グナワとジャズ、幸せな土埃の匂い…。イスラエルのゲンブリ奏者シャイ・ハザン新作『Wusul』

イスラエルのゲンブリ奏者が贈る多様性のグナワ・ジャズ

前作『Reclusive Rituals』でグナワやジャズ、ヒップホップの高度な融合を見せたイスラエルのゲンブリ奏者シャイ・ハザン(Shay Hazan)が新作『Wusul』をリリースした。アルバムタイトルはアラビア語表記で「وصول」、”到着”を意味する。中米から日本までの広範囲にわたる旅の中で接した異文化から大きなインスピレーションを得ており、アルバムには東京世田谷・下北沢をテーマにした(7)「Shimo Kitazawa」をはじめとした豊かな楽曲群が収録されている。

中心にあるのは北アフリカのグナワ音楽と、ジャズの即興であることは間違いない。終始ワンコードで演奏される(1)「Dew」はトランスを誘うリズムとベースライン、適度なエレクトロニックの上で旧知のバンドメイトであるタル・アブラハム(Tal Avraham)の恍惚としたトランペットが空気を鋭く切り裂く。
アフロビート寄りの(2)「Oladipo」はフェラ・クティの伝説的なバンド「Africa 70」の音楽監督であり、サウンドの先駆者であるトニー・アレン(Tony Allen, 1940 – 2020)に捧げられている。

インドのジャズ・フュージョンからの影響を思わせる(3)「A Bite of Sand」

(4)「Sunflowers」はイスラエルを代表する鍵盤奏者ニタイ・ハーシュコヴィッツ(Nitai Hershkovits)をフィーチュア。(5)「A Walk in Dir El – Assad」はアラビアの小さな村の祝祭からインスピレーションを得ている。

(9)「Vibe Jadid」のベーシックトラックの録音風景。ルーパーやエフェクターも駆使し音楽を作ってゆく

Shay Hazan 略歴

シャイ・ハザンは1989年イスラエル生まれ。
ブラックミュージック、特にジャズを追求するうちに、そのルーツへ興味を持ち始めモロッコをはじめとした北アフリカの音楽を聴きはじめた。もともとダブルベースとエレクトリック・ベースの奏者だった彼はゲンブリを手に入れ、奏法をマスターし自身の楽曲に取り入れ、その個性を確立していった。

2021年にアコースティック・ジャズ・クインテット作『Nuff Headlines』とエレクトリック・グナワ・ジャズ『Reclusive Rituals』をリリース。

Shay Hazan – guimbri, guitar, percussions, synths, vocals
Tal Avraham – trumpet (1, 10)
Eyal Netzer – tenor saxophone (1, 2, 5, 6, 7, 8, 9)
Shahar Haziza – drums (1, 3, 5, 11)
Nir Tom Sabag – drums, percussion (2, 8, 10)
Roy Zuzovsky – trumpet (2, 5, 9)
Nitai Hershkovits – keyboards (4)
Ziv Taubenfeld – bass clarinet (8)
Orr Marciano – vocals (8)

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