「酔っ払いと綱渡り芸人」で知られるブラジルの国民的詩人、アルヂール・ブランキが新型コロナウイルス感染症で死去

Aldir Branc - Vida Noturna

ブラジルの詩人アルヂール・ブランキ、73歳で死去

ブラジルを代表する詩人、アルヂール・ブランキ(Aldir Blanc)が2020年5月4日、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のためリオデジャネイロの病院で死去した。73歳だった。

4月10日に尿路感染症と肺炎に罹り入院。一時は改善の兆候も示したが、残念ながら帰らぬ人となった。

アルヂール・ブランキは1946年9月2日、リオデジャネイロのダウンタウン、エスタシオ地区で生まれた作曲家/詩人。大学では医学部で精神医学を専門に学んでいたが、のちに音楽に専念し、MPB(ブラジルのポピュラー音楽)を代表する作家のひとりとなった。
代表作品はジョアン・ボスコ(João Bosco)との共作でエリス・ヘジーナ(Elis Regina)が歌い大ヒットした「O Bêbado e a Equilibrista(酔っ払いと綱渡り芸人)」や、ナナ・カイミ(Nana Caymmi)が歌った「Resposta ao Tempo」など。

“ブラジル第二の国歌”とも呼ばれるほどの人気の「O Bêbado e a Equilibrista(酔っ払いと綱渡り芸人)」。
アルジール・ブランキによる美しい歌詞の中には当時のブラジルの軍事政権を批判する多くのメタファーが散りばめられている。
映像はエリス・ヘジーナによる歌唱。
盟友ジョアン・ボスコが歌う「O Bêbado e a Equilibrista(酔っ払いと綱渡り芸人)」。
自然にはじまる観客たちの大熱唱も圧巻の映像だ。

2015年作『Vida Noturna』は心に滲み入る名盤

作詞家として数々のアーティストに楽曲を提供してきたため、アルヂール・ブランキ自身の名義でのアルバムは少ない。
ジョアン・ボスコとの共作『Disco de Ouro』(1977年)が良く知られているが、今聴きたいのは遺作となった『Vida Noturna』(2015年)だ。
このアルバムでは盟友ジョアン・ボスコや、ブラジルを代表する作曲家/歌手/ギタリストのギンガ(Guinga)、モアシール・ルス(Moacyr Luz)もゲスト参加。ガットギターやピアノのナチュラルな演奏とともに、(12)「Resposta ao Tempo」、マウリシオ・タパジョス(Maurício Tapajós)との共作曲(4)「Flores de Lapela」、静かなサンバ(2)「Dois Bombons E Uma Rosa」などの名曲の数々がアルヂール・ブランキ自身の歌唱で歌われている。

ナナ・カイミを代表する曲となった(12)「Resposta ao Tempo」。
Aldir Branc - Vida Noturna
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