マヨルカ島から現れた新星ジュリア・コロムの2nd『Paradís』
スペイン・マヨルカ島出身、伝統的なフォーク音楽をポップスやエレクトロニックと融合させ独自のスタイルを築くシンガーソングライターのジュリア・コロム(Júlia Colom)。高く評価された2023年のデビュー作『Miramar』につづく2ndアルバムとして、2025年末に『Paradís』がリリースされた。
伝統曲のカヴァーである(9)「Sa Madona」を除き、すべてジュリア・コロムのオリジナル。ギターやリュートといった弦楽器を中心に効果的にエレクトロニックを用いたサウンドが特徴的で、伝統を博物館に押し込めて保存するのではなく、時代にあわせて進化的に捉えようとする彼女の姿勢が表れている。カタルーニャ語で歌われる歌詞のテーマはアイデンティティ、帰属意識、疑念の創造的な力、そして個人的な成長を探求したもの。
サウンド・プロダクションは完璧にはまっている。
マヨルカのルーツやアイデンティティの確かな基盤があるから、エレクトロニックも安易な後付けではなく、彼女の音楽表現の重要な一部として機能する。
「時代遅れや古臭さを感じさせないようにすることが大切なんです」と彼女は言う。
「私と同年代の人たちに響く音楽を作りたい。マヨルカの民謡は、日々生まれ変わり、革新され、偉大な音楽家によって演奏されるべきです」。──これはジュリア・コロムのシンガーソングライターとしての“芯”を象徴する言葉だ。気取らず、あくまでも自然体で、音楽のパラダイムシフトを体現する彼女の芯だ。
Júlia Colom 略歴
ジュリア・コロムは1997年に地中海に浮かぶ美しい島、マヨルカ島西部の人口2000人ほどの歴史ある村バルデモーサ(Valldemossa)で生まれた。幼少期から豊かなスペイン民謡の伝統に浸りながら育ち、6歳のときにマヨルカ島の人々に伝承されてきた中世の聖歌「シビュラの歌」1を覚えた。この曲のメリスマ2の旋律と、終末を歌う歌詞はその後の彼女の音楽観に大きな影響を与えたようだ。
この音楽の記憶が、彼女の歌への情熱に火をつけた。彼女は18歳でマヨルカ島を離れバルセロナへ移住。作曲や現代音楽を学び音楽の学位を取得する傍らで、マヨルカ島のルーツに深く根ざし、トニャダ(tonadas, 農民が農村生活に寄り添って歌ったアカペラの民謡)を探求し、その歌唱技術を磨くことに専念し独自の個性を育てていった。
2023年にバルデモーサの海沿いの集落の名を冠したデビュー作『Miramar』をリリースし、マヨルカの口承伝統を探求した作品として高い評価を得た。