ボサレノヴァ・トリオ新譜『Atlantico』
今回紹介する『Atlantico』はブラジルを代表する歌手、パウラ・モレレンバウム(Paula Morelenbaum)とドイツ出身のトランペッター、ジョー・クラウス(Joo Kraus)、同じくドイツのピアニストラルフ・シュミッド(Ralf Schmid)によるトリオ「Bossarenova Trio」の2019年作。
カルロス・リラのカヴァー(1)「Carlos Lyra」で始まる今作はボサノヴァ、MPB〜ジャズの名曲が満載だ。
ほとんどはポルトガル語で歌われるが、フランス語で歌われるシャルル・トレネの名曲(5)「Que Reste-T-Il de nos Amours(残されし恋には)」といった絶妙な選曲や、随所にみられるさりげない音響効果も心地良い。
誰もが知るボサノヴァの名曲(8)「Samba de Uma Nota(ワンノート・サンバ)」もリハーモナイズが施された新鮮なアレンジで聴きごたえは抜群。
パウラ・モレレンバウムは1962年、ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。チェロ奏者の夫、ジャキス・モレレンバウム(Jaques Morelenbaum)とともに後期のアントニオ・カルロス・ジョビンのバンドで活躍し、現代のボサノヴァのシンガーのカリスマ的な存在となっている。
夫ジャキスと坂本龍一らと録音したジョビン・トリビュート作『Casa』(2001年)は米国のビルボード誌によって2001年のベスト10アルバムにも選出されるなど世界的なヒットとなった。
ジョー・クラウス(tp)、ラルフ・シュミッド(p)とは2009年にドイツのSWRビッグバンド(SWR Big Band)による“現代のボサノヴァ”を表現するプロジェクト、ボサレノヴァ(Bossarenova)で知り合った。
このトリオでは2010年に『Bossarenova』、2013年に『Samba Prelúdio』とアルバムをリリースしており、世界中でのツアーも成功させている。