
サンパウロの街角から世界へ——Bixiga 70(ビシーガ・セテンタ)は、アフロビート、サンバ、ジャズを溶け合わせ、ダンスフロアを熱狂させる9人編成のインストゥルメンタル・バンドだ。
ライヴを体験したいと思っていた音楽ファンも密かに多かったと思われるBixiga 70が、スキヤキ・フェスティバルへの参加のために、初来日する。富山・南砺市で8/23(土)、東京・渋谷で8/26(火)にステージに立つ。大所帯のグループで、次回の来日公演が可能であるかもわからない。ぜひBixiga 70、この機会に、Bixiga 70の音を浴びに行って欲しい。来日公演のスケジュール紹介の次には、彼らの公式バイオグラフィーを日本語で紹介したい。
また、こちらの記事では、音や映像付きやインタビューでの発言付きで、彼らのキャリアを紹介したので、こちらも参考にしていただけたら。
▶︎Bixiga 70|ビシーガ・セテンタ── アフロビートを超えて響くサンパウロの鼓動、世界を踊らせるビッグバンドがスキヤキで初来日(e-magazine LATINA)
以下、Bixiga 70 バイオグラフィー
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バンド Bixiga 70(ビシーガ・セテンタ) は、2010年にサンパウロの音楽シーンですでに知られていた音楽家たちが集まり、サンパウロ中心部のボヘミアンな街・ビシガにある エスタジオ・トラキターナ(Estúdio Traquitana) で行われていたプロジェクトから生まれた。
多彩な音楽的バックグラウンドを持ち、それぞれ長いキャリアを積んでいたミュージシャンたちが、Rockers Control、Projeto Coisa Fina、Corte、Alzira E、Atønito、Naaxtro など、さまざまなグループやアーティストに参加・共演してきたメンバーとして合流した。彼らは、アフリカ、ラテン、ブラジルのインストゥルメンタル音楽の融合領域を探求し、独自の作曲や、 Luiz Gonzaga、Pedro Santos、Os Tincoãs といったブラジルのアーティストの楽曲を新たに解釈することを目的に活動を始めた。
Bixiga 70 という名前は、バンドが誕生したスタジオの住所、すなわち「13 de Maio通り70番地(o número 70 da rua Treze de Maio)」に由来している。サンパウロ・サンバの発祥地と多くの人にみなされるこのビシーガ(Bixiga)地区は、9人の音楽家たちの想像力を育み、また彼らを支えてきた。彼らは、ガーナやナイジェリアの国際的な音楽観、テヘイロ(宗教儀式)の太鼓、マリンケ音楽、サイケデリア、ダブ、そして即興やダンスにおける自由奔放で型破りな姿勢を取り込み、過去と未来を結びつけようと試みている。
結成からわずか数か月後、初ライブで観客に大きな衝撃を与えた彼らは、2010年の「フォーリャ・デ・サンパウロ紙ガイド」で早くも「その年のベスト・ショー」のひとつに選ばれた。
2011年4月、バンドは Alex Vallauri に敬意を表して開催される「グラフィティの日(Dia do Graffiti)」のプログラムに参加。このイベントは後年にかけて、Bixiga 70 が中心的な役割を果たす場となっていく。
同年6月には、カルロス・ムーア(Carlos Moore)著『Fela, Esta Vida Puta』(邦題にすると「フェラ、このくそったれの人生」の意)出版記念パーティーでも演奏を披露し、著者本人もその場に立ち会った。
2011年12月にリリースされたファースト・アルバム 『I』 は、聴衆と批評家の双方から絶賛を受け、ブラジル国内のさまざまな媒体の「年間ベスト・アルバム」に名を連ねた。アルバムはデジタル、CD、12インチ・アナログ盤のほか、楽曲「Tema di Malaika」の7インチ・シングル盤としてもリリースされた。
MZKによる、通称「マスクのジャケット」と呼ばれるアルバムカバーは、ラテン・グラミー賞・最優秀アートワーク部門にノミネートされ、さらにアルバム自体も Prêmio Contigo MPB FM de Música(コンティーゴMPB FM音楽賞) の最優秀インディペンデント・アルバムにノミネートされた。アナログ盤のエディションは今日では世界中のコレクターが探し求めるほどの貴重盤となっている。
2012年には、ブラジル全土で40回以上のライヴを行い、国内シーンを代表するバンドのひとつとしての地位を確立。エネルギッシュなライブ・パフォーマンスによって、Virada Cultural(サンパウロ) のメインステージ、Rec Beat(ペルナンブーコ州)、Porto Musical(ペルナンブーコ州)、Nova Consciência(パライバ州)、Festival de Inverno de Garanhuns(ペルナンブーコ州)、Conexão Vivo(ミナスジェライス州) など、数々の重要なフェスティバルに招かれることとなった。
さらに2012年末には、バンドにとって特筆すべき二つの出来事があった。ひとつは、初の海外ツアーであり、特にアムステルダムの有名な会場 Paradiso で開催された「Fela Day」への出演。この夜は、アフロビートの伝説 トニー・アレン(Tony Allen) と同じステージを分け合った。もうひとつは「GIL 70」と題された特別公演で、ルカス・サンタナ(Lucas Santtana) と共に、巨匠 ジルベルト・ジル(Gilberto Gil) の生誕70周年を祝し、彼が1970年代に発表した楽曲群を中心としたレパートリーを演奏した。
