- 2026-08-12
- 2026-08-02
スウェーデンのSSWスミエ・ナガノ 病を経て命と向き合った、儚げな北欧フォーク作『Stardust In Valleys』
スウェーデンのシンガーソングライター、スミエ(Sumie、本名サンドラ・スミエ・ナガノ)の9年ぶりとなるアルバム『Stardust In Valleys』は、ギターと声を中心としたシンプルなサウンドによって、驚くほど豊かな感情を包み込んだ優れた北欧フォーク作品だ。
スウェーデンのシンガーソングライター、スミエ(Sumie、本名サンドラ・スミエ・ナガノ)の9年ぶりとなるアルバム『Stardust In Valleys』は、ギターと声を中心としたシンプルなサウンドによって、驚くほど豊かな感情を包み込んだ優れた北欧フォーク作品だ。
フランスの新鋭ピアニスト、トリスタン・メリア(Tristan Mélia)のソロピアノ作『The Bird in My Heart』が素晴らしい。アルバムはピアノ演奏、録音、ミキシング、マスタリングがすべて彼自身によって行われており、真に内省的な制作プロセスを通じて生み出された音にはアーティストの独白が綴られており、さらにはその奥に秘められた彼の魂の咆哮を感じさせる。3曲のカヴァーと、5曲のオリジナルを収録。
ブラジルの新世代シンガーソングライター、アマンダ・マガリャンイス(Amanda Magalhães)の2026年新作『Era Uma Vez o Amanhã』は、MPB/ソウル路線をゆく彼女の従来作の主要なテーマであった個人的感情や恋愛から一転、社会や政治の問題について先鋭的にラップする革新的な作品だ。アルバムタイトルは、おとぎ話の定型句「Era uma vez(昔々)」と「Amanhã(明日)」を結びつけた「昔々、明日というものがあった」という逆説的表現で、未来そのものがすでに失われつつあるのではないかという感覚を示唆。歌詞では現代社会のテクノロジー、労働、資本主義、SNSと承認欲求、環境問題、そして未来の社会像について歌っている。
「カーヌーン」という楽器名を聞いて、すぐにピンとくる人は多くはないかもしれない。しかし、ひとたびその音色に触れたなら、誰もが瞬く間にその魅力の虜になってしまうはずだ。今回紹介するのは、1995年にハイファで生まれたパレスチナ人で、米国の名門バークリー音楽大学でジャズを学んだカーヌーン奏者フィラス・ズレイク(Firas Zreik)。近年の音楽はますますグローバル化が進み、カーヌーンでジャズを演奏する音楽家も増えているが、そんな中でもカーヌーンを即興音楽の主役へ押し上げた重要人物の一人とみなされている。
2019年に中国・上海で結成され、数々のシングルヒットで注目されていたモロッコ出身の男女デュオ、サラ&イスマイル(Sarah & Ismael)が、初のフルレンス・アルバムとなる『MANGA』をリリースした。モロッコのローカルな音楽性を基盤としつつ、ポップスやロック、ソウル、さらには中国などアジアを感じさせる音像も交えた、とてもクオリティの高い作品だ。
メキシコシティを拠点とするサイケデリック・クンビア・バンド、 ソニード・ガヨ・ネグロ(Sonido Gallo Negro)の通算5作目となるアルバム『CUMBIAVISION』。ペルビアン・クンビア(chicha)を基盤に、1970年代のサイケロック、サーフロック、アナログシンセ、オルガンなどを融合させた「サイケデリック・トロピカル」なサウンドで知られる彼らのこれまでの路線をさらに進化させ、(メキシコのソニデロ文化に根ざしたクンビア(クンビア・ソニデラ)を軸に、ハイエナジー、トラップやサイケデリックな実験性を大胆に織り交ぜた作品だ。
ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエヴォ出身のドラマー、スルジャン・イヴァノヴィッチ(Srdjan Ivanovic)が率いるカルテット「Blazin' Quartet」の2026年新譜『Cosmogonie』は、ギリシャ神話の天地創造(Cosmogony)にインスパイアされた、壮大なコンセプト・アルバムだ。
