中東から北アフリカを経てアンダルシアへ。イスラエル最高のジャズ・カルテットによる圧巻の新譜

Omri Mor & Yosef Gutman - Melodies Of Light

オムリ・モールとヨセフ・ガトマン、双頭名義での新作

活動の空白期間を取り戻すように怒涛の勢いで新作をリリースするイスラエルのベーシスト、ヨセフ・ガトマン・レヴィット(Yosef Gutman Levitt)。2023年の立夏の頃に学生時代の旧友であり世界的ギタリストのリオーネル・ルエケ(Lionel Loueke)とのリユニオン作『Soul Song』をリリースしたが、早くもその続編となるアルバム『Melodies Of Light』がリリースされた。

前作『Soul Song』ではヨセフ・ガトマンとマルチ木管奏者のギラッド・ローネン(Gilad Ronen)との共作曲を、ギターのリオーネル・ルエケに加えピアノのオムリ・モール(Omri Mor)、ドラムスのオフリ・ネヘミヤ(Ofri Nehemya)という考え得る限りイスラエルの最高のジャズミュージシャンで構成されたカルテットで演奏していたが、今作ではカルテットのメンバーはそのままに、ピアノのオムリ・モール(Omri Mor)との双頭名義でヨセフ・ガトマンとオムリ・モールの共作曲を演奏するという作品になっている。

ハービー・ハンコック曰く“音楽の画家”なリオーネル・ルエケとの再会を祝うように彼のギターを大々的にフィーチュアした内容だった前作と比べ、今作での音楽的な変容は明らかだ。
楽曲にはオムリ・モールの特長であるイスラエルから北アフリカ沿岸を辿りイベリア半島の先端のアンダルシアまでを結ぶ文化の豊かな遺産をイスラエルに持ち帰ったような音楽的特徴が随所に見られ、オムリ・モールのソロの見せ場が多いという点でも非常に独自性のある魅力的なアルバムとなっている。

今作で最も特徴的な楽曲を挙げるとするならば、ユダヤ教の食事の前に唱えられる短い祈りを表すタイトルを冠せられた(2)「Movement Two – Hamotzi」、モロッコの音楽的エッセンスを感じさせる(3)「Movement Three – The Dance」や(5)「Movement Five – Jonah’s Garden」、オムリ・モールが創造的に紡ぎ出すピアノが圧巻の(7)「Movement Seven – Timbuktu」、9拍子の中東ジャズ(11)「Movement Eleven – 9 For Karim」あたりだろうか。

(5)「Movement Five – Jonah’s Garden」

Omri Mor プロフィール

ピアノのオムリ・モールは1983年イスラエル生まれ。
早くからクラシックとジャズの両方を学び、交響楽団のピアニストとしてクラシックの分野でも活躍する傍ら、ダニエル・ザミール(Daniel Zamir)やアヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)のバンドに帯同するなどジャンルを超えて活躍をしてきた。モロッコ生まれのイスラエル人ウード奏者ニノ・ビットン(Nino Bitton)に師事し北アフリカやアンダルシアの音楽を学び、モロッコやアルジェリアのミュージシャンとの共演を重ねるなど珍しい経歴のピアニストでもある。

世界的に見ても個性的で優れた音楽家たちを多数輩出するイスラエルにおいてその圧倒的な実力が目立っていた反面、彼自身のリーダー作というものが長らくなかったが、2019年に満を持して初リーダー作『It’s About Time!』をリリース。近年はサイドマンとしてだけでなく、リーダー/作曲家として自身の豊富な経験と類稀な個性を最大限にアピールする機会が増えている。

Yosef Gutman プロフィール

ヨセフ・ガトマン・レヴィット(Yosef Gutman Levitt, ヘブライ語:יוסף גוטמאן לויט)は南アフリカ・ヨハネスブルグから1時間程度の農場で生まれ育った。幼い頃から音楽の才能の兆しを見せ、最初にピアノ、そして10代後半でベースギターを手にとり、故郷南アフリカから米国に渡りボストンのバークリー音楽大学、そしてニューヨークに移り住んだ。ニューヨークには10年以上住み、ギタリストのリオーネル・ルエケらと広く演奏したが、この時期は残念ながら音楽への欲求不満と無力感が高まる時期でもあった。

音楽の道を歩むことをやめ、テック系の起業家として成功し10年ほど音楽から離れていたヨセフだが、近年になってユダヤ教のハシディズム(神秘主義的運動)の伝統的なメロディーをベースに再び音楽活動を開始。トレードマークである5弦のベースを持ち2019年1月にソロデビュー作『Chabad Al Hazman』をリリース。
2020年には古代ユダヤ教にインスパイアされた壮大なダブル・アルバム『The Sun Sings to Hashem』『The Moon Sings to Hashem』をリリース、2022年初頭には以前から大きな音楽的影響を受けていたブラジル音楽に傾倒した作品『Ashreinu』をリリースしている。

Omri Mor – piano
Yosef Gutman – bass
Ofri Nehemya – drums, percussion
Lionel Loueke – guitar

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