エレピやヴォーカルで新境地を切り開くグレゴリー・プリヴァ注目の新譜『Soley』

Grégory Privat - Soley

マルティニーク出身の注目ピアニストが切り開いた新境地

仏領マルティニーク出身のピアニスト、グレゴリー・プリヴァ(Grégory Privat)の2020年『Soley』
アルバムタイトルのSoleyとは「Spirituality」「Optimism」「Light」「Energy」(coming to)「You」の頭文字を繋げた造語とのこと。
かつて1902年にマルティニーク島で起こった大噴火で当時の県庁所在地サン・ピエールを壊滅させ、市内で生き残ったわずか3人のうちの一人、囚人オーギュスト・シパリの物語を描いた『Tales of Cyparis』という壮大な作品を作り上げた彼らしい、コンセプチュアルな作品だ。

とにかく1曲1曲の個性が際立った作品で、ピアノ・ベース・ドラムスの普通のピアノトリオ編成ながらアコースティックピアノだけでなくエレクトリックピアノ、シンセサイザー、そして自身のファルセット(裏声)を多用したヴォーカルもフィーチュアしたこれまでの彼の作品には見られない新境地を切り開いている。

演奏も楽曲も流石としか言いようがない。ラーシュ・ダニエルソンのバンドによる名盤『Liberetto』シリーズで、あのティグラン・ハマシアンの後釜を担ったピアニストだけのことはある。

アルバムは(1)「Intro」で始まり、タイトル曲(7)「Soley」からシームレスに繋がる(8)「Outro」までの前半部と、(9)「Interlude」を挟んで始まる後半の二部に分かれる。

(3)「D.N.A.」での二重螺旋構造のように渦巻きながら駆け上がるフレーズ、同曲での少し歪んだエレクトリックピアノのソロが印象的だ。表題曲(7)「Soley」ではシンプルなテーマに、アコースティックピアノとエレクトリック・ピアノ、そしてグレゴリー自身のヴォーカルがバランス良く絡み合う。

後半のハイライトは多様な表情を見せる(12)「Exode」ではないだろうか。続く(13)「Manmay」も叙情的で素晴らしい。
ベースのクリス・ジェニングス(Chris Jennings)、ドラムスのティロ・バルトロ(Tilo Bertholo)のサポートもパーフェクトで、このアルバムは全体を通して夢中になれるような新しい音楽体験をもたらしてくれる。

グレゴリー・プリヴァ『Soley』のティーザー動画。

Spirituality Optimism Light Energy coming to You.

グレゴリー・プリヴァ(Grégory Privat)は1984年、仏領マルティニーク生まれのピアニスト/作曲家。父親のホセ・プリヴァ(Jose Privat)はマルティニークの伝統音楽をジャズと融合し1980年代に人気を博したバンド、マラヴォワ(Malavoi)に中途加入したピアニストだった。
6歳頃より父親に勧められピアノを始めたグレゴリーは、工業系の大学で学びつつジャズを演奏する生活をしていた。大学卒業後はしばらくエンジニアの職を得たが、音楽の夢を諦めきれずに27歳でプロのピアニストに転向。2011年のデビュー作『Ki Koté』で見せた圧倒的な作曲能力やピアノの技巧、さらにグアドループ出身のドラマー/パーカッショニスト、ソニー・トルーペ(Sonny Troupé)との2015年のデュオ作品『Luminescence』での異国情緒溢れる魅力で一躍世界に名を轟かせた。

2017年には前述のラーシュ・ダニエルソン(Lars Danielsson)『Liberetto III』に現代ジャズを代表するピアニスト、ティグラン・ハマシアン(Tigran Hamasyan)の後継として参加。数々の名演を残している。

Grégory Privat – piano, synth, voice
Chris Jennings – bass
Laurent-Emmanuel “Tilo” Bertholo – drums

Grégory Privat - Soley
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