ピアノとギター、郷愁的なデュオ再び。ロベルト・オルツェル&ロレンツォ・コミノーリ、至高の新譜

Roberto Olzer & Lorenzo Cominoli - Dreams of Others

Roberto Olzer & Lorenzo Cominoli 『Dreams of Others』

前作『Timeline』(2020年)が高く評価されたイタリアのピアノとギターのデュオが、新たな感動を届けてくれた。ピアニストのロベルト・オルツェル(Roberto Olzer)をギタリストのロレンツォ・コミノーリ(Lorenzo Cominoli)のデュオ新譜『Dreams of Others』は、世界的な作曲家たちの楽曲のカヴァーに、少しのオリジナルを織り交ぜた、ジャズの美の極みに達した作品だ。

アルバムは夢や内省的な感情を軸に据えたテーマを、ピアノとギターのリリカルな対話で展開してゆく。幕開けはポルトガルのピアニスト/作曲家ベルナルド・サセッティ(Bernardo Sassetti, 1970 – 2012)作曲の陰影を帯びたワルツ(1)「Dreams of Others」。静かにゆったりと奏でられるテーマのあと、中間部では情感豊かなソロが展開され、効果的な転調も相まって一気にデュオの美しいサウンドスケープの中へと誘われる。

坂本龍一(Ryuichi Sakamoto, 1952 – 2023)の(3)「Energy Flow」も素晴らしい。お馴染みのテーマのあと繰り出されるロベルト・オルツェルの歌心溢れるピアノソロは至高と言えるだろう。

(3)「Energy Flow」

リッチー・バイラーク(Richie Beirach, 1947 – )作曲の(6)「Elm」、カタルーニャのミゲル・リョベート(Miguel Llobet, 1878 – 1938)作の(7)「El noi de la mare」も美しい。後者は古風で普遍的な旋律を一音ずつ愛おしむように演奏され、彼らが心の底から音楽やメロディーを愛している様子が感じられる。

ロレンツォ・コミノーリのオリジナル(5)「Ninna Nanna per Margherita」

アルバムのラスト(9)「Non Potho Reposar」はジュゼッペ・ラケル(Giuseppe Rachel, 1858 – 1937)がサルヴァトーレ・シーニ(Salvatore Sini, 1873 – 1954)の1915年の詩に1920年に曲をつけたもので、サルデーニャの民衆文化と伝統の一部として長く受け継がれてきた名曲。ここでは深いディレイがかかったロレンツォ・コミノーリのギターが特に効果的で、ノスタルジックな印象を与える。

Roberto Olzer & Lorenzo Cominoli 略歴

ピアノのロベルト・オルツェル(Roberto Olzer)は1971年イタリア生まれで、ヨーロッパジャズの巨匠エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)に師事したとのことで、柔らかなピアノのタッチ、叙情を絵に描いたような美しいアドリブや、オリジナル曲である(4)「Atlantis」(8)「Novembre」の短調中心の耽美的な作曲など随所に師の影響がわかる。クラシックの確かな基礎の上に築かれた端正なヨーロッパジャズを象徴するようなピアニストだ。
代表作はピアノトリオで録音された『Steppin’ Out』(2012年)、澤野工房からの諸作など。

一方のギタリスト、ロレンツォ・コミノーリ(Lorenzo Cominoli)もイタリア出身で、クラシックとジャズを並行して研究してきた演奏家/作曲家。
ジャズギターはバークリー音楽大学でギャリソン・フェウェル(Garrison Fewell)に、さらにイタリアのジャズギターの巨匠サンドロ・ジベリーニ(Sandro Gibellini)にも師事してきた。
代表作は『City of Dreams』(2017年)など。

二人は2020年作『Timeline』で初めてデュオを組み、丁寧に紡がれた究極的なまでの耽美な演奏が高く評価された。

Roberto Olzer – piano
Lorenzo Cominoli – guitar

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