トニーニョ・オルタ新譜はポーランド女性歌手との共作。過去の名曲を再演!

Toninho Horta & Dorota Miśkiewicz - Bons Amigos

トニーニョ・オルタ×ドロタ・ミシキェヴィチ『Bon Amigos』

ブラジルのギタリスト/作曲家トニーニョ・オルタ(Toninho Horta)と、ポーランドの歌手ドロタ・ミシキェヴィチ(Dorota Miśkiewicz)の共演作『Bons Amigos』がリリースされた。ベースにはミシェル・ピポキーニャ(Michael Pipoquinha)も参加し、トニーニョ・オルタらしい爽やかで洗練されたブラジリアン・サウンドが最高に心地良い絶品だ。

アルバムにはトニーニョ・オルタの過去作『Toninho Horta』『Terras Dos Passaros』『Com O Pe No Forro』などからの代表曲や、ドロタ・ミシケヴィチの過去曲などを新たなアレンジで収録。ヴォーカルはポルトガル語やポーランド語で歌われ、これまでにトニーニョの音楽に触れてきたファンも新鮮な感覚で楽しめる作品となっている。

冒頭曲(1)「Manoel, o Audaz」はトニーニョの2006年作『Harmonia & Vozes』に収録されていた曲。ここではミシェル・ピポキーニャによるフレットレス・ベースやトニーニョのガットギターに温もりを感じる原曲よりテンポを落とした演奏が素晴らしく、歌詞にはポーランド語とポルトガル語を交えてゆったりと歌われる。

トニーニョのブラジル北東部の伝統音楽フォホーをテーマにしたアルバム『Com O Pe No Forro』(2004年)からは3曲が選ばれている。(2)「Pecém」、(4)「Party in Olinda」(原題:Festa em Olinda)、そして(8)「Foot on The Road」(原題:Com O Pé No Forró)だが、いずれもフォホーの感覚を残した疾走感のあるダンサブルなアレンジ。トニーニョ・オルタらしい洗練されたハーモニーやコード進行は複雑だが、リスニング体験は最高に涼しい。(4)「Party in Olinda」は非常に複雑なメロディーの曲だが、軽々と歌いこなすドロタ・ミシケヴィチの技量も素晴らしいし、間奏部でのミシェル・ピポキーニャのベースソロも短いが圧倒的だ。

トニーニョ・オルタらしい爽やかな名曲(2)「Pecém」。

ドロタ・ミシキェヴィチが持ち寄った曲は3曲。(3)「Nucę, gwiżdżę sobie (Canto Canto)」、(6)「Budzić się i zasypiać (z Tobą)」、そして(10)「Świerk」。一部はドロタの公私のパートナーであるギタリストのマレク・ナピオルコウスキ(Marek Napiórkowski)の作曲も含まれる。これらは『Caminho』(2008年)と『Ale』(2012年)からの選曲。もとよりブラジル要素の濃い楽曲たちだが、トニーニョ・オルタとの共演によってある種の完成形となった印象だ。

(3)「Nucę, gwiżdżę sobie (Canto Canto)」はドロタ・ミシキェヴィチとマレク・ナピオルコウスキの共作曲

アルバムはドロタが出向いたリオデジャネイロでの1週間のレコーディング・セッションを元に制作された。この音楽は人々の笑顔で賑わう太陽の降り注ぐビーチや黄昏時の心地よい愁いをイメージさせる。誠実な楽観主義から来る人生の肯定。こんな素敵な日々が永遠に続けば良いのに…そんな感情を抱きたくなる、最高の作品だ。

Dorota Miśkiewicz プロフィール

ドロタ・ミシキェヴィチは1973年ポーランド南西部のクウォツコ生まれの歌手/作曲家/ヴァイオリン奏者。父親はポーランドを代表するジャズ・サックス奏者のヘンリク・ミシキェヴィチ(Henryk Miśkiewicz)、弟はシンプル・アコースティック・トリオでの活動で知られるミハウ・ミシキェヴィチ(Michal Miskiewicz)という音楽一家に生まれ育った彼女はフレデリク・ショパン音楽アカデミーでヴァイオリンを学び、1997年に卒業。1994年からヴォーカリスト/ヴァイオリニストとしてヴウォヂミエジュ・ナホルニー(Włodzimierz Nahorny)のバンドに参加し4枚のアルバムをリリース。その後はソロ活動を行いナイジェル・ケネディ(Nigel Kennedy)やセザリア・エヴォラ(Cesária Évora)、マルチン・ボシレフスキ(Marcin Wasilewski)といった音楽家たちと共演してきている。

ジャズをキャリアの中心に据えつつも、ボサノヴァなどのブラジル音楽やラテン音楽からの影響も色濃く、彼女自身も北欧の音楽家でありながら常に南米音楽に強く惹かれていることを告白している。

Toninho Horta プロフィール

トニーニョ・オルタは1948年ブラジル・ミナスジェライス州ベロオリゾンチ出身のシンガーソングライター/ギタリスト。幼少時より母からギターを教わり、作曲家であった叔父からも習う。

14歳のときにミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)と出会い、1972年にロー・ボルジェス(Lo Borges)らとともにブラジル音楽史上もっとも重要な作品のひとつとされるアルバム『Clube da Esquina』(街角クラブ)に参加。その後アントニオ・カルロス・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)、エリス・ヘジーナ(Elis Regina)、ジョイス(Joyce)、マリア・ベターニア(Maria Bethânia)といったブラジルを代表するミュージシャンたちと共演を重ねてきた。

アメリカ合衆国のジャズミュージシャンとも交流が深く、ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)やウェイン・ショーター(Wayne Shorter)らと共演。1980年のアルバム『Toninho Horta』には米国のギタリスト、パット・メセニー(Pat Metheny)も全面参加し、ジャズ愛好家にも広く知られる存在となった。

近作では『Belo Horizonte』が2020年のラテングラミー賞「ベストMPB部門」を受賞。非常にフランクな人柄で親しまれており、地元ミナスの若手ミュージシャンの作品への客演なども多く、ブラジル、特にミナスの音楽文化の形成や発展においてもその貢献は計り知れない。

Dorota Miśkiewicz – vocal, chorus
Toninho Horta – guitar, vocal, chorus
Michael Pipoquinha – bass, chorus
Armando Marçal – percussion, chorus
Bodek Janke – drums, percussion

関連記事

Toninho Horta & Dorota Miśkiewicz - Bons Amigos
Follow Música Terra