(クラファンは~11月16日まで)「ブラジルをブラジルたらしめているもの」を理解するためのドキュメンタリー『2月のために 〜マリア・ベターニアとマンゲイラ』|「ブラジル映画祭+」で上映!

  • 2025-11-15
  • 2025-11-15
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 「ブラジル映画祭+」で、『2月のために 〜マリア・ベターニアとマンゲイラ』(原題:Fevereiros)が上映される。日本語字幕付きの予告編が公開された。

『2月のために 〜マリア・ベターニアとマンゲイラ〜』

© 2017 DEBÊ PRODUÇÕES / GLOBO / CANAL BRASIL

2017, 74分, 音楽ドキュメンタリー, 年齢制限 なし

2月の街は祝祭の舞台となる──リオのカーニヴァル、バイーアの祈り

2016年、名門エスコーラ・ヂ・サンバのマンゲイラは歌姫マリア・ベターニアをテーマに掲げ、勝利を手にした。映画は、ベターニアやカエターノの語りで、リオとバイーアを往還しながら、リオのサンバ・カーニヴァルと、バイーアのアフロブラジル信仰に基づく祭りの世界が交差する。ベターニアの芸術性が培われた故郷への愛とマンゲイラへの敬意が溢れたドキュメンタリー。

スタッフ
監督: マルシオ・デベリアン
脚本: ヂアナ・ヴァスコンセロス, マルシオ・デベリアン
プロデューサー: ダニエル・ノゲイラ, マルシオ・デベリアン
製作会社: デデ・プロドゥソンイス
共同製作会社: グローボ・フィルミス, グローボ・ニュース, カナル・ブラジル
撮影: ミゲル・ヴァシー, ペドロ・フォン・クリューガー
音響: ダニルソン・カンポス
編集: ヂアナ・ヴァスコンセロス, ABC

出演
マリア・ベターニア, カエターノ・ヴェローゾ, マベル・ヴェローゾ, シコ・ブアルキ, レアンドロ・ヴィエイラ, パイ・ポーチ, スケル・ジョルジア, ルイス・アントニオ・シマス, パイ・ジルソン, ジュリア・バスバウン, ニーナ・バスバウン

作品の受賞歴
In-Edit Brasil (2018)
最優秀ブラジル映画賞

ウルグアイ国際映画祭(2018)
イベロアメリカコンペティション部門 審査員特別賞

MUVI国際音楽映画祭(2019)
審査員特別賞

 原題の「Fevereiros」は「Fevereiro(2月)」の複数形だ。2月はカーニヴァルのパレードが開催されることの多い月だが、この映画の2月とは、カーニヴァルのことだけを指しているわけではない。2016年にマンゲイラがマリア・ベターニアへオマージュを捧げたパレードのことを扱うだけでなく、サント・アマーロで1月から2月初めにかけて催される諸祭礼のことも同等に扱う。サント・アマーロは、マリア・ベターニアが1946年6月18日に生まれた町だ。また、2005年にユネスコによって人類の無形文化遺産に宣言された「サンバ・ヂ・ホーダ」の発祥地としても知られている。
 カーニヴァル、サント・アマーロ、マリア・ベターニア、マンゲイラを結びつける中で、「ブラジルをブラジルたらしめているもの」を明らかにしていくドキュメンタリーで、マリア・ベターニアについてドキュメンタリーだが、「ブラジル」についてのドキュメンタリーでもある。特に、ブラジル北東部(ノルデスチ)に根ざしたブラジル的アイデンティティの寛容さと美しさに光を当てている。

 『2月のために 〜マリア・ベターニアとマンゲイラ』では、散漫さを避けて、証言という点では次の人々に焦点を絞っている(マリア・ベターニア以外で)。

マベル・ヴェローゾ(Mabel Velloso|姉、詩人)
カエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso|兄、音楽家)
シコ・ブアルキ(Chico Buarque|マリア・ベターニアが尊敬する存在、音楽家)
パイ・ジルソン(Pai Gilson|サント・アマーロのカンドンブレの指導者)
パイ・ポーチ(Pai Pote|サント・アマーロのカンドンブレの指導者)
レアンドロ・ヴィエイラ(Leandro Vieira|2016年マンゲイラのパレードデザイン責任者)
スケル・ジョルジア(Squel Jorgea|マンゲイラの旗手)
ルイス・アントニオ・シマス(Luiz Antonio Simas|記憶を扱う本作に不可欠な、歴史叙述の正当性を支える語り手、歴史学者)

