- 2025-03-25
- 2025-03-08
バンドネオンの未来を示す。ルイーズ・ジャリュの温故知新プロジェクト『Jeu』
フランスの天才バンドネオン奏者ルイーズ・ジャリュ(Louise Jallu)の2024年作『Jeu』。ピアソラの生誕100周年を記念し絶賛された前作『Piazzolla 2021』(2021年)を経て、今作では自身の作曲を中心にシューマンやラヴェル、ブラッサンスといった影響を織り交ぜた多彩なアプローチを見せている。
フランスの天才バンドネオン奏者ルイーズ・ジャリュ(Louise Jallu)の2024年作『Jeu』。ピアソラの生誕100周年を記念し絶賛された前作『Piazzolla 2021』(2021年)を経て、今作では自身の作曲を中心にシューマンやラヴェル、ブラッサンスといった影響を織り交ぜた多彩なアプローチを見せている。
フランスのピアニスト/作曲家トニー・パエルマン(Tony Paeleman)の新譜『Wise Animals』は、この1981年生まれの鍵盤奏者が2021年にベースのジュリアン・エルネ(Julien Herné)とドラムスのステファン・ハチャード(Stéphane Huchard)とともに録音し高い評価を得た『The Fuse』の待望の続編であり、おそらくは彼のキャリアにおいてもピークに達した感のある傑作だ。
フランスの社会派ミクスチャーバンド、ズーフリ・マラカス(Zoufris Maracas)の4枚目のスタジオ・アルバム『La course folle』。アルバムはコロンビアとフランスで録音され、アフロキューバン、カーボベルデ、マヌーシュジャズなど多様な音楽的要素を取り込み、日常の葛藤や自由への渇望をユーモラスかつ鋭い表現で歌っている。
モロッコ出身で現在は米国ニューオーリンズを拠点とするマルチ弦楽器奏者/作曲家マフムード・ショウキ(Mahmoud Chouki)。2024年リリースの『Caravan "From Marrakech To New Orleans"』は、ギターやウードを卓越した技巧で操り、マグレブ(北西アフリカ諸国)の音楽とニューオーリンズで生まれたジャズを融合した独創的な音楽で国際的に称賛される彼の新作だ。
台湾原住民であるパイワン族出身のシンガーソングライター、タイ・シャオチュン(戴曉君, Sauljaljui)『VAIVAIK 尋走』。アルバム名はパイワン語で「旅立つこと」を意味し、彼女の音楽的探求と自己発見の旅を象徴するアルバムで、パイワン族の伝統音楽と世界各地のリズムや楽器を巧みに交えた洗練されたサウンドの中に、どこか懐かしい感覚を想起させる優れた作品だ。
ブラジル・リオデジャネイロから、また新たな狂才が現れた。リオ郊外のバイシャーダ・フルミネンセで育った1998年生まれのSSW、カシュトリーニョ(Caxtrinho)のデビューアルバム『Queda Livre』。サンバやカンドンブレといったブラジルの伝統を確かに受け継ぎながらも、それらの原型をほとんど留めないほどに弄り回し、強烈なファズの効いたギター、ドラッグに塗れたジャズを大鍋にぶち込んで掻き混ぜたような凄まじい音楽だ。
カナダ・トロントを拠点とするピアニスト/作曲家ジェレミー・レッドベター(Jeremy Ledbetter)率いるピアノトリオの2024年新譜『Gravity』。スナーキー・パピー(Snarky Puppy)のドラマーとして知られるラーネル・ルイス(Larnell Lewis)と、スティーヴ・コールマン(Steve Coleman)との活動で知られるベーシストのリッチ・ブラウン(Rich Brown)とのトリオで、2018年のデビュー作『Got a Light?』以来の新作だ。
イタリアン・ジャズの鬼才ピアニスト/作曲家ランベルト・キアンマルギ(Ramberto Ciammarughi)が、欧州ジャズの象徴的存在のトランペット奏者パオロ・フレス(Paolo Fresu)、打楽器アンサンブルのテトラクティス・パーカッシオーニ(Tetraktis Percussioni)、さらに声楽アンサンブルのアドカントゥス合唱団(AdCantus Ensemble Vocale)、ヴォーカリア合唱隊(Vocalia Consort)から成る大編成を率い録音した圧巻の新譜『Intramontes』。ラテン語で山の間を意味するが、その山々を抜けて、さらにその奥に広がる空間も意味するタイトルの通り、刺激的で示唆に富む音響が広がる作品だ。
オーストラリア出身のベーシスト/作曲家ロス・マクヘンリー(Ross McHenry)の5枚目のアルバム『Waves』(2024年)。2019年の夏のオーストラリアを襲った史上最悪の森林火災をきっかけに制作された。バンドはドラムスのエリック・ハーランドやピアノのマシュー・シーンズを中心に、テナーサックスのダニー・マッキャスリン、トランペットのアダム・オファーリル、ギターのベン・モンダーとNYで活躍するスターが集結。前述の災害を含め、ロス・マクヘンリーの個人的な記憶に基づく出来事で覆われており、全体的に彼の優れたストーリーテラー/作曲家としての輝きを強調する素晴らしく調和した演奏で、“内省的”という看板を掲げるに相応しい作品となっている。
イタリアのサックス/クラリネット奏者フランチェスコ・ベアザッティ(Francesco Bearzatti)と、同じくイタリアのギタリストのフェデリコ・カサグランデ(Federico Casagrande)の極上のデュオ作『And Then Winter Came Again』。音楽は穏やかだが、ジャズを軸にジャンルの壁なく活躍してきた誇り高き気鋭の音楽家である二人の実験的な精神がさりげなく詰め込まれた極上の作品となっている。
ポルトガルの新世代ジャズ・ヴィブラフォン奏者エドゥアルド・カルヂーニョ(Eduardo Cardinho)の3枚目のアルバム『Not far from paradise』は、ジャズ、現代音楽、クラシックといった要素が高次元で融合した知性的な作品だ。7人編成のバンドには特別な才能が集結し、高度な即興のロジックの上に成り立つ自由な実験的精神性が発揮された演奏が繰り広げられる。
予測不能な奇妙なポップネスが炸裂する話題作!米国ニューヨーク出身のマルチ奏者ザック・フィリップス(Zach Phillips)と、ベルギー・ブリュッセル出身のシンガー、マ・クレマン(Ma Clément)によるオルタナ・ジャズポップ・ユニット、ファイベル・イズ・グローク(Fievel Is Glauque)による2024年作『Rong Weicknes』。そのオリジナリティは新鮮で突き抜けており、キャッチーでアーティスティックなセンスに脱帽。
あらためて、アントニオ・カルロス・ジョビンは史上最高の作曲家だったと思う。彼がこの世を去って久しいが、遺された作品のあまりに洗練されたコードとメロディー、そして詩情豊かな歌詞──その多くはヴィニシウス・ヂ・モライスの才能によるものだが──による奇跡的な音楽は、今も多くの人々を惹きつけてやまないし、その“新しさ”は決して古臭くなることがない。
バルセロナのジプシー・ブラスバンド、バルカン・パラダイス・オーケストラ(Balkan Paradise Orchestra, BPO)。誰もが踊りたくなるような力強いバルカン・ブラスに、女性のみの大編成というビジュアルの華やかさも相まって度々SNSでも話題となる彼女らの2024年『Nèctar』は、確固たるバルカンの伝統と実験的な現代性の同居する稀有なバンドによるジプシー・ブラスの傑作だ。