2013年は、さらなる特別プロジェクトで幕を開けた。パルケ・ヴィラ・ロボス(Parque Villa-Lobos) で行われたコンサートでは、歌手やラッパーの Rael、Simoninha、Ully Costa がゲスト参加。また、子ども向け音楽劇『Saltimbancos(サルチンバンコス)』の再演も行い、Anelis Assumpção、Skowa、Maurício Pereira、Alzira E、そしてストーリーテラーの Andréa Bassit が参加した。
同年6月には、特別プロジェクトの一環として、Neville d’Almeida 監督の映画 『Dama do Lotação』 のために、バンドがサウンドトラックを作曲・演奏するという新たな挑戦も行った。
その直後、再び海外ツアーを終えて帰国したバンドは、デンマークの Roskilde Festival や、フランス・ナント市で約1万5千人を前に行ったコンサート といったハイライトを経て、ブラジルに戻り、セカンド・アルバム『II』 をデジタル、CD、12インチ・アナログ盤でリリースした。
リオデジャネイロで行われたリリース・イベントには、バンドにとって大きなリファレンスであるアーティスト、Pedro Luísと Marechal が参加。アルバムは数々の「年間ベスト・アルバム」リストに選出され、さらにイギリス・ロンドンのレーベル Mais Um Discos からもリリースされた。その後、シングル 「Ocupai/Kalimba」 の7インチがアメリカのレーベル Names You Can Trust から発売された。年末には、コンゴ系ベルギー人シンガー Baloji とともに、サンパウロで2公演を行った。
その後、バンドは Bananada(ゴイアス州)、BR-135(マラニョン州)、MIMO(ペルナンブーコ州およびリオ)、Coala(サンパウロ州)、Se Rasgum(パラー州)、Psicodália(リオ・グランデ・ド・スル州)、Forró da Lua Cheia(サンパウロ州) といった大型フェスのラインナップに名を連ね、ブラジル全土で公演を行った。さらに、Circo Voador(リオデジャネイロ)、テレーザ・バチスタ広場 – ペロウリーニョ(バイーア州)、Baile Perfumado(ペルナンブーコ州)、Opinião(リオ・グランデ・ド・スル州)、Audio Club(サンパウロ) など、国内有数のライブハウスを満員にし、全国各地の SESC でも数十公演を重ねた。
2014年には 55本のライブ を行い、ブラジル音楽賞(Prêmio da Música Brasileira)新人部門 を受賞。さらに夏の海外ツアーを実施し、モロッコの Festival Mawazine Rabat、フランスの Jazz Sous Les Pommiers などで大きな注目を集めた。
2015年、バンドはサード・アルバム『III』 をデジタル、CD、12インチ・アナログ盤でリリースし、さらにシングル「100% 13」の7インチとミュージックビデオも発表した。このアルバムも再び年間ベスト・ディスクのリストに選出され、ブラジル全国でリリース・ツアーを行った。国外では、ドイツのレーベル GlitterBeat Records からリリースされた。同年、バンドは2度のアメリカ・ツアーを実施し、ニューヨークの Global Fest(ニューヨーク・タイムズ紙にレビュー掲載)やカリフォルニアの Sierra Nevada World Music Festival といった、ワールドミュージックの重要イベントに出演。また、TV Cultura の歴史的番組 「Ensaio」 にて、フェルナンド・ファーロの司会のもと収録を行った。
同年8月には、Marlena Shawと共演し、サンパウロのSesc Pompéiaで開催されたプロジェクト「Jazz na Fábrica」で2公演を行うという歴史的ステージを実現。10月には、一部メンバーが Elza Soares のアルバム『A Mulher do Fim do Mundo』のリリース・バンドに参加。このアルバムにはレコーディングやアレンジでも関わり、後にグラミー賞を受賞し、多くの批評家から「この10年を代表するアルバム」と評される作品となった。バンドはこの年、合計 54公演 を行った。
2016年にはインドで2公演、ヨーロッパで30公演 を行い、ワールドミュージックの国際的フェスティバル・シーンで存在感を確立。特に グラストンベリー(イギリス)、Fusion Festival(ドイツ)、FMM Sines(ポルトガル)、WOMEX(スペイン)、REEF(インド) などで注目を浴びた。ブラジル国内でも、オリンダやリオの MIMOフェスティバル、サンパウロの Popload Festival、Sampa Jazz Fest に出演。さらに、ニューヨーク出身のVictor Rice とコラボした『The Copan Connection』をリリース。これは『III』をダブ・ヴァージョンに再構築した作品で、ヨーロッパではGlitterBeat Recordsからも発売された。またブラジルでは、伝説的なナイジェリア人音楽家 Orlando Julius とブラジリアのFestival Instrumentaで共演。さらにJoão Donato のアルバム『Donato Elétrico』の録音に参加し、その後の公演や国際ツアーでも彼をサポート。もう一つのハイライトは、フランスの Île de France Festival に出演し、世界的に注目されるブラジル音楽の代表格として舞台に立ったことだった。
