ヴェロニカ・フェヒアーニ新作『Cochicho no silêncio vira barulho, irmã』
ブラジル・サンパウロ州ヒベイラン・プレト出身のSSW/ギタリスト、ヴェロニカ・フェヒアーニ(Verônica Ferriani)の2024年新譜『Cochicho no silêncio vira barulho, irmã』。タイトルのポルトガル語は直訳で「静寂の中での囁きはやがて騒音になるよ、シスター」の意味で、2枚組のアルバムのほぼ全てが女性だけで作られており、コンセプトも女性そのものの存在と、その存在がもたらす様々な事象をテーマとして扱っている重要作だ。
アルバムは20曲が収められているが、それぞれの楽曲は長くないため全体で50分ほど。第一部「Cochicho no silêncio」(静寂の中での囁き)と第二部「Vira barulho, irmã(やがて大きな音になるよ)」に分かれている。ヴェロニカ・フェヒアーニは現代の社会は性差別の上に構築されており、女性の負担が強調されていると訴える。彼女は社会に古くから蔓延る独裁的家父長制に対し、自らが唯一行動できる視点、つまり女性側からの共同改革を模索しようとしている。
アルバムのオープニングはアルバムの表題曲でもある意味深なサンバ(1-1)「Cochicho no silêncio vira barulho, irmã」だ。ここでは1960年代から活躍するシンガー、アウレア・マルチンス(Áurea Martins)がヴェロニカとデュエット。抑圧される女性からの視点を、静かな怒りを伴い見事に表現している。
詳細は記事の最後に載せたクレジットを確認いただきたいが、本作には実に30人以上のブラジル音楽を代表する女性たちが参加している。
(1-5)「Sem regras」はアッスセーナ(Assucena)がゲスト参加で歌い、バックは弦楽四重奏がフィーチュアされている。
(1-6)「Amor que fica」はエロヂー・ボウニー(Elodie Bouny)がギターを弾き、ジョアナ・ケイロス(Joana Queiroz)がバスクラリネットを吹き、モニカ・サウマーゾ(Mônica Salmaso)がヴェロニカと共に歌うという、完璧に美しい楽曲となっている。
(1-7)「Foto linda」ではサンフォーナ(アコーディオン)奏者のナンダ・ゲヂス(Nanda Guedes)がフィーチュアされており、シンプルだが美しいフォホーを聴かせてくれる。
(2-6)「Num dia como hoje」ではかつて天才バンドリン少女としてそのキャリアをスタートさせた二ウジ・カルヴァーリョ(Nilze Carvalho)がバンドリンを弾いている。
今作で取り上げられるテーマは女性に強いられがちな負担の全てだ。出産、授乳や子育て、家事、介護といった社会的なものから、パートナーによる要求、自由への探究や自身の再発見といった個人的なものまで、女性たちが感じている抑圧についての歌だ。
ヴェロニカ・フェヒアーニは歌を通じて、男性と女性の両方がこれらの問題について熟考し、前向きな変革に向けて協力するべきだと訴えかけている。
Verônica Ferriani – vocal, guitar, percussion
Alana Ananias – drums, overdub
Aline Falcão – keyboards, guitar
Dani Virgulino – zabumba, triangle
Cecilia Siqueira – guitar
Fernando de Lima – guitar
Elodie Bouny – guitar
Estefane Santos – trumpet, flugelhorn
Joana Queiroz – bass clarinet
Lívia Mattos – accordion
Maiara Moraes – flute
Nanda Guedes – accordion
Nilze Carvalho – bandolim
Samara Líbano – 7-string guitar
Suelem Sampaio – harp
Thais Nicodemo – keyboards
Vanessa Ferreira – acoustic bass, electric bass
Victória dos Santos – percussion
Vivian Kuczinsky – guitar
Wanessa Dourado – violin
Letícia Andrade – violin
Jennifer Cardoso – viola
Mayara Alencar – cello
Áurea Martins – vocal (1-1)
Mônica Salmaso – vocal (1-6)
Flávia Maia – vocal (1-4)
Mairah Rocha – vocal (1-4)
Anaïs Sylla – vocal (1-3)
Assucena – vocal (1-5)
Alessandra Leão – vocal (1-2)
Giana Viscardi – vocal (2-7)
Flaira Ferro – vocal (1-8)
Lurdes da Luz – vocal (2-5)