ジャズ新時代の才媛エリザベス・シェパード、内省的創造性が発揮された新譜『Three Things』

Elizabeth Shepherd - Three Things

エリザベス・シェパード、コロナ禍で制作された新作

カナダのシンガーソングライター/鍵盤奏者エリザベス・シェパード(Elizabeth Shepherd)の2023年新譜『Three Things』は、ヒップホップを入り口にしてジャズを知り演奏するようになった彼女らしさが、リラックスした音作りの中で最大限に発揮されたキャッチーかつ奥行きのある作品に仕上がっている。

アルバムの構想と制作は新型コロナによる外出禁止令の中で、突然家に一人きりになり、一緒に演奏する人がいなくなったことに気づいた状況から始まった。彼女は家にあった膨大なレコードのコレクションを深く掘り下げる時間を持ち、周囲の人々が“あなたの声に似ている”と指摘していたリッキー・リー・ジョーンズ(Rickie Lee Jones)の音楽を聴いた。そしてタイプライターやゴミ箱、レコードの音飛び、鳥の囀り、人々の話し声など身の回りの音からインスピレーションを得て、それらを古い友人とのジャムの録音からの断片に織り込み、新しくレイヤーやシンセパートを加えるなどして創作を開始。
7枚目となるこのアルバムがどこか内省的に聴こえるのは、そういったプロセスがあったからなのだろう。

時間という概念について考察する(1)「Time」

今作はエリザベス・シェパードという音楽家が確かなジャズの知性と技術、豊かな感性と洒脱なヒップネスを兼ね備えたアーティストであることを再び確認できる。
2000年代後半に、彼女の声と音楽に魅了されジャズを聴き始めた人も世界中に少なくないことだろう。そんな人にこそ再び彼女の作品を手にとり、その魅力的なサウンドに心を傾けてみてほしい。

Elizabeth Shepherd 略歴

エリザベス・シェパードは1977年カナダ・モントリオール生まれ。
カナダとフランスでクラシックのピアノを学び、のちにモントリオールのマギル大学でジャズピアノの学位を取得。

2004年にトロントに移り、ピアノバーでウェイトレスとして働く傍ら演奏活動を開始し、ベースにスコット・ケンプ(Scott Kemp)、ドラムスにコリン・キングスモア(Colin Kingsmore)を迎えエリザベス・シェパード・トリオを結成。2006年にデビュー作『Start To Move』をリリースすると、ロンドンのDJジャイルス・ピーターソン(Gilles Peterson)によって紹介され話題となり、同年のジャズ・アルバムTOP3に選出されるなど一躍人気ミュージシャンとなった。

Elizabeth Shepherd - Three Things
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