ヤバみしかない…。衝撃のフィリピン伝統音楽×EDM!カナダの女性5人組“Pantayo”の音楽

Pantayo - Pantayo

カナダのフィリピン人コミュニティから生まれた衝撃のサウンド

カナダ・トロント在住のフィリピン系女性5人によるグループ、パンタヨ(Pantayo)のデビューアルバム『Pantayo』が斬新すぎて衝撃的だった。

グループのサウンドを特徴付ける楽器クリンタン(kulintang)はフィリピン南部のイスラム教徒たちの民族楽器で、インドネシアのガムランのような西洋音楽にはない調律が施された旋律打楽器である。
その演奏をパンクな精神でEDMやヒップホップ、R&B、ポップと結びつけ、これまでに聴いたこともないような音楽を創り出してしまった。

アルバムの密度もやたらと濃い。クリンタンの不思議な音色や音律を最大限に活かした民族性の高い(1)「Eclipse」や(4)「Bronsé」のような神秘的な楽曲から、強烈なエレクトロニック・ビートが刻まれプリミティブなラップが重なる(3)「Heto Na」、ポップなヴォーカルが印象的な(5)「V V V (They Lie)」、キャッチーなメロディーやコード進行と、クリンタンの神秘主義的旋律の対比が際立つ(8)「Kaingin」など、一度聴けばクセになってしまいそうな凄い曲が並ぶ。

(1)「Eclipse」のライヴ演奏動画。
ガムランにも似た、西洋音楽にはない独特の旋律と、R&Bに感化されたヴォーカルの見事な融合が新鮮。

フィリピンからの移民である彼女たちは、もともとは自身たちの民族的アイデンティティーを探すために集まった。フィリピンの首都マニラはすでに西洋、特にアメリカのポップカルチャーからの多大な影響を受けているので、彼女らはフィリピンのもっと深い文化を探究するべきと考え、クリンタンの音楽に辿り着いたのだという。
クリンタンはフィリピン南部のミンダナオ島やスールー諸島で演奏されてきた楽器で、祭事で演奏され村民の共同体としての絆を深めるなど、単に娯楽としての楽器以上の役割がある。

そんなクリンタンを通じて絆を深めたカナダのフィリピン人たちのグループが演奏する音楽…というと、民族音楽を研究しつくしたフィリピン愛溢れるディープな音楽なのかと感じるかもしれない。
Pantayo がヤバイのはここからで、今作ではプロデュースをカナダの実験的音楽集団、Yamantaka // Sonic Titan の中心人物であるアラスカB(Alaska B)が担当。クリンタンが醸す強烈な民族音楽を軸にEDMのサウンドをまぶし、他に類をみないサウンドを創り上げた。
同じくトロントで活動するフィリピン系の俳優やダンサー、コメディアンなどで構成されるアーティスト集団ティタ・コレクティヴ(Tita Collective)をフィーチュアしたりと、バラエティ豊かな楽曲群が本当に楽しい。

(3)「Heto Na」のMV。曲名の意味は“here we go”らしい。
同じくトロント在住のフィリピン系女性アーティスト集団、ティタ・コレクティヴ(Tita Collective)をフィーチュア。

バンド名のパンタヨ(Pantayo)とは、タガログ語で「私たちのために」の意味を持つようだ。いまだに白人至上主義も根強く残っているというカナダで生きるアジア人として、トロントのグローバルな音楽発信の地勢を変えるとも期待されているというパンタヨ。本作のプロジェクトではカナダ政府や民間ラジオ放送局からの一部資金提供も受けているとのこと。今後の活動も注目したい、興味深いグループである。

Pantayo :
Eirene Cloma – vocals, bass, keyboard
Michelle Cruz – vocals, agong
Joanna Delos Reyes – vocals, gandingan, sarunay
Kat Estacio – vocals, kulintang, dabakan, programming
Katrina Estacio – vocals, kulintang, sarunay

Alaska B – Produce, drums and additional programming

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