巡回演劇から生まれた男女3人組「Tukum」、絶妙なサウダーヂが堪らない2ndアルバム

Tukum - Estradas Dentro

Tukum 第二作目『Estradas Dentro』

巡回演劇活動を通じて出会った3人の俳優/ミュージシャン──リオデジャネイロ州出身のブルーノ・オリヴィエリ(Bruno Olivieri)とルイーザ・ピッタ(Luísa Pitta)、そしてパラナ州出身のフラヴィオ・カルドーゾ(Flávio Cardoso)──によるグループ、トゥクン(Tukum)。称賛された2020年のデビュー作『22 dias a pé』に続き、2023年9月にリリースされた今回の2ndアルバム『Estradas Dentro』では、70年代のMPBに触発されたロックやフォーク、ブラジル北東部音楽などをミックスした彼らの音楽観を正統に拡張。ほんの少し、だが効果的に含まれたサウダーヂが心地よくて堪らない作品となった。

演劇やコンテンポラリーダンス、詩、文学など多様な芸術分野で長い経験を持つアーティストたちから成るTukumらしさに溢れた音だ。前作がブラジル各地への1年間のショーの旅から生まれた開放的な作品だとすれば、今作はそれぞれが内なる旅路を歩むことしか許されなかったパンデミックの混乱の時代に生まれた作品。有限性、脆弱性、自己認識、再生の必要性などのテーマを扱う今作は力強いようでいて触れれば容易く壊れてしまいそうな繊細な儚さをも伴うようだ。例えば明るい曲調のポップス(1)「Alma Barqueira」にはブラジル北東部音楽を思わせるアコーディオンが目立たずとも効果的に響いており、厳かに郷愁を呼び起こす。

フォホーからの影響を感じさせる(4)「Asas N’alma」にはペルナンブーコ州レシーフェ出身のシンガーソングライター、フライラ・フェホ(Flaira Ferro)がゲスト参加。「魂に翼を持つ女性よ、飛べ」と繰り返し歌う歌詞も素晴らしい。

(4)「Asas N’alma」にはレシーフェのSSWフライラ・フェホをフィーチュア。

プロデューサーはエルザ・ソアレス(Elza Soares)晩年の傑作/ラテングラミー賞受賞作『A Mulher do Fim do Mundo』(2015年)などを手掛けたギリェルミ・カストルッピ(Guilherme Kastrup)。打楽器奏者であり、今作では全面的にドラマーとしても参加する彼の細やかな感性もKutumの表現力を増幅する。

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