- 2026-08-05
- 2026-08-04
古来より人類がその叡智をかけて探求した“宇宙創世”を辿る旅。スルジャン・イヴァノヴィッチ・カルテット新譜
ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエヴォ出身のドラマー、スルジャン・イヴァノヴィッチ(Srdjan Ivanovic)が率いるカルテット「Blazin' Quartet」の2026年新譜『Cosmogonie』は、ギリシャ神話の天地創造(Cosmogony)にインスパイアされた、壮大なコンセプト・アルバムだ。
ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエヴォ出身のドラマー、スルジャン・イヴァノヴィッチ(Srdjan Ivanovic)が率いるカルテット「Blazin' Quartet」の2026年新譜『Cosmogonie』は、ギリシャ神話の天地創造(Cosmogony)にインスパイアされた、壮大なコンセプト・アルバムだ。
たとえベーシストのソロ・アルバムだとしても「ベースばかりが目立っている」ような作品は近年は少なくなってきたように思うが、モヒニ・デイ(Mohini Dey)に関してはその法則は当てはまらないようだ。1996年にインド・コルカタで生まれ、両親の影響で幼少期からインド古典音楽やジャズ、フュージョン、メタルなどに親しみ、10歳前後でプロとして音楽活動を開始。10代中盤になるとその超絶的な技巧で世界的な注目を浴びるようになり、現在では国際シーンにおける女性ベーシストのロールモデルと言われるまでになったヴァーチュオーゾなのだから、やはり華やかに目立つことでこそ、その真価が発揮されるものらしい。
ブラジルの音楽についてある程度の知見をお持ちの方なら、シコ・ブアルキ(Chico Buarque, 1944 - )が同国史上最高のシンガーソングライターの一人であるという意見に疑問の余地はないだろう。1960年代から優れた作曲と詩と歌によって音楽の第一線で活躍し、さらに小説家や劇作家としても成功。とりわけ1964年から1985年まで続いたブラジル軍事独裁政権への抵抗の象徴として、近年のブラジルの文化の形成に大きな影響を与えた人物だ。本稿で紹介するグループ、エスカファンドリスタス(Escafandristas)の4人も、それぞれが幼少期からごく自然にシコ・ブアルキの音楽に触れながら育ってきたという。
パンデミックの最中、ニューヨークの公園や街角で演奏する動画をSNSに投稿し、世界中の注目を集め急速にフォロワーを獲得したジャズ・トリオがいる。彼らはニュー・ジャズ・アンダーグラウンド(New Jazz Underground)。このサックス、ベース、ドラムスというコードレス編成のトリオは、全員がジュリアード音楽院の出身で、ジャズの伝統に根差しながらヒップホップやインターネット文化という時代性を武器に、多くの若者たちからの支持を集めた。
米国ロサンゼルスを拠点に活動するインド系のヴォーカリスト/作曲家/マルチ器楽奏者シャラダ・シャシダール(Sharada Shashidhar)は、現代の西海岸のジャズシーンでも一際異彩を放つ存在だ。スピリチュアルなバンドサウンドを中心とした前作『Soft Echoes』(2023年)からより深化し、エレクトロの比重を増しつつ更なる内面性を志向するような新作『A Foot on the Ground』で、彼女は“何を奏でるか”より、“どのような心で音を生み出すか”を自問自答する。
2012年にデュオを組み、ブラジルが生んだ偉大な作曲家エイトル・ヴィラ=ロボス(Heitor Villa-Lobos 1887 - 1959)の楽曲を現代的に再解釈した『Villa-Lobos Popular』を発表したアミルトン・ゴドイ(milton Godoy)とガブリエル・グロッシ(Gabriel Grossi)が、再びデュオを組んだ。彼らの2026年リリースの続編は、『Os Filhos de Villa』つまり“ヴィラの子どもたち”。ブラジル音楽史に輝かしく残る様々な作曲家たちの代表作を取り上げつつ、ヴィラ=ロボスの音楽的遺産を辿って行く。
