- 2026-05-08
- 2026-04-18
フルート奏者イタイ・クリス、NYの名手たちと繰り広げる軽やかなジャズ
イスラエル出身で現在はニューヨークを拠点とするジャズ・フルート奏者/作曲家イタイ・クリス(Itai Kriss)の『Daybreak』は、彼らしい軽やかさでジャズのリード楽器としてのフルートの素晴らしさを印象付ける、良質な作品だ。アルバムは夜明けから日没までの一日の流れを12の楽曲で表現。ゴスペルやサンバなどにも影響を受けつつ、多彩な技法で“充実した一日”を送る。
イスラエル出身で現在はニューヨークを拠点とするジャズ・フルート奏者/作曲家イタイ・クリス(Itai Kriss)の『Daybreak』は、彼らしい軽やかさでジャズのリード楽器としてのフルートの素晴らしさを印象付ける、良質な作品だ。アルバムは夜明けから日没までの一日の流れを12の楽曲で表現。ゴスペルやサンバなどにも影響を受けつつ、多彩な技法で“充実した一日”を送る。
フランス出身のジャズ・ヴィブラフォン奏者、サイモン・ムーリエ(Simon Moullier)が早くも6作目となるアルバム『Ceiba』をリリースした。熱帯アメリカやアフリカに自生し、さまざまな文化で神聖視される巨木セイバをインスピレーションの源とし、ポスト・バップから現代のジャズ、そして未来のジャズまでをも見据えたエキサイティングな傑作だ。
ジャズやファンクにグナワ音楽を持ち込み、その強烈なグルーヴで四半世紀以上にわたり人々を踊らせてきた米国のジャムバンド、クラブ・デリフ(Club d'Elf)。バンドにグナワの遺伝子を注いだ活動初期からの最重要メンバーであるモロッコ出身のブラヒム・フリーブガーン(Brahim Fribgane)は2024年初頭に亡くなったが、彼への追悼とともに“トランス体験”を是とするコレクティヴの根幹的な魂が健在であることを証明したのが、2026年4月にリリースされた最新作『Loon & Thrush』だ。
サックス、シンセ、ドラムスというユニークな編成のオルタナティヴ・ジャズトリオ、ラスト・シーン・アライヴ(Last Scene Alive)のデビューアルバム『World Class Pep Talk』が面白い。バンドは米国ワシントンD.C. とオランダ・アムステルダムを拠点とするミュージシャンによって構成されており、即興演奏を主体にジャズやパンクロック、フュージョンなどジャンルを超越した刺激的な音楽を激しく展開する。
BLM運動と密接に関わってきたNYブルックリンのジャズ・コレクティヴ、イレヴェーシブル・エンタングルメンツ(Irreversible Entanglements)が、5作目となる『Future Present Past』をリリースした。これまでの彼らの作品、特に初期の激しい怒りと痛みの表現と比べ、本作は「喜び(joy)」に焦点を当てており、フロント・ウーマンであるムーア・マザー(Moor Mother)の詩も従来のような正義心から沸く怒りよりも、高揚する喜びや励ましといったポジティヴな感情へと変化している。
ともにブラジル出身で、ニューヨークを拠点に活動する歌手ジャミーレ(Jamile)と、ギタリストのヴィニシウス・ゴメス(Vinícius Gomes)によるデュオ・アルバム『Boundless Species』。多くの曲でジョー・マーティン(Joe Martin)のダブルベースもフィーチュアし、ブラジル音楽とジャズの境界を溶かす、新たなブラジリアン・ジャズを模索する。
英国のサックス奏者ティム・ガーランド(Tim Garland)と、米国のピアニストのジェフリー・キーザー(Geoffrey Keezer)のデュオによる新譜『Mezzo』。注目は、ティム・ガーランドが吹く極めて希少なメゾソプラノサックスだ。この楽器はデンマークの現代の名工ペーター・イェッセン(Peter Jessen)製の世界にわずか20本程度しかないサックスのうちの1本で、通常のソプラノサックスとアルトの中間の音域を持つ。コーラングレのような温かみのある低音から、フリューゲルホルンのような力強い中音域まで、独特のトーンが魅力の楽器だ。
