ジルベルト・ジルの孫娘フロール・ジル16歳、極上のデビュー作『Cinema Love』が素晴らしい

Flor Gil - Cinema Love

NYとリオの最新の音楽&MPBの伝統。独自の視点が魅力の新鋭

2009年生まれの16歳。ブラジル・リオデジャネイロ出身のシンガーソングライター、フロール・ジル(Flor Gil)のデビュー作『Cinema Love』が素晴らしい。囁くような声で、日常の中にある感情の繊細な揺れを独自の視点で情緒豊かに歌うさまは、すでに成熟の域に達している。彼女の内面にある憧れや愛情といった感情を深く探求したいという欲求が、映画的な手法で表現されたものが今作の本質だ。

フロール・ジルは幼少期からニューヨークとリオデジャネイロを行き来しながら過ごした。常にギターが身近にあり、日常的に家族が出演するステージに触れるなど、絶え間ない創造的刺激が彼女を自然と音楽の道へと向かわせたようだ。13歳のとき、祖父ジルベルト・ジル(Gilberto Gil)のファミリー・バンドでのツアーに帯同し初めて本格的に音楽家としての活動を開始。こうした体験が彼女の独特の作風に大きな影響を及ぼしており、伝統的なMPBを受け継ぎつつも、ニューヨークやブラジルの最先端の流行も入り混じった魅力的な音楽を創り上げている。

影響を受けたアーティストとしてラナ・デル・レイ(Lana Del Rey)、ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)、そして祖父のジルベルト・ジルを挙げているが、まさにそれらの絶妙なミックスといえる作風が面白い。サウダーヂが織り交ぜられたR&B風の(1)「Starstruck」、官能的で情熱的な(2)「Cinema Love」の冒頭の2曲は完璧な導入だ。

(2)「Cinema Love」

(4)「HELL NO」では、彼女の内側に秘められた明確な拒絶の意思を発散。
(6)「Moon River」では祖父ジルベルト・ジルのギターをバックに、美しいストリングスのアンサンブルも加えてジャズ・スタンダードの名曲を独自に表現している。

(4)「HELL NO」

(7)「CHORO ROSA」ではポルトガルの歌手マロ(MARO)をフィーチュア。歌詞は全編ポルトガル語で、ゆったりとしたバラードでサウダーヂを表現している。

ヴィトン(Vitão)とのデュエットの(8)「Saudade」は、音楽に祝福された家族を称えるような感情が込められている。歌詞はジルベルト・ジルによるもので、フロール・ジル自身とブラジル音楽との繋がりや家族の絆を象徴している。

12月には彼女の原点を見せた『EPMELÍFLUA』もリリース

フロール・ジルはその後2025年12月にカヴァーを中心としたEP『EPMELÍFLUA』をリリース。
ジルベルト・ジル作曲の「Duplo Sentido」、アントニオ・カルロス・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)の「Corcovado」や「Dindi」など彼女のルーツに立ち返った内容で、凝ったアレンジも含めて彼女の稀有な才能の片鱗を感じさせてくれる内容で、ぜひこちらも併せて聴いてほしい。

Flor Gil - Cinema Love
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