2017年、バンドはサンパウロ市の公式カーニバル・プログラムにて 4夜連続でラルゴ・バタタ広場に出演し、数万人規模の観客を動員。その中でElza Soares、Liniker、Jorge Du Peixe、Fred 04らをサポート。また、カナダで6公演、ヨーロッパで17公演を行い、シゲット・フェスティバル(ハンガリー) や ジャズ・ア・ヴィエンヌ(フランス) に出演。ブラジルでは、サンパウロ文化センター(CCSP)で行われた 「Bicho de 4 Cabeças」 という歴史的なライブに参加し、Hurtmold、Metá Metá、Raktaと同じステージに立った。12月には、ロサンゼルスのUCLAロイス・ホールにてJoão Donatoの名盤『Bad Donato』を再現するコンサートに出演し、Talma de Freitasや、バンドにとって最大のリファレンスである Mateus Aleluia(Os Tincoãsのメンバー) と共演した。この年、インドで結婚式の演奏に招かれ、実際に演奏するなんてこともあった。
2018年、4作目『Quebra-Cabeça』 をデジタル、CD、12インチ・アナログ盤でリリースし、表題曲のミュージックビデオも発表。この作品は サンパウロ芸術批評家協会(APCA) により「2018年後期のブラジル音楽25選」に選ばれた。アルバムのリリースに伴い、ブラジル各地の首都や地方都市で多数の公演を実施。さらにオーストラリアとニュージーランドで行われた重要フェス WOMAD に出演し、ヨーロッパでも13公演を行い、特に アクバンク・サナト・ジャズ・フェス(トルコ) や オスロ・ワールド(ノルウェー) で高い評価を得た。年末には、サンパウロのSESC Paulistaで行われたシリーズ「Instrumental Poesia」にて、詩人で歌手の Kimani と共演した特別公演に参加。
2019年には、シンガー Luiza Lian を迎えたシングル 「Alumiô」 をリリース。Spotifyでのストリーミング数は 360万回以上 を突破。また、SESCレーベルからライブ盤 『Ao Vivo no Sesc 24 de Maio』 を発表。ヨーロッパで5公演を行い、特に オゾラ・フェスティバル(ハンガリー) や MIMO Amarante(ポルトガル) に出演。さらにアメリカの SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト) にも参加し、複数のブログやメディア記事で「注目アーティスト」として紹介された。
2020年、バンドはサンパウロ市の公式記念日プログラムの中で、二部構成の特別公演 を行った。前半は歌手 Elba Ramalho をバックアップし、後半はサンパウロ市立バレエ団(Balé da Cidade de São Paulo)を迎え、自身のオリジナル・レパートリーを披露した。さらに、サンパウロのカーニバルではTroça Elétrica のトリオ・エレトリコに出演し、Nação Zumbiとの合同ステージを展開。パンデミックが始まった後は、いくつかのフェスティバルにてオンライン形式(ライヴ配信) でのパフォーマンスを行った。
2021年12月には、パンデミック後初となる海外公演として、ドバイ国際博覧会(Expo Dubai/アラブ首長国連邦) に出演した。
2022年1月、ステージ復帰を果たしたバンドは、「PORTAL」 と題した新しい公演を開始。これまでの祝祭的でダンサブルなショーとは異なり、より瞑想的で浮遊感のあるレパートリーを披露した。未発表曲と既存曲を織り交ぜた構成で、当時世界が直面していた繊細な状況を反映し、現実への冷静で内省的な視点を提示した。
2022年には複数のメンバー交代を経て、2023年3月 にバンドはついに新作制作のために籠り、5月まで作曲を続けた。その成果がアルバム 『VAPOR』 であり、10月13日にリリース。この日は同時に、ヨーロッパで33日間21公演に及ぶツアーの初日でもあった。
さらに 2024年6月から8月 にかけて『VAPOR』の第2弾ヨーロッパ・ツアー を実施。39日間で23公演を行い、ロスキレ・フェスティバル(デンマーク)、オゾラ・フェスティバル(ハンガリー)、カラーズ・オブ・オストラヴァ(チェコ)、フュージョン・フェスティバル(ドイツ) などの大規模フェスに出演した。
ブラジルに帰国後は ロック・イン・リオ(Rock in Rio) に登場し、観客を熱狂させる圧巻のパフォーマンスを披露。報道メディアからも大きな評価を受けた。現在、Spotifyではバンドの楽曲が 累計1,300万回以上再生 されている。
現在の Bixiga 70 のメンバー:
Amanda Teles – Percussão
Cris Scabello – Guitarra
Cuca Ferreira – Sax Barítono
Daniel Nogueira – Sax Tenor
Daniel Verano – Trompete
Douglas Antunes – Trombone
Marcelo Dworecki – Baixo
Pedro Regada – Teclados
Valentina Facury – Percussão
