急速に混ざり合う世界を象徴する新時代のジャズ。チュニジア出身ワジディ・リアヒのトリオ作

Wajdi Riahi - Mhamdeya

チュニジア出身ピアニスト、ワジディ・リアヒ『Mhamdeya』

チュニジア出身でベルギーを拠点に活動するピアニスト、ワジディ・リアヒ(Wajdi Riahi)の初リーダー作『Mhamdeya』。フランス出身のベース奏者バシーレ・ラオラ(Basile Rahola)とベルギーのドラムス奏者ピエール・ハーティ(Pierre Hurty)とのトリオを軸に、チュニジアの民族的な音楽の要素を大胆に取り入れた豊かな色彩感のあるジャズを展開する傑作だ。

アルバムは(1)「Montsouris」から、3人それぞれの優れた技巧と、詩的な物語性を秘めた秀逸な作編曲のセンスを堪能できる。収録曲はソロピアノ(3)とトリオ(5)でそれぞれ演奏されるスタンダードの「Moon River」以外はすべてワジディ・リアヒの作曲。「Moon River」も彼のルーツであるアラブ音楽のエッセンスが巧妙に混ぜ込まれた見事なアレンジと演奏を聴かせてくれ、彼の個性を知る上で非常に興味深いものとなっている。

(6)「Hymn to Fazzeni」にはウード奏者アクラム・ベン・ロムダン(Akram Ben Romdhane)がゲスト参加。テーマ部分では西洋音楽に慣れ親しんだ耳には想像もつかないようなフレーズがウードとピアノのユニゾンで繰り出され、これがもうゾクゾクするほどかっこいい。ピアノは流麗で澱みなく、即興においても次々とエキサイティングなメロディーを紡いでいく。

(6)「Hymn to Fazzeni」のライヴ演奏。ここではピアノトリオだが、アルバムではウードが加わったカルテットになっている。

今作のトリオはディナン・ジャズの若手タレント・コンペティション(Jeunes talents de Dinant Jazz 2021)で優勝。ワジディ・リアヒのピアノだけでなく、創造的でメロディアスな低音を奏でるバシーレ・ラオラ、そしてダイナミックなドラミングが素晴らしいピエール・ハーティのプレイも素晴らしく、まさしく三位一体の演奏を楽しめる。
ジャズの長い歴史や演者の出生地の伝統音楽にしっかりと根差しつつ、新たな表現を体現した本作。急速に混ざり合うグローバルな社会を象徴するような新時代のジャズ作品である。

Wajdi Riahi プロフィール

ワジディ・リアヒは1995年チュニジア生まれ。幼少時よりクラシックとアラビア音楽を学んだ。
2015年からチュニジアにおけるジャズの振興と発展を目的とした非営利団体であるジャズ・クラブ・ドゥ・チュニス(Jazz Club de Tunis)のメンバーとしての活動を経て、その後ベルギーに留学。ブリュッセルの王立音楽院でエリック・レニーニ(Éric Legnini)に師事した。

自身がピアニストとして在籍するバズ・トリオ(Baz Trio)の『L’homme bleu』(2020年)、アレフ・クインテット(Aleph Quintet)での『Shapes of Silence』(2022年)でも彼の個性的な演奏を聴くことができる。

トランペット奏者ジャン=ポール・エスティヴェナート(Jean-Paul Estiévenart)が参加した(4)「Friends but Brothers」

Wajdi Riahi – piano
Basile Rahola – double bass
Pierre Hurty – drums

Guests :
Jean-Paul Estiévenart – trumpet (4)
Akram Ben Romdhane – oud (6)

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