 ブラジル音楽界の偉大な歌手、マリア・ベターニアの魂の根源に迫る、詩的で情熱的な映像作品『2月のために 〜マリア・ベターニアとマンゲイラ』のスタートは、2016年のカーニヴァルで、最も有名なエスコーラ・ヂ・サンバの1つ、マンゲイラがマリア・ベターニアをテーマに選び、見事優勝を果たしたことです。

 この年のマンゲイラのエンヘードは「マリア・ベターニア、オヤのお気に入り|Maria Bethânia, A Menina Dos Olhos De Oyá」というエンヘードでした。イアンサンとも呼ばれるオヤはオリシャ※の名前で、戦争、風、嵐、稲妻の神とされる。情熱的で、たえず邪悪や不正と戦う準備をしているとされるオリシャだ。

※オリシャとは、アフリカのヨルバ民族の信仰に由来する自然の精霊や神々のこと。これは、奴隷としてブラジルに連れて来られたアフリカ人が、カトリック信仰とヨルバの伝統的な信仰を融合させることで、独自の信仰を守るために発展したもので、ブラジルの主要な宗教文化である カンドンブレ の中心的な存在。

歌詞はこちらだ。

Maria Bethânia, A Menina Dos Olhos de Oyá(マリア・ベターニア、オヤのお気に入り)

Quem me chamou? Mangueira
Chegou a hora, não dá mais pra segurar
Quem me chamou? Chamou pra sambar
Não mexe comigo, eu sou a menina de Oyá
Não mexe comigo, eu sou a menina de Oyá

誰が呼んだ?――マンゲイラだ
時は来た、もう抑えきれない
誰が私を呼んだ?――サンバに呼んだのさ
ちょっかい出さないで、私はオヤの娘
ちょっかい出さないで、私はオヤの娘

Raiou
Senhora mãe da tempestade
A sua força me invade, o vento sopra e anuncia
Oyá
Entrego a ti a minha fé
O abebé reluz axé
Fiz um pedido pro Bonfim abençoar
Oxalá, Xeu Êpa Babá!
Oh, Minha Santa, me proteja, me alumia
Trago no peito o Rosário de Maria
Sinto o perfume… Mel, pitanga e dendê
No embalo do xirê, começou a cantoria

夜が明ける。
嵐を統べる母なる女神よ、
あなたの力が私に満ち、風が吹き告げる。
オヤよ、
私はあなたにこの信仰をゆだねる。
輝くアベベ(儀礼の団扇)にアシェ(聖なる力)がみなぎる。
ボンフィンに、どうか祝福を――と願いをかけ、
オシャラよ、父なる神よ、エーパ・ババ!
ああ、聖母さま、私を守り、私を照らして。
胸にはマリアのロザリオを抱き、
蜜とピタンガ、デンデ油の香りが漂う。
シレー(神々を讃える輪舞)の揺らぎに乗って、歌が始まった。

Vou no toque do tambor, ô ô
Deixo o samba me levar, Saravá!
É no dengo da baiana, meu sinhô
Que a Mangueira vai passar

太鼓の拍に身を任せて おお――
サンバに連れて行って、サラヴァ!
バイアーナの愛嬌にのせて、だんなさま、
マンゲイラが通り過ぎていく。

Voa, carcará! Leva meu dom ao Teatro Opinião
Faz da minha voz um retrato desse chão
Sonhei que nessa noite de magia
Em cena, encarno toda poesia
Sou abelha rainha, fera ferida, bordadeira da canção
De pé descalço, puxo o verso e abro a roda
Firmo na palma, no pandeiro e na viola
Sou trapezista num céu de lona verde e rosa
Que hoje brinca de viver a emoção
Explode coração

飛べ、カラカラよ! 私の賜物を『オピニオン』劇場へ運んでおくれ。
この大地を映す私の声の肖像を、どうか描いて。
夢を見た──この魔法の夜、
舞台で私は詩そのものを生きるのだ、と。
私は女王蜂、傷を負った獣、歌を刺繍する女。
裸足で立ち、先導の歌を放ち、輪をひろげ、
手拍子とパンデイロ、ヴィオラで拍を刻む。
緑とピンクの天幕の空を渡る曲芸師、
今日という感情を遊ぶように生きて──
胸よ、はじけろ。


