- 2024-03-02
- 2024-03-13
祖国キューバへの悲痛な想いが滲む、社会派SSWダイメ・アロセナ新譜『Alkemi』
ジャズやR&B、レゲエなどを吸収した新たな表現を試みるキューバ新世代SSW、ダイメ・アロセナ(Daymé Arocena)が新譜『Alkemi』をリリースした。祖国に失望し、現在はプエルトリコに住む彼女の芸術家としての覚悟すら見える圧倒的なパワーを感じさせる作品だ。
スペイン音楽
ジャズやR&B、レゲエなどを吸収した新たな表現を試みるキューバ新世代SSW、ダイメ・アロセナ(Daymé Arocena)が新譜『Alkemi』をリリースした。祖国に失望し、現在はプエルトリコに住む彼女の芸術家としての覚悟すら見える圧倒的なパワーを感じさせる作品だ。
カタルーニャのシンガーソングライター、カロリーナ・アラバウ(Carolina Alabau)の第3作目となる『Una Frase Imaginada』。プロデューサー/ギタリストのハビエル・リモン(Javier Limón)と共同作業で作り出したこの傑作は、複雑すぎる社会の中で生きていく彼女の不安が、その繊細な表現を通じて霧のように目の前に存在しているような不思議な感覚を抱かせる。
1994年カタルーニャ生まれのシンガーソングライター/ギタリストのラウ・ノア(Lau Noah)が世界中のトップミュージシャンとのコラボレーションを収録した新譜『A Dos』をリリースした。世代も国籍も違うゲストたち──ジェイコブ・コリアー、ホルヘ・ドレクスレル、シルビア・ペレス・クルス、クリス・シーレ、セシル・マクロリン・サルヴァント、サルヴァドール・ソブラルなどが参加した美しい傑作。
トルコのフラメンコ・ギタリスト/作曲家ドルク・オクユジュ(Doruk Okuyucu)による新作EP『Daha』が素晴らしい。伝統的なフラメンコを礎にしつつ、本場スペインとはわずかに空気感の異なるオリエンタルなコンテンポラリー・フラメンコギターを堪能できる作品で、その音楽的な感覚はアルメニアのバハグニ(Vahagni)やイスラエルのイダン・バラス(Idan Balas)など、異国の地で独自にフラメンコ音楽を探求するアーティストと比肩する。
1990年代後半に結成され、スパニッシュ・ミクスチャーのムーヴメントを牽引したバンド、アンパラノイア(Amparanoia)。2008年に一度は解散したが、2017年に再結成。2枚のアルバムをリリースし、そして結成25周年を迎える2022年にはスタジオでブラスバンドのアルティスタス・デル・グレミオ(Artistas del Gremio)と初めて出会った。
スペイン・バルセロナのシンガーソングライター/歌手アルバ・カルモナ(Alba Carmona)。伝統的なフラメンコ歌手としての教育を受け、人気歌手シルビア・ペレス・クルス(Sílvia Pérez Cruz)が初期のキャリアを築いたヴォーカル・グループであるラス・ミガス(Las Migas)にシルビア脱退後の2011年に加入し2018年まで在籍した彼女のソロとしては2ndアルバムとなる『Cantora』は、フラメンコを基調とした超良質な作品だ。
バルセロナの女性二人組ユニット、アラル(ARAR)のデビュー作『Arar』は、ガットギターとサックスを中心とした温かみのあるサウンドに、二人によるコーラスが優しく溶け込むとても穏やかで素敵な作品だ。グループ名でありアルバム・タイトルでもあるararとは、カタルーニャ語で“耕す”、つまり種を蒔くために大地を掘り返し、豊かな作物が実る土壌をつくることを意味する。
2018年の前作『Miradas』がラテングラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・ポップ・アルバム」部門にノミネートされたメキシコのSSW、ナナ・メンドーサ(Nana Mendoza)の2023年新譜『...』は限りなく良質なスペイン語ポップスだ。R&B、ジャズ、ボサノヴァなどから少しずつ影響を受けた爽やかだが安っぽさのない歌とサウンドで、エレクトリック要素も濃かった前作に比べると随分とアコースティックでジャズ寄りの作風が特徴的。彼女の最高傑作ではないかと思わせる素晴らしい仕上がりの作品となっている。
アンダルシア、北アフリカ、中東といった地中海を取り囲む地域の豊かな伝統音楽と西洋のクラシック音楽がジャズという言語のもと、最高のレベルで出会った作品と言っても過言ではないだろう。イスラエル出身、オランダ・アムステルダムを拠点に活動するアヴィシャイ・ダラシュ(Avishai Darash)が、彼が芸術監督を務めるマルムーシャ・オーケストラ(Marmoucha Orchestra)を率いて録音したアルバム『Andalusian Love Song』。それぞれ出自の異なる15名の個性的な音楽家たちによる祝祭の饗宴。
フルートやピアノ、パーカッションなどのマルチ奏者であり、類稀な声を持つ歌手のマガリ・サレ(Magalí Sare)と、コントラバス奏者マネル・フォルティア(Manel Fortia)のデュオによる第二作『reTORNAR』。二人の高い芸術性のなかで、即興のアイディアがこれでもかと溢れる傑作だ。
カタルーニャを代表する女性SSW、シルビア・ペレス・クルス(Sílvia Pérez Cruz)の2023年新譜『Toda la vida, un día』は、全21曲の膨大な楽曲群を5つの楽章に分け、人生のサイクルと無限の循環に焦点を当てた圧巻の作品だ。シルビア・ペレス・クルスはパンデミックの中で人の命について考える必要性を感じ、実に90人の音楽家たちとじっくりと作品を練り上げていったという。
スペインを代表するシンガーソングライター、ジュディット・ネッデルマン(Judit Neddermann)のソロ5枚目となる新譜『LAR』。ソフトロック、フォーク、ジャズ、南米音楽などがカタルーニャの多様性の文化の中で混ざり合い、スペイン随一と言われるジュディット・ネッデルマンの美しい声を際立たせる素敵な作品だ。
2001年生まれの彼女もまた、サン・アンドレウ・ジャズバンド出身で、ジョアン・チャモロの傍を離れてアーティストとしての新しい道を歩み始めたスペインの将来を嘱望される新世代の音楽家だ。名はアルバ・アルメンゴウ(Alba Armengou)。サン・アンドレウ・ジャズバンド(SAJB)の最初のスターであるアンドレア・モティスの後継的な存在だった彼女が、同バンドを卒業して初めてのソロ作である『Susurros del Viento』をリリースした。
アフリカ大陸の北西・大西洋に浮かぶカナリア諸島出身のSSW、ペドロ・ゲーラ(Pedro Guerra)の2021年作『El Viaje』がとにかく素晴らしい。ナイロン弦ギターと歌を軸とした誠実な音作りを特長とする作品で、どこまでも内省的で穏やかな作風は疲れがちな多くの現代人の心に響くだろうと思う。