世界中を魅了するシベリア先住民族バンド、Otyken。伝統音楽×EDMの衝撃

Otyken - Phenomenon

シベリア先住民族の文化を発信する

シベリアの先住民族チュリム族の人々らによって構成され、彼らの伝統楽器と歌唱法を西洋音楽やEDMと結びつけた注目のグループ、オティケン(Otyken)。2023年の新譜『Phenomenon』は、彼らが守ろうとする伝統文化を、世界の人々が最も興味を持つであろう形で発信した稀有な作品だ。

グループ名はチュリム語で戦士たちが武器を置いて語り合う神聖な土地を意味する。メンバーは全員がシベリア・クラスノヤルスク地方のタイガのチュリム川沿いの小さな村に住んでいる。彼らのほぼ全員は音楽活動以外の日常生活があるため、メンバーの入れ替わりも激しい。ほとんどが専門的な機関での音楽教育を受けていない地元の先住民族だが、伝統的に家族から楽器や伝統歌を学ぶために音楽の素養があるのだという。

とにかく、グループのMVで見られるビジュアルは衝撃的だ。日本人にとっては、彼らの民族衣装はアイヌのそれを思わせるほど似ている(事実、アイヌのルーツは彼らシベリア民族である)。漁業に従事する家庭で育ったヴォーカリストのAzyanによる強烈な表現力の歌唱。馬頭琴や口琴、モンゴルの喉歌(ホーミー)もダンサブルでわかりやすいビートに乗る。この音楽や映像表現は、世界中の多くの人々に訴求できる強さがある。

(8)「Legend」

歌詞はチュリム語、ハカス語、ドルガン語といった少数話者の言語、そして時々はロシア語で歌われている。歌詞の内容はハーブや松ぼっくりの収集、タイガ(針葉樹林)の中での狩猟のための移動、養蜂場での仕事、夜釣りのための準備など、普段の日常生活についてだ。困難も喜びも、ありのままの彼ら/彼女らの姿が音楽の中に込められている。

(3)「Storm」

OtykenのTikTokのアカウントは、すでにフォロワー260万人を超えている。
シベリアの片隅、人口数百人の小さな村から突如として世界に飛び出した彼らの動向に、多くの注目が集まっている。

先住民族の文化への敬愛から生まれた稀有なグループ、Otyken

Otykenは作曲家/プロデューサーのアンドレイ・メドノス(Andrey Medonos)によって2015年に結成された。その目的は、消滅しつつあるシベリアの先住民族の文化の維持だ。

メドノス自身はシベリア民族ではないが、シベリアの荒野にある家族の養蜂場で先住民族に囲まれて育ち、先住民族はメドノスの家系と長年にわたる養蜂の協力関係を維持していた。彼は養蜂業に従事しながら、狩猟、釣り、採餌、そして先住民女性との結婚といったチュリム文化にも深く関わった。彼はクラスノヤルスク市に蜂蜜民族学博物館を設立し、その館長となり、チュリム族、タタール族、ケット族、ハカス族、セルクプ族といった先住民族の文化を保存するとともに、講演会や集会も主催した。この博物館には、先住民が演奏する伝統的な楽器や歌を聴きに来る多く、彼は博物館でのコンサートで民族音楽を披露してくれる地元の人々を集めた。メドノスの妻はこの最初の出演者の一人であり、後にOtykenの衣装の担当者となった。

2013年、メドノスはチュリム文化を広く共有するためにYouTubeチャンネルを開設。現在でこそこのチャンネルは「Otyken」の公式チャンネルとなっているが、当初は養蜂ネタが中心で、時折蜂蜜生産に関連してチュリムの民間伝承や踊り、歌を紹介するような構成であった。
彼らの蜂蜜製品(エスノハニー)は日本でも人気となり、その売り上げが音楽制作、楽器、機材、衣装の資金調達としてバンドの設立に繋がった。2018年にOtykenとして最初のアルバム『Otyken』をリリース。翌年にはリハーサルやミーティングを開催するために養蜂場にパオが建設され、博物館で定期的にコンサートを開催するなど音楽活動を本格化させていった。

2022年の楽曲「Legend」はグラミー賞にもノミネートされるなど世界的に知名度を上げていった彼らだが、ロシアによるウクライナ侵攻を非難する西側諸国の制裁の煽りを受け、Paypalアカウントがブロックされ海外での販売が制限されたり、予定されていた2022年FIFAワールドカップ・カタール開会式でのパフォーマンスが土壇場で中止されたり、2023年の米国ツアーが中止されたりと困難にも直面している。

(5)「Genesis」

Andrey Medonos – producer, songwriter
Dmitry Kruzhkovsky – sound
Azyan – vocal
Hakkaida – drums
Tsveta – vargan (jaw harp)
Ach – throat singing, synthesizer
Kunchari – Ikiki, morinhur
Kykakacha – maracas, deer antlers
Otamay – khomys, string instrument
Sandro – shaman recitative

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