北欧のチューバ奏者ダニエル・ハースケダール、完璧な孤独のアルバム『Call for Winter』
ノルウェーのジャズ・チューバ奏者ダニエル・ハースケダール(Daniel Herskedal)の7枚目のアルバムとなる新譜『Call for Winter』(2020年)は、チューバやバストランペットの多重録音で創られた完全なるソロ作。
ノルウェーの南サーミ高地(Southern Saami highlands)に建てられたキャビンをスタジオにし収録された全12曲は、アルバムタイトルに相応しい孤高の音楽で、北欧の厳しくも美しい自然や、人間本来の孤独の姿を語る。
ここには決して派手さはないが、チューバやバストランペットという楽器が生み出す表現力の限界へのチャレンジに興味があるならば、ぜひ集中して聴いてほしい作品。表現手法の一部としてわずかなエフェクトを効かせながら奏でられるこれらの音に深く耳を傾けることは、北欧への想像の旅の一番の近道だ。
そして今作は、旅をテーマにした三部作『Slow Eastbound Train』(2015年)、『The Roc』(2017年)、『Voyage』(2019年)の末に辿り着いた故郷ノルウェーという文脈で聴いてみるのも面白い。旅の道中でダニエル・ハースケダールは多くの仲間(楽器奏者)に出会ってきたが、そんな彼がたった一人で家に帰り、孤独の中で創り上げた作品というふうに捉えれば、また違った楽しみ方もできそうだ。
ダニエル・ハースケダールは1982年生まれ。ノルウェーで最も才能あるジャズチュービストとして評価されている。最初にフレンチホルン、その後チューバの演奏を始めた彼は2004年に行われたゲチョ国際ジャズコンテスト(Getxco international jazz competition)でのソリスト賞を皮切りに数々の賞を受賞。徐々にその名を知られていった。
2010年に『City Stories』でアルバムデビュー、以後これまでに6枚のスタジオアルバムをリリースしている。
2016年には自身のバンドを率いての来日公演も行い、日本を代表するジャズヴァイオリニスト、太田惠資との共演も果たしている。
Daniel Herskedal – tuba, bass trumpet