超絶技巧の夫婦デュオ、アントワーヌ・ボワイエ&キム・ヨレ。ロマンティックな新譜『You and I』

Antoine Boyer & Yeore - You and I

アントワーヌ・ボワイエ&キム・ヨレ新作『You and I』

フランス出身のギタリスト、アントワーヌ・ボワイエ(Antoine Boyer)と、韓国出身のクロマチックハーモニカ奏者キム・ヨレ(Yeore Kim, 김여레)のデュオによる第二弾アルバム 『You and I』がリリースされた。ジャズを基調に、クラシックやジプシー音楽の要素を自然に取り入れており、二人の音楽的パートナーシップを超えた親密さのみが成し得る、抒情的で美しい作品だ。

デュオの前作『Tangram』では6弦のエレクトリック・ギターやクラシックギターを弾いていたアントワーヌだが、今作では7弦のクラシックギターをメインで使用。即興を中心に据えた二人の演奏はテクニカルだが直情的で、群を抜いた表現力に圧倒される。

収録曲はラストの即興演奏(9)「Improvisation」を除き、すべてがカヴァー。
ユベール・ジロー(Hubert Giraud)作曲の(1)「Sous le Ciel de Paris」(パリの空の下)、ニコラス・ブロドスキー(Nicholas Brodszky)作曲の(2)「Be my Love」、チャーリー・ヘイデン(Charlie Haden)作曲の(3)「Our Spanish Love Song」など、この二人らしいロマンティックな選曲が窺える。

ビル・エヴァンス(Bill Evans)の(4)「Bill’s Hit Tune」、ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)の(5)「Ana Maria」といったジャズの巨匠の知られざる名曲を挟み、(6)「Romantic Song」はキム・ヨレと同世代のピアニスト、イ・ソンヘン(Sunhang Lee, 이선행)の作曲による美しいワルツ。

(6)「Romantic Song」

後半はアルバムの中ではアクセントとして機能するキューバのアベラルド・バルデス(Abelardo Valdes)作曲による古いラテンの楽曲(7)「Almendra」や、ベンジャミン・ビオレイ(Benjamin Biolay)とケレン・アン(Keren Ann)が作曲し、晩年のアンリ・サルヴァドール(Henri Salvador)が歌ったことでも知られるフレンチ・ボッサ(8)「Jardin d’Hiver」も渋い好選曲。

(7)「Almendra」のライヴ演奏動画

Antoine Boyer & Yeore 略歴

ギタリストのアントワーヌ・ボワイエは1994年フランス生まれ。
幼少期からジプシージャズの名ギタリストたちにギターを学び、13歳頃より父親のセバスチャン・ボワイエ(Sébastien Boyer)のバンドで活動を開始。2007年に若干14歳でデビューアルバム『Leské』をリリースした。
1993年生まれのフラメンコギタリスト、サミュエリート(Samuelito)とのデュオ活動でも広く知られている。

一方のクロマチック・ハーモニカ奏者キム・ヨレも十代の頃から韓国のジャズシーンで活躍している。
マルチ奏者としても知られ、ハーモニカのほかにトランペット、ドラムス、チェロ、ピアノなども演奏する才女だ。
アジア太平洋ハーモニカ・フェスティバル、ソウル・ハーモニカ・フェスティバルなどで優勝するなど、ジャズハーモニカ奏者として注目を浴びている。

二人は2020年8月に結婚。2021年にはオリジナル曲やスタンダードを演奏したデュオ作『Tangram』をリリースし、その豊かな音楽性が高く評価された。

Antoine Boyer – guitar
Yeore Kim – harmonica

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