ピアニスト、トム・ソーチャス初のフルアルバム『The Sorcerer』
フランス系アメリカ人のピアニスト/作曲家トム・ソーチャス(Tom Sochas) による初のフルレンス・アルバム『The Sorcerer』。ヨーロピアンな叙情とさりげないブルースの香り、そして控えめなエレクトロニックの使用が効果的な良盤だ。
今作は2021年のEP『You Could Hear the Bird Sing』での成功を受け制作されたもので、ギリシャ人ベーシスト、トドリス・ジアルカス(Thodoris Ziarkas)とイギリス人ドラマー、オリー・サーカー(Olly Sarkar)との新しいトリオのお披露目でもある。
演奏はクラシックからジャズまでの歴史の積み重ねに裏づけられつつも、時折かなり独創的な場面も見せる。時に荘厳に、時に軽やかに鍵盤の上を踊るトム・ソーチャスのピアノ、それをしっかりとインタープレイでサポートするドラムスとベースは鉄壁で、どの曲を聴いても楽しめる内容になっている。
8曲中7曲はトム・ソーチャスのオリジナル。残る(8)「All Apologies」はカート・コベイン(Kurt Cobain)の楽曲のカヴァーだ。90年代を象徴するグランジ・ロックバンド、ニルヴァーナ(Nirvana)の遺作を象徴するこの選曲の意図もとても興味深い。トム・ソーチャスは今作について「このプロジェクトの軸にあったのは、地球の未来に関する私の現在の考え、希望、不安を正直に表現するという意志でした」と語っている。
Tom Sochas – piano, synths, electronics
Thodoris Ziarkas – double bass
Olly Sarkar – drums
Guests :
Julian Knapp – tenor saxophone, soprano saxophone (4)
Laurie Carpenter – trumpet (7)