アグスティン・ペレイラ・ルセーナの名盤が復刻
隣国ブラジルの音楽に影響を受け、所謂”アルゼンチン・ボッサ”の先駆者として知られる名ギタリストのアグスティン・ペレイラ・ルセーナ（Agustin Pereyra Lucena） が1975年にリリースした名盤『Ese Día Va A Llegar』がデジタル・リマスターされ、2025年10月24日にデジタル配信が開始された。ヨーロッパでは『Brasiliana』というタイトルでリリースされたことで知られており、日本でも2004年や2010年にCD/LPで再発されるなど国際的に人気のアルバムで、初期リリースから約半世紀が経った今聴いても色褪せることのない傑作だ。
アルバムにはアグスティン・ペレイラ・ルセーナのオリジナルの他、アントニオ・カルロス・ジョビン「イパネマの娘」の独創的なカヴァー(2)「Chica De Ipanema」、ジョアン・ドナートの名曲(5)「Amazonas」、バーデン・パウエル作の(6)「Maritima」、そしてバンドメイトである鍵盤奏者/ベーシストのギジェルモ・レウテル（Guillermo Reuter）作の(4)「Viento Que Va」と(7)「Guayabas」も収録。いずれも爽やかなボサノヴァ風のアレンジで、バーデン・パウエルを彷彿とさせるアグスティンのギターが躍動する。いくつかの曲で聴くことのできるアグスティン本人の歌唱や、女性シンガーによるスキャットも最高だ。
極めつけはローズピアノやフルートの音も心地よい極上のアルゼンチン・ボッサ(7)「Guayabas」。ところどころ小ネタ的に引用されるボサノヴァの名曲のフレーズも耳を愉しませてくれる。
このアルバムは、アグスティンの甥であるホセ・ルイス・ペレイラ・ルセーナ（Jose Luis Pereyra Lucena）によって大事に保存されていたマスターテープからリマスタリングされ、英国を拠点とするブラジル音楽に特化したレーベル、Far Out Recordingsから2025年10月30日に再リリースされた。
Agustin Pereyra Lucena 略歴
アグスティン・ペレイラ・ルセーナは1948年5月10日、アルゼンチンのブエノスアイレスに生まれた。
建築学を学んでいたが、音楽への情熱からこれを放棄し、ギタリストとして活動を始める。彼のスタイルはブラジル音楽、特にボサノヴァやMPBに強く影響を受け、ジャズの要素も取り入れる独自の解釈で知られている。
1970年代に入ると、ヴィニシウス・ヂ・モラエス（Vinicius de Moraes）、バーデン・パウエル（Baden Powell）、トッキーニョ（Toquinho）、ドリヴァル・カイミ（Dorival Caymmi）、マリア・ベターニア（Maria Bethania）、シコ・ブアルキ（Chico Buarque）といったブラジル音楽の巨匠たちと交流を深めた。ヴィニシウス・ヂ・モラエスは彼を「バーデン・パウエルとトッキーニョを除いて、楽器とこれほど一体となった人はいない」と絶賛している。
1975年にリリースした4thアルバム『Ese Día Va A Llegar』は、アントニオ・カルロス・ジョビン（Antonio Carlos Jobim）やジョアン・ドナート（João Donato）の曲をカバーし、自身のオリジナルも収録した代表作である。この作品はリラックスしたボサノヴァのグルーヴが特徴で、国際的に評価されている。
1976年に鍵盤奏者ギジェルモ・レウテルらと結成した伝説的バンド、カンデイアス（Candeias）のアルバム『Sambaiana』も世界的な名盤として知られている。
1980年には『La Rana』を発表し、ブラジル音楽の解釈者としての名声を確固たるものにした。1980年代後半には、南米を代表するギタリストとして確立。ヨーロッパや日本でもアルバムが再発され、人気を博した。
晩年まで音楽活動を続け、2019年5月16日に死去。享年71歳。
Agustin Pereyra Lucena – guitar, vocal
Guillermo Reuter – contrabass, guitar, percussion, electric piano, vocal
Carlos Carli – drums, percussion
Laura Hatton – vocal
Luis Maria Cosenza – vocal
Patricia Scheuer – vocal