たとえベーシストのソロ・アルバムだとしても「ベースばかりが目立っている」ような作品は近年は少なくなってきたように思うが、モヒニ・デイ(Mohini Dey)に関してはその法則は当てはまらないようだ。1996年にインド・コルカタで生まれ、両親の影響で幼少期からインド古典音楽やジャズ、フュージョン、メタルなどに親しみ、10歳前後でプロとして音楽活動を開始。10代中盤になるとその超絶的な技巧で世界的な注目を浴びるようになり、現在では国際シーンにおける女性ベーシストのロールモデルと言われるまでになったヴァーチュオーゾなのだから、やはり華やかに目立つことでこそ、その真価が発揮されるものらしい。
ブラジルの音楽についてある程度の知見をお持ちの方なら、シコ・ブアルキ(Chico Buarque, 1944 - )が同国史上最高のシンガーソングライターの一人であるという意見に疑問の余地はないだろう。1960年代から優れた作曲と詩と歌によって音楽の第一線で活躍し、さらに小説家や劇作家としても成功。とりわけ1964年から1985年まで続いたブラジル軍事独裁政権への抵抗の象徴として、近年のブラジルの文化の形成に大きな影響を与えた人物だ。本稿で紹介するグループ、エスカファンドリスタス(Escafandristas)の4人も、それぞれが幼少期からごく自然にシコ・ブアルキの音楽に触れながら育ってきたという。
パンデミックの最中、ニューヨークの公園や街角で演奏する動画をSNSに投稿し、世界中の注目を集め急速にフォロワーを獲得したジャズ・トリオがいる。彼らはニュー・ジャズ・アンダーグラウンド(New Jazz Underground)。このサックス、ベース、ドラムスというコードレス編成のトリオは、全員がジュリアード音楽院の出身で、ジャズの伝統に根差しながらヒップホップやインターネット文化という時代性を武器に、多くの若者たちからの支持を集めた。
米国ロサンゼルスを拠点に活動するインド系のヴォーカリスト/作曲家/マルチ器楽奏者シャラダ・シャシダール(Sharada Shashidhar)は、現代の西海岸のジャズシーンでも一際異彩を放つ存在だ。スピリチュアルなバンドサウンドを中心とした前作『Soft Echoes』(2023年)からより深化し、エレクトロの比重を増しつつ更なる内面性を志向するような新作『A Foot on the Ground』で、彼女は“何を奏でるか”より、“どのような心で音を生み出すか”を自問自答する。
2012年にデュオを組み、ブラジルが生んだ偉大な作曲家エイトル・ヴィラ=ロボス(Heitor Villa-Lobos 1887 - 1959)の楽曲を現代的に再解釈した『Villa-Lobos Popular』を発表したアミルトン・ゴドイ(milton Godoy)とガブリエル・グロッシ(Gabriel Grossi)が、再びデュオを組んだ。彼らの2026年リリースの続編は、『Os Filhos de Villa』つまり“ヴィラの子どもたち”。ブラジル音楽史に輝かしく残る様々な作曲家たちの代表作を取り上げつつ、ヴィラ=ロボスの音楽的遺産を辿って行く。
西アフリカ、マリの伝統的なグリオの家系に生まれたシンガー、マー・ダンバ(Mah Damba)の2026年新作『Taabolo Koura』。「声を中心に据える」という古来からのグリオ音楽の美学を徹底したアルバムとなっており、アコースティック・ギターやアコーディオン、さらにはンゴニ、カラバシュといった伝統楽器を用いた極上のアコースティック編成に乗る彼女の力強くも温かい歌が強く印象に残る作品だ。
ブラジルを代表するシンガーソングライターのイヴァン・リンス(Ivan Lins)の新作『Sambadouro』が2026年7月24日にリリースされた。イヴァン・リンスといえば、自身で鍵盤を弾きながら歌う、めちゃめちゃ個性的かつお洒落なAORあるいはジャズ寄りのMPBという印象が強いが、今作では彼自身の長年の念願であったという「サンバ」に全振りしたサウンドで、リラックスしながらも情熱的な演奏を届けてくれた。