ロウレンソ・ヘベッチス:ブラジル音楽と現代JAZZを繋ぐ異色のラージアンサンブル傑作

Lourenco Rebetez - O Corpo de Dentro

アフロブラジル音楽×現代ジャズの快作

ブラジル出身のギタリスト/作編曲家、ロウレンソ・ヘベッチス(Lourenço Rebetez)の2016年作品『O Corpo de Dentro』はアフロブラジル音楽と現代ジャズを繋ぐ近年の重要作だ。

アルバムを聴くと、現代ジャズらしいサウンドに絡む迫力あるパーカッションがまず耳に飛び込んでくる。カンドンブレ(ブラジルの民間信仰)を匂わせる、土着的な打楽器演奏は、洗練されたジャズアンサンブルに不思議な魔法をかける。

アフロ・ブラジルのパーカッションが加わることによってリズムが強調されたそのサウンドは、ヴォイスやラップこそ入っていないものの、充分にヒップホップやネオソウルの要素も感じられるし、1曲目を流した瞬間から「あ、これは何か、新しい音楽だ…!」とグイグイと惹き込まれる魅力がある。

(2)「Ozu」のライヴ演奏。
ジャズのラージアンサンブルに絡むプリミティヴなパーカッションが気持ち良く、斬新だ。

ブラジルの豊かな音楽文化を新しい形で世界に伝える

ロウレンソ・ヘベッチス(Lourenço Rebetez)はサンパウロ出身。アメリカ合衆国・ボストンの名門バークリー音楽大学でギターや作曲を学び、本作『O Corpo de Dentro』でアルバムデビューを果たした期待の新鋭だ。プロデューサーにはアート・リンゼイ(Arto Lindsay)を迎え、ピアノ、ベース、ドラムス、6人の木管・金管楽器、3人のブラジリアン・パーカッション(アタバキ、チンバウ、スルドやカシシ)、そして自身が担当するギターという編成で録音されている。

ギタリストの作品と思って聴き始めると、なかなかギターの音が現れないことに驚くだろう。この作品の主軸は大人数でのジャズ・アンサンブルであり、さらにはブラジル北東部バイーアの伝統的なパーカッションのリズムとの融合を主題としている。ギターは数曲で控えめだがセンス抜群の演奏を披露しているものの、ライヴ映像を観ても分かるように彼はギタリストとして自らのソロで目立つことは目的とせず、むしろ趣向を凝らした作曲の中に巧妙に溶け込ませるように思える。

(5)「Ímã」のライヴ映像。

ロウレンソ・ヘベッチスはコンテンポラリーダンス、映画、演劇のアーティストとのコラボレーションといった活動も行っている。
ブラジルの豊かな音楽文化を世界に伝える重要なアーティストとして、今後の活躍にも期待したい。

Lourenco Rebetez - O Corpo de Dentro
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