バンドは“創造的シエスタ”へ──。フランシスコ・エル・オンブレのラスト・アルバム

Francisco el Hombre - Hasta El Final

ブラジルのミクスチャーバンド、Francisco, el Hombre 新作

ブラジルのミクスチャー・バンド、フランシスコ・エル・オンブレ(Francisco, el Hombre)の新作『Hasta El Final』がリリースされた。バンドは今年3月7日に彼らが“クリエイティヴなシエスタ(siesta criativa)”と呼ぶ無期限の活動休止に入ることを発表しており、これが最後のアルバムとなる。ゲストとしてレニーニ(Lenine)、パト・フ(Pato Fu)、マルチナリア(Mart’nalia)といったブラジルを代表するアーティストも参加しており、まさしく集大成的な音楽を作り上げている。

今作はバンドにとって2021年の『Casa Francisco』以来となる4作目。ライヴ風の巧みな演出によって統一感のある仕上がりになっており、口汚くショーの始まりを告げる(1)「Vai Começar o Show! Merda!」で歓声とともに幕を開ける。(2)「O Que Existe É o Agora」にはブラジリアン・ロックの巨匠レニーニ(Lenine)が参加。サウダーヂ感のあるブラジルらしいロックを歌う。

レニーニをフィーチュアした(2)「O Que Existe É o Agora」

インターバルを挟んだブラジリアン・ロック(4)「Pececito o Tiburón?」にはミナスのシンガー、ビア・フェレイラ(Bia Ferreira)やラッパーのベーネガォン(BNegão)、さらにはウルグアイのムルガ1アガラテ・カタリーナ(Agarrate Catalina)が揃い踏み。

(10)「Outono」にはブラジルを代表するバンド、パト・フ(Pato Fu)が参加。フェルナンダ・タカイ(Fernanda Takai)の声も聴くことができる。

パト・フをフィーチュアした(10)「Outono」

(11)「O Ensimesmado」にはリオのサンバ歌手マルチナリア(Mart’nalia)と、サンパウロの黒人女性たちが中心となったサンバ団体イルー・オバ・ヂ・ミン(Ilú Obá De Min)との共演。今作の中でもっともサンバの特徴を備えた楽曲だ。

Francisco, el Hombre 略歴

フランシスコ・エル・オンブレは2013年にブラジル・サンパウロ州カンピナス市で、メキシコ出身の兄弟セバスチャン(Sebastián)とマテオ(Mateo)のピラセス=ウガルテ(Piracés-Ugarte)兄弟が中心となり結成されたバンド。バンド名(「人間様・フランシスコ」とでも訳すべきか)はガブリエル・ガルシア=マルケス2の小説『百年の孤独』にも登場したコロンビアの伝説上のアコーディオン弾き3の名前から取られている。

バンドは兄弟の他に3人のブラジル生まれのメンバーで構成され、ブラジルやラテンアメリカの音楽のほかにロックやパンクを融合した作風が特徴的。彼らは自らの音楽性を”マヌ・チャオ4とナサォン・ズンビ5のミックス”とも説明している。

2015年に最初のEP『La Pachanga!』をリリース。ピラセス=ウガルテ兄弟によると、これは幼い甥たちに独裁政権について語り継ぐために生まれたものだという。

(11)「O Ensimesmado」

  1. ムルガ(murga)…ウルグアイのカーニバルの音楽、およびその楽団。 ↩︎
  2. ガブリエル・ガルシア=マルケス(Gabriel García Márquez, 1927 – 2014)…コロンビア生まれの作家。”魔術的リアリズム”と呼ばれる手法で広く影響を与えた。ブエンディア一族が築き上げた蜃気楼の村マコンドの隆盛と滅亡を描いた『百年の孤独』 (Cien Años de Soledad)などの作品で知られる。1982年にノーベル文学賞を受賞。 ↩︎
  3. フランシスコ・エル・オンブレ…コロンビアに民間伝承で、夜の暗闇の中でアコーディオンと歌で悪魔との2時間にわたる決闘をし、打ち負かしたという伝説の吟遊詩人。ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』においては、たびたびマコンドを訪れる200歳を超える吟遊詩人として描かれた。 ↩︎
  4. マヌ・チャオ(Manu Chao)…パリ生まれのスペイン系シンガーソングライター。1987年にマノ・ネグラ(Mano Negra)を結成し活躍、2000年前後には”バルセロナ・ミクスチャー”のブームを牽引する存在となった。 ↩︎
  5. ナサォン・ズンビ(Nação Zumbi)…シコ・サイエンス(Chico Science, 1966 – 1997)によって結成されたブラジルのバンドで、1990年代に”マンギビート”と呼ばれるムーヴメントを牽引した。当時のブラジル音楽のカリスマだったシコ・サイエンスは交通事故により30歳で死去したが、バンドは残されたメンバーでその後も活動している。 ↩︎

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