ビル・アンシェル(Bill Anschell)、瑞々しい感性のピアニスト
米国シアトルのジャズ・ピアニスト/作曲家、ビル・アンシェル(Bill Anschell)の2024年作『Improbable Solutions』。自分にとって名前も演奏も初めて聴くピアニストで、とても瑞々しく若い感性が作曲やサウンドの随所に感じられたので若手かなと思っていたが、なんと1959年生まれの還暦過ぎのベテランだった。
アルバム収録曲は9曲全てがビル・アンシェルの作曲で、演奏はベースのクリス・サイマー(Chris Symer)とドラムスのホセ・マルチネス(Jose Martinez)とのトリオを軸とし、数曲でギタリストのブライアン・モンロニー(Brian Monroney)、パーカッションのジェフ・ブッシュ(Jeff Busch)が参加。(9)「Outburst」のみドラムスがKJサウカ(KJ Sawka)となっており、人力ドラムンベースなドラミングが他楽曲とは明らかに毛色の異なるものとなっている。
ビル・アンシェルの幅広いスタイルを取り込んだ作曲・演奏スタイル、それに呼応するメンバーのインタラクティヴな演奏など、どれも突出した才能を感じさせる楽曲ばかりの充実したアルバムだ。
このアコースティックとエレクトリック、エレクトロニックの絶妙なバランス感覚は絶妙で最高だ。The Bad Plus や e.s.t. といったバンドが好きな方にはきっと刺さる作品だと思う。
ビル・アンシェルはあまり日本では知られていない名前だと思うが、2016年にシアトルのジャズ殿堂入りを果たしたという熟練を思わせる経歴以上に、冒頭で述べたような瑞々しい音楽を聴かせてくれる素晴らしいアーティストだ。(1)「Ambulator」や(5)「Is This Thing Even On?」といった楽曲を聴けば、彼のユニークかつキャッチーな個性が感じられるだろう。
Bill Anschell 略歴
ビル・アンシェルは1959年米国ワシントン州シアトル生まれのピアニスト/作曲家。地元の高校を卒業後シアトルを離れ、オハイオ州のオーバリン大学で2年間学んだ後、コネチカット州のウェズリアン大学に転校し、サックス奏者のビル・バロン(Bill Barron, 1927 – 1989)に作曲を 、T.ランガナタン(T. Ranganathan, 1925 – 1987)に南インドのリズム理論を学んだ。
1989年から2002年まで、アンシェルはアトランタを拠点とし、南部芸術連盟のジャズ・コーディネーターを務め、世界中の200以上の放送局で放送されているシンジケートラジオ番組『JazzSouth』など多くの地域プロジェクトを立ち上げた。アンシェルは1992年にSAFジャズコーディネーターの職を辞し、演奏と作曲のキャリアに集中したが、2002年までJazzSouthのプロデュースを続けた。1992年から2002年まで、彼のトリオは1996年アトランタ夏季オリンピック、アトランタ・ジャズフェスティバル、ピッコロ・スポレートなど、南東部各地のイベントに出演している。
1995年にデビューアルバム『Rhythm Changes』をリリース。
Bill Anschell – piano, electronics
Chris Symer – acoustic bass, electric bass (5, 9)
Jose Martinez – drums
Brian Monroney – guitar (1, 3, 4, 6, 9)
Jeff Busch – percussion (2, 4, 8)
KJ Sawka – drums (9)