UKベーシスト、Fergus Quill 率いるトリオの1st
イングランド北部の都市リーズを拠点とするベーシスト/作曲家ファーガス・クイル(Fergus Quill)がトリオを中心としたアンサンブルで聴かせる前衛的なジャズ作品『Zoop Zoop』でデビュー。ホンキートンク・ピアノで投げやり気味に演奏される酔狂なラグタイム・ブルース(1)「¿Who Shot Pinetop?」から独特の存在感を示す演奏が繰り広げられる。
この冒頭の狂気じみた圧巻の演奏を聴いて古き良き場末のジャズにインスパイアされたバンドかな?と思うが、(2)「Sun Dream」の導入部分で直ぐに、どうやらそういうバンドではないと気付かされる。このトラックではトリオのメンバーの他に、共同プロデューサーやレコーディング・エンジニアも務めるハミッシュ・ディクソン(Hamish Dixon)が弾くハーモニウムや、同じくプロデューサーを務めるウィル・レイキン(Will Lakin)による効果的なパーカッションも加わり、このグループがやろうとしている音楽は想像していたよりも遥かに強かで一筋縄ではいかないものだと刷り込まれる。
トリオのピアニスト、ニコ・ウィドウソン(Nico Widdowson)とドラマーのテオ・ゴス(Theo Goss)も只者ではない。(3)「Organ Bellows」は彼らのアグレッシヴな演奏の虜になり、(4)「Not a Lot There」では再び共同プロデューサーのウィル・レイキンが今度はギターを携えて登場する。
それにしても、これほど幅広い時代の音楽に影響を受け、それらを自分のサウンドにごく自然に取り込んできたジャズトリオも珍しいのではないだろうか。(7)「Watusi」で再び半世紀前のジャズにトリップしたかと思えば、直後ではマイケル・イワツ(Michael Iwatsu)による同曲のダンサブルなリミックスも登場。
英国のジャズシーンの面白さを象徴するような一枚だ。
The Fergus Quill Trio :
Fergus Quill – double bass, viola, vocals, percussion
Nico Widdowson – piano, vocals, percussion
Theo Goss – drums, vocals, percussion
Guests :
Hamish Dixon – alto saxophone, harmonium, percussion
Will Lakin – electric guitar, 12 string guitar, vocals, shruti box, percussion