スペイン・カタルーニャ出身、現在はアメリカ・ニューヨークを拠点とするトロンボーン/フルート奏者/歌手/作曲家のアルバ・プジャルス(Alba Pujals)の2ndアルバム『Sincretisme』。8曲中6曲がアルバ・プジャルスによる作曲で、タイトルであるシンクレティズム(混淆主義)が示すとおり、ジャズを基調に現代的なジャンル混淆をテーマとした先鋭的な快作だ。
米国のギタリスト、デヴィッド・フュージンスキー(David Fiuczynski)の1999年のアルバム『Jazzpunk』は、今こそ再評価されるべき作品かもしれない。彼にとってのヒーローたちの楽曲をジャズの技術とパンクの精神で再解釈したこのアルバムは、主流のブレイク・スルーとはならなかったかもしれないが、潜在的な意識面でジャズという音楽に対する“革新”の流れを加速させた傑作だと思う。
アメリカ・テキサス州出身のエリトリア系トランペット奏者ハーモン・メハリ(Hermon Mehari)と、3人のフランス人音楽家──ピアニストのエンゾ・カルニエル(Enzo Carniel)、ベーシストのダミアン・ヴァライヨン(Damien Varaillon)、ドラマーのステファン・アズュアール(Stephane Adsuar)──によるカルテット、ナウ・ビューティ(NO(w) Beauty)による2枚目のアルバム『(un)Seen』。伝統的なジャズと、フランスらしい多文化がもたらす知的な音楽的探求が楽しい作品だ。
現代ジャズを代表するピアニスト/作曲家のシャイ・マエストロ(Shai Maestro)の新作『The Guesthouse』は、時空すらも操っているのではないかと思わせるほど優れた傑作だ。彼の音楽は世界のユートピアを描くと同時に、ディストピアも体現する。その場の感情を、彼らがその長い人生のなかで培ってきた技術で即興的に表出する音楽である「ジャズ」を、ここまでアーティスティックに昇華した作品はほかになかなか見られない。個人的にシャイ・マエストロは2016年の名盤『The Stone Skipper』が頂点だと感じていたが、今作はそれを遥かに超えてきた。
オデッド・ツール(Oded Tzur)が奏でるテナーサックスは、ごくごく普通の真鍮製の楽器なのに、なぜだか“木の音”がする。もっと言えば、木管の中をとおる、“風の音”がする。オデッド・ツールのテナーサックスはいつもとても繊細で、まるでヨガの呼吸の延長にあるかのようだった。けれど、2026年3月初頭にリリースされた彼の新作『Make A Sound』を聴いて、正直僕はかなり驚いた。
パーフェクト、なアルバムではないだろうか。巨匠ギタリスト、パット・メシーニ(Pat Metheny)の新作『Side-Eye III+』。久々にフュージョン/ブラジル音楽寄りのアルバムで、どこまでも果てしなく広がる空間的なサウンドはライル・メイズが居たかつてのパット・メシーニ・グループを彷彿させつつ、確かに現代の音にアップデートされている。長尺の楽曲群はメシーニらしいドラマチックな展開が満載で、アクセルを緩めることなくハイウェイを疾走し、次々と景色が流れゆくかのよう。もう一度言おう、完璧な作品だ、と!
ドイツ出身のベーシスト/作曲家、マーティン・ウィンド(Martin Wind)が、ジャズの名手たちを集めたカルテットで語り合うように音を紡ぐアルバム『Stars』をリリースした。ピアノにケニー・バロン(Kenny Barron)、クラリネットにアナット・コーエン(Anat Cohen)、ドラムスにはマット・ウィルソン(Matt Wilson)というオールスター級のメンバーを揃え、音楽の悦びが静かに滲むようなインタープレイが素晴らしい作品となっている。