メキシコ生まれのベーシスト、マウリシオ・モラレスのデビュー作
新人ジャズベーシストのデビュー作としては、充分すぎる内容だろう。
メキシコシティ生まれでロサンゼルスを拠点に活動する新星ベーシスト/作曲家、マウリシオ・モラレス(Mauricio Morales)のデビュー作『Luna』は絢爛な弦楽四重奏がフィーチュアされた胸踊るジャズ作品だ。マウリシオ自身の少年時代へのオマージュだという本作で、この若きベーシストは純真な希望や探究心に満ちた想像力豊かな世界観を描いて見せる。アルバムに収められた7曲は独立した作品というよりもひとつの組曲のようで、自然をテーマにした壮大な景色を想起させるアレンジも素晴らしい。
(3)「Terremoto」はスペイン語で”地震”の意味で、2017年にメキシコシティを襲ったマグニチュード7.1の大地震にインスパイアされている。この曲に限らないが、マウリシオ・モラレスの本作では弦楽四重奏の響きが重要な役割を果たしており、その存在がマウリシオの作編曲家としての魅力を最大限にアピールする手段ともなっている。丁寧にドラマティックにアレンジされたストリングスを堪能できる素晴らしい1曲である。
本作への参加メンバーにはイスラエル出身のハーモニカ奏者ロニ・エイタン(Roni Eytan)、激しいプレイで話題を振りまく米国の女性アルト奏者ヘイリー・ニスワンガー(Hailey Niswanger)、ソロにサイドマンにと縦横無尽の活躍を見せるアルメニアのチェロ奏者アルチョーム・マヌーキアン(Artyom Manukyan)、ポーランドの女性ピアノ奏者アガ・デルラク(Aga Derlak)ら、多国籍のハイレベルなミュージシャンが揃う。マウリシオは14歳でベースを手に取り、ジャズのみならずゲーム音楽や映画音楽に強く影響されながら、ジャズの名門校である米国ボストンのバークリー音楽大学に留学し学んでいる。そこで築かれた国際色豊かな人脈も彼の強さのひとつだ。
将来が楽しみなベーシストがまたひとり現れた。
Mauricio Morales – bass
Gene Coye – drums
Juan Ale Saenz – drums
Patrick Simard – drums
Aga Derlak – piano
Aidan Lombard – trumpet
Roni Eytan – harmonica
Hailey Niswanger – alto saxophone
Al Joseph – guitar
Megan Shung – violin
Luis Mascaro – violin
Rita Andrade – violin
Artyom Manukyan – cello