• 2026-08-11
  • 2026-08-10

G.ミラバッシ直系ピアニスト、トリスタン・メリアが奏でる至極耽美なソロピアノ『The Bird in My Heart』

フランスの新鋭ピアニスト、トリスタン・メリア(Tristan Mélia)のソロピアノ作『The Bird in My Heart』が素晴らしい。アルバムはピアノ演奏、録音、ミキシング、マスタリングがすべて彼自身によって行われており、真に内省的な制作プロセスを通じて生み出された音にはアーティストの独白が綴られており、さらにはその奥に秘められた彼の魂の咆哮を感じさせる。3曲のカヴァーと、5曲のオリジナルを収録。

  • 2026-08-09
  • 2026-08-09

パレスチナ出身カーヌーン奏者フィラス・ズレイクが放つ現代アラビック・ジャズの傑作『Tarabesque』

「カーヌーン」という楽器名を聞いて、すぐにピンとくる人は多くはないかもしれない。しかし、ひとたびその音色に触れたなら、誰もが瞬く間にその魅力の虜になってしまうはずだ。今回紹介するのは、1995年にハイファで生まれたパレスチナ人で、米国の名門バークリー音楽大学でジャズを学んだカーヌーン奏者フィラス・ズレイク(Firas Zreik)。近年の音楽はますますグローバル化が進み、カーヌーンでジャズを演奏する音楽家も増えているが、そんな中でもカーヌーンを即興音楽の主役へ押し上げた重要人物の一人とみなされている。

  • 2026-08-05
  • 2026-08-04

古来より人類がその叡智をかけて探求した“宇宙創世”を辿る旅。スルジャン・イヴァノヴィッチ・カルテット新譜

ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエヴォ出身のドラマー、スルジャン・イヴァノヴィッチ(Srdjan Ivanovic)が率いるカルテット「Blazin' Quartet」の2026年新譜『Cosmogonie』は、ギリシャ神話の天地創造(Cosmogony)にインスパイアされた、壮大なコンセプト・アルバムだ。

  • 2026-08-04
  • 2026-08-03

混沌としたAI時代の新しい音楽を体現する超絶女性ベーシスト、モヒニ・デイのやり方。『The Dey Way』

たとえベーシストのソロ・アルバムだとしても「ベースばかりが目立っている」ような作品は近年は少なくなってきたように思うが、モヒニ・デイ(Mohini Dey)に関してはその法則は当てはまらないようだ。1996年にインド・コルカタで生まれ、両親の影響で幼少期からインド古典音楽やジャズ、フュージョン、メタルなどに親しみ、10歳前後でプロとして音楽活動を開始。10代中盤になるとその超絶的な技巧で世界的な注目を浴びるようになり、現在では国際シーンにおける女性ベーシストのロールモデルと言われるまでになったヴァーチュオーゾなのだから、やはり華やかに目立つことでこそ、その真価が発揮されるものらしい。

  • 2026-08-01
  • 2026-08-01

SNS時代のジャズの寵児。New Jazz Underground 初のフルアルバム『Hoodies』

パンデミックの最中、ニューヨークの公園や街角で演奏する動画をSNSに投稿し、世界中の注目を集め急速にフォロワーを獲得したジャズ・トリオがいる。彼らはニュー・ジャズ・アンダーグラウンド(New Jazz Underground)。このサックス、ベース、ドラムスというコードレス編成のトリオは、全員がジュリアード音楽院の出身で、ジャズの伝統に根差しながらヒップホップやインターネット文化という時代性を武器に、多くの若者たちからの支持を集めた。

  • 2026-07-31
  • 2026-07-31

遊び心と静謐な精神性が共存。現代LAの先駆的ジャズシーンを象徴するシャラダ・シャシダール新譜

米国ロサンゼルスを拠点に活動するインド系のヴォーカリスト/作曲家/マルチ器楽奏者シャラダ・シャシダール(Sharada Shashidhar)は、現代の西海岸のジャズシーンでも一際異彩を放つ存在だ。スピリチュアルなバンドサウンドを中心とした前作『Soft Echoes』(2023年)からより深化し、エレクトロの比重を増しつつ更なる内面性を志向するような新作『A Foot on the Ground』で、彼女は“何を奏でるか”より、“どのような心で音を生み出すか”を自問自答する。

  • 2026-07-26
  • 2026-07-18

成熟した北欧ジャズの極致。“感謝”をテーマにしたソーレン・ベーベ・トリオ新作『Gratitude』

北欧を代表するピアノトリオ、ソーレン・ベーべ・トリオ(Søren Bebe Trio)による9枚目のスタジオ・アルバム『Gratitude』がリリースされた。デンマークの音楽賞にノミネートされた前作『Here Now』(2023年)で確立された、ベーシストのカスパー・テーイル(Kasper Tagel)とドラマーのクヌート・フィンスルー(Knut Finsrud)とのピアノトリオ編成で、オリジナル曲を中心に北欧らしい抑制された美学が貫かれた作品となっている。