西アフリカ、マリの伝統的なグリオの家系に生まれたシンガー、マー・ダンバ(Mah Damba)の2026年新作『Taabolo Koura』。「声を中心に据える」という古来からのグリオ音楽の美学を徹底したアルバムとなっており、アコースティック・ギターやアコーディオン、さらにはンゴニ、カラバシュといった伝統楽器を用いた極上のアコースティック編成に乗る彼女の力強くも温かい歌が強く印象に残る作品だ。
ブラジルを代表するシンガーソングライターのイヴァン・リンス(Ivan Lins)の新作『Sambadouro』が2026年7月24日にリリースされた。イヴァン・リンスといえば、自身で鍵盤を弾きながら歌う、めちゃめちゃ個性的かつお洒落なAORあるいはジャズ寄りのMPBという印象が強いが、今作では彼自身の長年の念願であったという「サンバ」に全振りしたサウンドで、リラックスしながらも情熱的な演奏を届けてくれた。
北欧を代表するピアノトリオ、ソーレン・ベーべ・トリオ(Søren Bebe Trio)による9枚目のスタジオ・アルバム『Gratitude』がリリースされた。デンマークの音楽賞にノミネートされた前作『Here Now』(2023年)で確立された、ベーシストのカスパー・テーイル(Kasper Tagel)とドラマーのクヌート・フィンスルー(Knut Finsrud)とのピアノトリオ編成で、オリジナル曲を中心に北欧らしい抑制された美学が貫かれた作品となっている。
インドネシアの首都ジャカルタの貧しい家庭に生まれ、ジャズ・シンガーとしての道を歩み、現在はカンボジアを拠点に活動するインタン・アンドリアナ(Intan Andriana)が、初のアルバムとなる『My Life in Jazz』をリリースした。音楽性はオーソドックスなジャズのスタイルを基本としつつ、マヌーシュ・スウィングなどの要素も加える。アルバムにはオリジナル曲に加え、インドネシアの名曲(5)「Bengawan Solo」なども取り上げるなど、インドネシアとカンボジアという二つの文化的ルーツを結ぶ象徴的な内容に仕上げている。
30年におよぶバンドの歴史の中で、クレズマーを揺るがない根幹に据えつつジャズ、スカ、マヌーシュスウィング、果てはヒップホップやエレクトロニカなどを融合しながら様々な表現を試みてきたアムステルダム・クレズマー・バンド(Amsterdam Klezmer Band, 通称:AKB)は、2026年の新譜『Diaspora』で、彼らの“根”である完全アコースティックなクレズマーに立ち戻ってきた。
オーストラリア・メルボルンを拠点に活動する気鋭サックス奏者/作曲家ジョシュア・モシェ(Joshua Moshe)が、彼の個人的なルーツやアート観を丁寧に込めた新譜『Art Don't Lie』をリリースした。8人編成のバンドを基本とした彼らの演奏は、一聴して分かるとおり、その音楽性はオーストラリアのジャズ・ミュージシャンとは思えない異彩を放つ。
今、これほど面白い一流のジャズトリオは、ほかにないと思う。トリオ・グランデ(Trio Grande)。ギタリストのギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)、サックス奏者のウィル・ヴィンソン(Will Vinson)、そしてドラマー/ベーシストのネイト・ウッド(Nate Wood)から成るトリオだ。特に、器用にベースを弾きながらドラムスを叩く(ドラムスを叩きながらベースを弾く、の方が正しいかもしれない)ネイト・ウッドの姿を初めて見れば「大道芸か」と見紛うかもしれないが、聴けば聴くほどに彼らが音楽的にも“人並外れた”存在だと気付くはずだ。
2020年代ブラジル・インディーを代表する二人の気鋭シンガーソングライター、ソフィア・シャブラウ(Sophia Chablau)とフェリピ・ヴァケイロ(Felipe Vaqueiro)が出会い意気投合、2025年10月にリリースしたアルバム『Handycam』。MPBやトロピカリアに通ずるサイケロックを基調に、親密で文学的なソングライティングによって恋愛や友情といった身近な感情から、戦争やメディアのあり方までを描いた、要注目の作品となっている。