- 2025-08-15
- 2025-08-09
エジプトの精神性と70年代ジャズが響き合う、IKEのデビュー作『On Higher Dreams』
イタリア出身の作曲家/ギタリスト/教育者のアイク(IKE)のデビューアルバム『On Higher Dreams』。パンデミック中にエジプトで過ごした彼は、そこで現地の音楽文化から強いインスピレーションを受け、アナログ機材を用いてジャズとエレクトロニックを融合した独自の洗練されたサウンドを生み出した。
イタリア出身の作曲家/ギタリスト/教育者のアイク(IKE)のデビューアルバム『On Higher Dreams』。パンデミック中にエジプトで過ごした彼は、そこで現地の音楽文化から強いインスピレーションを受け、アナログ機材を用いてジャズとエレクトロニックを融合した独自の洗練されたサウンドを生み出した。
当サイト『ムジカテーハ』では普段はあまりライヴ盤は紹介しないのだけど、何度か繰り返し聴いているうちに、その特別さをスルーするわけにはいかなくなってきてしまいました。ヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル(Varijashree Venugopal)の『Vari』から厳選された7曲を収録したライヴ盤。後頭部をハンマーで打たれるような強い衝撃を受ける、驚くべき作品です。
イスラエル出身のギタリスト、インバール・フリードマン(Inbar Fridman)の新譜『Mercy』。バンドメンバーには鍵盤奏者のカティア・トゥーブール(Katia Toobool)、ベーシストのリオール・オゼリ(Lior Ozeri)、ドラマーのヨゲフ・ガバイ(Yogev Gabay)を迎えている。メロウなトーンのインバール・フリードマンのギターを中心に、とろけるようなエレピやフレットレス・ベースが絡む良質なエレクトリック・ジャズだ。
カナダ・トロントを拠点に活動する男女デュオ、カズドゥーラ(Kazdoura)のデビュー作『Ghoyoum』。内戦のため祖国を離れたシリア出身の歌手レーン・ハモ(Leen Hamo)と、レバノン出身で移民としてカナダに渡っていたマルチ器楽奏者ジョン・アブー・シャクラ(John Abou Chacra)は、2020年のベイルート港爆発事故後のトロントでの募金活動の中で出会い、強力な相乗効果を証明する音楽作品を作り上げた。
ティングヴァル・トリオ(Tingvall Trio)の記念すべき10枚目のアルバムである『Pax』(2025年)は、アコースティック・ピアノトリオの真骨頂を見せるというファンの期待に見事に応えたものとなっている。これまで同様に、スウェーデン出身の天才的なピアニスト/作曲家マーティン・ティングヴァル(Martin Tingvall)が全曲を作曲し、結成以来ずっと変わらないリズムセクションの二人──キューバ出身のベース奏者オマール・ロドリゲス・カルボ(Omar Rodriguez Calvo)とドイツ出身のドラマー、ユルゲン・シュピーゲル(Jürgen Spiegel)──とともに、過去から絶え間なく連なるジャズの現在と、未来へのひとつの方向を示す。
ブラジル北部パラー州の先住民族の家系出身のシンガーソングライター、タイナー(Tainá)の2作目となるアルバム『Âmbar』。ボサノヴァを基調とした柔らかなリズム、愛情、孤独、郷愁、憧れ、欲望といった誰もが抱く普遍的な感情をありのままに表現する自然で巧みなソングライティング、そして飾らない美しさを湛えた歌声と、ブラジルの豊かな音楽文化を象徴しつつも幅広いリスナーに訴求できる親しみやすい要素を兼ね備えた傑作だ。
モザンビーク出身の歌手/作曲家/芸術活動家レナ・バウレ(Lenna Bahule)の新作『Kumlango』は、モザンビークやアフリカ南部の伝統音楽に由来する打楽器などによる優れたリズムに、効果的なエレクトロニック、そして広い音域を持つ彼女の柔らかく美しい声が融合するサウンドスケープが印象的な素晴らしいアルバムだ。国際的なミュージシャンも複数参加し、モザンビークを代表する芸術家として知られつつある彼女の活躍の舞台を世界に広げる。
アレ・ホップ&ティティ・バコルタ(Ale Hop & Titi Bakorta)名義の不思議なエレクトロ・ワールドミュージック『Mapambazuko』が、妙にクセになるサウンドで面白い。これはペルー出身の実験的エレクトロニック・ミュージシャン、アレ・ホップ(Ale Hop)ことアレハンドラ・カルデナス(Alejandra Cárdenas)と、コンゴ出身のギタリスト、ティティ・バコルタ(Titi Bakorta)によるコラボレーション・アルバムで、ウガンダを拠点とする気鋭レーベル「Nyege Nyege Tapes」からリリースされた。
ブラジル・ミナスジェライス州ベロオリゾンチ出身で、同地のインディペンデント・ミュージック・シーンで確固たる実績を誇るSSWグスタヴィート(Gustavito)が自身8枚目となる新譜『Me Gusta!』をリリースした。プロデューサーにセーザル・ラセルダ(César Lacerda)を迎え、とりわけブラジル北東部音楽のフォホーに強く影響を受けた楽曲を多く収録した作品だ。
現在のジャズ・ハーモニカの第一人者、イスラエル出身のヨタム・ベン=オール(Yotam Ben-Or)の新譜『Impermanence』がリリースされた。長年のコラボレーターであるベネズエラ出身のピアニストのガブリエル・チャカルヒ(Gabriel Chakarji)らを擁するカルテットを中心とし、南米や中東の伝統的な素朴で印象に残るメロディーから、キューバやベネズエラの音楽に触れたことで形成された複雑なリズムまで、音楽家としての彼の繊細で豊かな感情に触れることのできる一枚だ。
ブラジル・ミナスジェライス州出身で、ヴィブラフォン奏者として知られるフレッヂ・セルヴァ(Fred Selva)が、アルゼンチンの詩人/歌手トリスタン・バルボサ(Tristán Barbosa)と共同名義でリリースした新譜『O Arpão Do Irreal』が驚きだ。エレクトロニック・アーティスト/ソロ・パフォーマーとしてのフレッヂの魅力が爆発した内容となっており、作編曲、演奏、音響、歌、詩が一体となった孤高の空間へと誘う。
キューバにルーツを持つトランペット奏者/作曲家アダム・オファーリル(Adam O'Farrill)が、気鋭の女性ギタリストのメアリー・ハルヴォーソン(Mary Halvorson)や革新的な女性ヴィブラフォン奏者パトリシア・ブレナン(Patricia Brennan)らを擁するオクテットでの新作『For These Streets』をリリースした。今作は1930年代の芸術、文化、社会的背景をテーマとし、現代的な感覚で再構築を試みた作品だ。
『Reflection Of Another Self』は、スペイン出身で現在はニューヨークのジャズシーンで活躍するトランペット/フリューゲルホルン奏者ミレーナ・カサド(Milena Casado)の初リーダー作。自身のアイデンティティやトラウマ、自己発見を深く掘り下げた個人的なプロジェクトであり、伝統的なジャズと実験的なエレクトロニック音楽のテクスチャーを融合させた非凡な感性で創られた繊細なアルバムだ。
レバノンを代表する歌手、タニア・サレー(Tania Saleh)は母国の様々な状況(彼女はそれを“一連の不幸な出来事”と呼ぶ)から、ついに祖国を離れる選択をし、2022年にフランス・パリに移住した。彼女の最新作『Fragile』は、スーツケースに貼られた“壊れやすい”を表すその言葉の通り、故郷を離れることによる心理的な重荷や、亡命者が抱く根無し草のような感覚をテーマに作られている。