  • 2026-07-25
  • 2026-07-24

インタン・アンドリアナ。インドネシアの貧しい家庭から一流のジャズシンガーとなった女性のデビュー・アルバム

インドネシアの首都ジャカルタの貧しい家庭に生まれ、ジャズ・シンガーとしての道を歩み、現在はカンボジアを拠点に活動するインタン・アンドリアナ(Intan Andriana)が、初のアルバムとなる『My Life in Jazz』をリリースした。音楽性はオーソドックスなジャズのスタイルを基本としつつ、マヌーシュ・スウィングなどの要素も加える。アルバムにはオリジナル曲に加え、インドネシアの名曲(5)「Bengawan Solo」なども取り上げるなど、インドネシアとカンボジアという二つの文化的ルーツを結ぶ象徴的な内容に仕上げている。

  • 2026-07-24
  • 2026-07-23

欧州屈指のクレズマーバンド、AKB新譜『Diaspora』──熱狂的グルーヴに潜む多文化混淆の歴史

30年におよぶバンドの歴史の中で、クレズマーを揺るがない根幹に据えつつジャズ、スカ、マヌーシュスウィング、果てはヒップホップやエレクトロニカなどを融合しながら様々な表現を試みてきたアムステルダム・クレズマー・バンド(Amsterdam Klezmer Band, 通称:AKB)は、2026年の新譜『Diaspora』で、彼らの“根”である完全アコースティックなクレズマーに立ち戻ってきた。

  • 2026-07-23
  • 2026-07-21

豪サックス奏者ジュシュア・モシェ、自らのルーツ・ユダヤ文化に根差した現代ジャズ注目作『Art Don’t Lie』

オーストラリア・メルボルンを拠点に活動する気鋭サックス奏者/作曲家ジョシュア・モシェ(Joshua Moshe)が、彼の個人的なルーツやアート観を丁寧に込めた新譜『Art Don't Lie』をリリースした。8人編成のバンドを基本とした彼らの演奏は、一聴して分かるとおり、その音楽性はオーストラリアのジャズ・ミュージシャンとは思えない異彩を放つ。

  • 2026-07-22
  • 2026-07-19

驚くほど知的で熱い、最強エネルギーの現代ジャズ! Trio Grande: What’s Left

今、これほど面白い一流のジャズトリオは、ほかにないと思う。トリオ・グランデ(Trio Grande)。ギタリストのギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)、サックス奏者のウィル・ヴィンソン(Will Vinson)、そしてドラマー/ベーシストのネイト・ウッド(Nate Wood)から成るトリオだ。特に、器用にベースを弾きながらドラムスを叩く(ドラムスを叩きながらベースを弾く、の方が正しいかもしれない)ネイト・ウッドの姿を初めて見れば「大道芸か」と見紛うかもしれないが、聴けば聴くほどに彼らが音楽的にも“人並外れた”存在だと気付くはずだ。

  • 2026-07-19
  • 2026-07-08

機知に富むインタープレイで魅せる、ゲイリー・ヴェルサーチェの最新ピアノトリオ作『Three Track Mind』

アメリカ合衆国のピアニスト、ゲイリー・ヴェルサーチェ(Gary Versace)の新譜『Three Track Mind』は、今年(2026年)のジャズ・ピアノトリオ作でベストの一枚だろう。オーソドックスなピアノトリオ編成で、収録曲のうち半数がスタンダードという構成は、一見すると保守的でつまらなそうに思えるかもしれないが、何よりもジャズという音楽の即興によるインタープレイの楽しさに改めて気づかせてくれる。あるいは、2回演奏される「Autumn Leaves」といった古典的な楽曲でさえ、これだけ自由で創造的に生まれ変わることができるのだという最高の事例だ。

  • 2026-07-18
  • 2026-07-18

音楽家として生きる道を選んだジャスミン・マイラの誇りと苦悩に包まれた、示唆に富む新譜『Where Light Settles』

イギリス・リーズを拠点に活動する気鋭サックス奏者/作曲家、ジャスミン・マイラ(Jasmine Myra)による3作目のアルバム『Where Light Settles』。現代の英国ジャズを代表するレーベルであるゴンドワナ・レコード(Gondwana Records)から届けられた本作は、彼女のこれまでの路線を受け継ぎながら、より豊かなアンサンブルへと発展した意欲作だ。

  • 2026-07-17
  • 2026-07-15

目眩く魔術的超絶技巧のショーロ・ジャズ…世界を捉えたアミルトン・ヂ・オランダ 最新作『NOVA』

バンドリンに革命をもたらしたアミルトン・ヂ・オランダ(Hamilton de Holanda)率いるスーパートリオが、新作『NOVA』をリリースした。本作は、2023年作『Flying Chicken』でショーロとジャズを超絶的な創造性で統合、唯一無二の“現代ブラジリアン・ジャズ”を提示し、そして『Live in NYC』(2025年)でラテングラミー賞の「最優秀ラテン・ジャズ/ジャズ・アルバム」を受賞したこのトリオの(現時点での)完成形であり、そして多数の才能ある国際的なコラボレーターの参加によって“究極形”とも思えるクオリティに到達した、恐るべき作品だ。