 カトリックと、アフリカ系ブラジルの信仰であるカンドンブレ。この二つの信仰を融合させ、個人の深い信仰として生きるベターニアの姿をマンゲイラはエンヘードのテーマにしている。それ故、『2月のために 〜マリア・ベターニアとマンゲイラ』のテーマも、ベターニア自身だけでなく、その芸術と人生の核に据える「宗教的なシンクレティズム(混交)」にも焦点を当てていく。本作は単なる歌手の伝記ではなく、ブラジルの文化的・精神的な深層を探る旅となる。

 カメラは、カーニバルの華やかな喧騒から一転、ベターニアの故郷であるバイーア州のレコンカヴォ地方、サント・アマーロへと向かう。そこは、彼女の兄弟であるカエターノ・ヴェローゾやマベル・ヴェローゾら家族と過ごす、聖なる静寂と活気ある祭り、そして深く根付いた宗教的伝統に満ちた世界がある。

 映画は、この「リオデジャネイロ」と「バイーア」、そして「カーニバルの祝祭」と「宗教儀礼の厳粛さ」という対極にある要素を巧みに対比させながら、マリア・ベターニアという一つの魂の肖像を描き出す。故郷の豊かな文化が、いかに彼女の歌声や表現、そして人生観を形作ってきたのか。また、このバイーアのレコンカヴォ地方が、サンバの発祥にも大きな影響を与えたという歴史的な視点も提示され、ベターニアの人生を通してブラジルの歴史、宗教的寛容性、人種差別といった社会的なテーマにも触れていく。

 カエターノ・ヴェローゾや、シコ・ブアルキ、マンゲイラのカーニバルの責任者など、彼女を深く知る人々の証言も交え、唯一無二の存在であるマリア・ベターニアの、内面世界への貴重な窓を開く。ブラジルの音楽を愛するすべての人、そしてブラジルの文化と精神性に興味を持つ人にとって観るべきドキュメンタリーとなっており、In-Edit Brasil 映画祭では最優秀ブラジル映画賞を受賞した。

 『2月のために 〜マリア・ベターニアとマンゲイラ〜』が上映される「ブラジル映画祭+|cinebrasil+」の日程は以下の通り。

「ブラジル映画祭+|cinebrasil+」

劇場開催
 会場:ヒューマントラストシネマ渋谷
 期間:2026年1月9日(金)- 15日(木)

オンライン開催 動画配信プラットフォーム:Lumière
 期間:2026116日(金)– 215日(日)

 ひと足早く観たい人は、クラウドファンディングのリターンとして観ることができる。そのクラファン「2026年1月に新しい映画祭「ブラジル映画祭+」を開催したい!!!」は2025年11月16日(日)までとなっており、終了間近となっている。

「2026年1月に新しい映画祭「ブラジル映画祭+」を開催したい!!!」
 https://camp-fire.jp/projects/883575/ 

 音楽ドキュメンタリー 2作をオンライン試写で観られるリターンを選べば、12月中に『クルビ・ダ・エスキーナの物語〜すべてはあの街角から始まった〜』と、『2月のために 〜マリア・ベターニアとマンゲイラ〜』を観ることができる。

 ▶︎音楽ドキュメンタリー

 ・『クルビ・ダ・エスキーナの物語 〜すべてはあの街角から始まった〜』 (日本初公開)
  ── ブラジル音楽史上に残る傑作アルバム『Clube da Esquina』を生んだ音楽家たちが貴重映像とともに楽曲誕生の秘話を語り、名曲の数々を堪能できる作品。

 ・2月のために~マリア・ベターニアとマンゲイラ~』 (日本初公開)
  ──リオデジャネイロのカーニバルとサンバの背景を、ブラジルを代表する歌姫マリア・ベターニアの音楽人生を通じて深く知ることのできる作品。

 ▶︎音楽ドキュメンタリー

 ・『クルビ・ダ・エスキーナの物語 〜すべてはあの街角から始まった〜』 (日本初公開)
  ── ブラジル音楽史上に残る傑作アルバム『Clube da Esquina』を生んだ音楽家たちが貴重映像とともに楽曲誕生の秘話を語り、名曲の数々を堪能できる作品。

 ・2月のために~マリア・ベターニアとマンゲイラ~』 (日本初公開)
  ──リオデジャネイロのカーニバルとサンバの背景を、ブラジルを代表する歌姫マリア・ベターニアの音楽人生を通じて深く知ることのできる作品。

▶︎YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@s.e.a.ser_um_eterno_aprendiz

▶︎Campfire
https://camp-fire.jp/projects/883575/view

▶︎Official Site
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