キンガ・グゥイク、ベースヒーローたちの音を受け継いだ現代のフュージョン
先行配信された「Joy Joy」がSNSなどで話題を呼んでいたポーランド出身のベーシスト、キンガ・グゥイク(Kinga Głyk)の新作アルバム『Feelings』が11月1日よりついに全曲リリースとなった。
1曲目から、マーカス・ミラー(Marcus Miller)やジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)ら往年のジャズ/フュージョンのベースヒーローたちからの影響を隠そうともしない今時珍しい“フュージョン”ど真ん中のベースプレイが続く。
1997年生まれと驚くほど若い彼女自身がそうした音楽が大好きなのだろうが、この20年間ほどこうしたフュージョンサウンドに飢えていたリスナーたちにとっても、需要に対する供給を彼女一人で埋められることが可能と思えるほど、キンガ・グゥイクというベーシストの出現は衝撃的なのではないだろうか。
彼女のこのアルバムは、誰もがフュージョンというジャンルに夢中だった時代を容易に思い起こさせる。
このタイトすぎるほどのドラムスはスティーヴ・ガッドか、はたまたヴィニー・カリウタか。
シンセサイザーやキーボードはジョー・ザヴィヌルのそれだろうか。
いや、もちろんそんな大御所たちは本作には参加していないのだが…。
2019年に発表されたキンガ・グゥイクの最新作からは、確かにそうした往年のフュージョンというジャンルの暑苦しく胸焼けのするような香りが漂ってくるのだ。
ハタチそこそこの美しい北欧女子が、昔懐かしいフュージョンサウンドのベースを確かなテクニックで“今”弾いているということにおそらく大きな、とても大きなバリューがあるのだと思う。キンガ・グゥイクという才能がこのまま“コンテンツ”として消費されていくのか、それともこれから何か大きな新しい変化が起こるのか…楽しみにしていたい。
…そんなことを感じたアルバムだった。