アルゼンチンのSSW/ピアニスト、ノア・サルモリア
アルゼンチンのコンテンポラリー・ジャズを代表するピアニスト/シンガーソングライター、ノラ・サルモリア(Nora Sarmoria)の新譜『Mayéutica』。
アルゼンチンの現代ジャズらしく複雑な楽曲構成だが、不思議とポップで美しい素晴らしい作品だ。
(2)「Más Allá de la Ilusión」では彼女の愛娘で歌手のカタリナ・ワルド・サルモリア(Catalina Ward Sarmoria)がゲスト参加し、可憐な歌声を聴かせてくれる。
(3)「Precisamente Eso」や(5)「Mariposá Mburucuyá」、(6)「Chicharras」ではノラ自身がヴォーカルを披露。アルゼンチンの現代ジャズに特徴的な繊細なメロディー、和音に絡む歌声もとても美しい。
演奏はピアノ、サックス、ドラムスのトリオ編成。ベースレスだが、ノラ・サルモリアの左手がしっかりと低音をカヴァーし物足りなさは感じない。むしろベースがいないことでアルゼンチンの現代ジャズらしい爽やかさや心地良い浮遊感が感じられるかもしれない。
アルバムタイトルの“Mayéutica”とは“助産師”を意味する言葉のようだが、その起源はソクラテスの時代まで遡り、赤ちゃんの誕生のみならず、人の思考の誕生を助けるといった意味でも用いられる言葉のようだ。これは即興演奏による音楽(そしてそれは、いつも儚くも力強い)を生み出す音楽家たちの哲学を端的に表す深い言葉のように思える。
現代アルゼンチン・ジャズを代表する鬼才
ノラ・サルモリア(Nora Sarmoria)は1968年、ブエノスアイレス生まれ。
1995年に『Vuelo Uno』でデビュー、これまでに10枚以上のアルバムを発表している。自身の作品だけでなく、音楽教育者として、また2007年からは20名のオーケストラ、American Orchestra のディレクターを務めるなど幅広い活動を行っている。
2013年には世界中から注目のピアニストが集う祭典「ザ・ピアノ・エラ」で来日も果たし、大きな喝采を浴びた。
Nora Sarmoria – piano, vocal
Patricio Bottcher – alto saxophone
Andres Jubert – drums
Guest :
Catalina Ward Sarmoria – vocal (2)