ポーランドを代表するピアニストとギタリストの抒情的デュオ作品『Loud Silence』

Piotr Wylezol & Szymon Mika - Loud Silence

意外と珍しい!? ジャズにおけるピアノとギターのデュオ編成

ピアノとギターのデュオというと、やはり名盤として挙げられるのはビル・エヴァンス(Bill Evans)とジム・ホール(Gim Hall)による『Undercurrent』が真っ先に思い起こされる。ピアニストとギタリストがともに寄り添いながら呼吸を合わせ演奏されるこの作品は、間違いのない名盤だ。

だが、他にピアノとギターのデュオのおすすめ……となるとなかなか浮かばない。
…そういえば、ミシェル・カミロ(MIchel Camilo)とトマティート(Tomatito)の『Spain』は一時期ハマったっけ。…でも他には本当に思い出せない。

ピアノもギターも、ジャズにおいてもっともメジャーな楽器だが、クインテットなどでそれぞれが共演することはあってもデュオで成功した作品というのは実際に意外と少ないのではないだろうか。
これはピアノもギターも広い音域を担い、コードもメロディーも奏でることができる楽器という、アンサンブルにおける“役割”がダブってしまっているが所以であろう。ピアニストやギタリストがデュオでやるならば、メロディーに特化した楽器のトランペットやサックスといった管楽器を相棒にしたいし、低音を補強したければベース、リズムを強調したければドラムスやパーカッションと組めば良いのだ。わざわざ、同じような役割の楽器と組む必要性は低い──だから、冒頭に挙げたようにピアノとギターだけのジャズ作品というのは意外と珍しかったりする。

ポーランドの最高の二人による、ピアノ&ギターのデュオ

今回はそんなピアノとギターのデュオという編成で聴く、まさに極上の新作だ。

二人はともにポーランド出身。1976年生まれのピアニストのピョートル・ヴィレゾル(Piotr Wylezol)と、1991年生まれのギタリストのシモン・ミカ(Szymon Mika)である。
ポーランドといえばフレデリック・ショパンを生んだ地だし、ジャズにおいても“ポーリッシュ・ジャズ”という欧州ジャズや北欧ジャズから細分化されたカテゴライズでもしばしば語られる地域でもある。

そんなポーランドの地特有のリリシズムと、明晰な即興やインタープレイといったジャズの心地よさが見事に織り重なった作品が『Loud Silence』だ。

役割の近しい楽器のデュオだけに、互いにハーモニー、ソロ、ベースラインなどを交代しながら紡いでいく音楽は冒頭のビル・エヴァンスとジム・ホールのデュオを思わせるところもあり、どこまでも美しい。一見リラックスしつつも緊張感を感じさせる演奏はまさしく珠玉。

(5)「April 2020」

収録曲は二人の抒情的なオリジナルを中心に、彼らの世界観にマッチするように巧みに編曲された(3)「Stella by Starlight」や(6)「Take Five」のスタンダードも(特になかなか種明かしのされない後者のアレンジには脱帽!)。

内省的で心の洗われるような音楽を探している方に、ぜひお伝えしたい作品だ。

Piotr Wylezol – piano
Szymon Mika – guitar

Piotr Wylezol & Szymon Mika - Loud Silence
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