゃくちゃに熱く、クレイジーで最高だ。

  • 2023-11-11
  • 2023-11-10

超絶技巧とユニークな表現力で魅せる”Trio Grande 2.0″。ジャズロック、進化のその先へ

2020年にリリースされたアルバム『Trio Grande』は、卓越した技術と個性を持つ現代最高峰のミュージシャンによる新たな化学反応が絶賛されたとてつもない作品だった。彼らの2nd『Trio Grande: Urban Myth』は、ウィル・ヴィンソンとギラッド・ヘクセルマンはそのままに、USのドラマー/ベーシスト、ネイト・ウッド(Nate Wood)がアントニオ・サンチェスに代わり参加。新たな化学反応が楽しめる作品となっている。