• 2025-03-30
  • 2025-03-29

ラテンジャズを愛するスイス出身若手女性ピアニスト、マノン・ミュレナーが描くそれぞれの人生の物語

スイス出身、ニューヨークで活動するジャズピアニスト/作曲家マノン・ミュレナー(Manon Mullener)が、世界中で出会った人々の人生の物語にインスパイアされ制作した新譜『Stories』が素晴らしい。キューバ音楽に影響を受け、現代NYで演じられるヨーロピアン・ジャズといった独特の趣のある作品で、多様なアイディアの発現からこの若手音楽家の才能が確信できる秀でた作品となっている。

  • 2025-03-29
  • 2025-03-30

音楽を再定義する可能性を秘めた壮大な芸術的実験。ポーランドの鬼才レシェック・モジジェル新譜

ポーランドのピアニスト、レシェック・モジジェル(Leszek Możdżer)は新作『Beamo』で、彼の前作『Passacaglia』(2024年)で試みた調性に対する実験をさらに大胆な形で更新している。彼はそれぞれ調律の異なる3台のピアノを用い、調性を放棄するのではなく、調性を拡張する形で音楽そのものを美しく再構築する。

  • 2025-03-28
  • 2025-03-28

その信念は現代ジャズをさらに進化させる。スウェーデンの革新派クインテット、Hederosgruppen

2020年にアルバム『Storstrejk』でデビューして以来、スウェーデンのジャズシーンで注目を集める5人組、ヘドロスグルッペン(Hederosgruppen)の3枚目のアルバム『Stilbrott』がリリースされた。彼らのスタイルはジャズの伝統に則りつつも独自の創造性や芸術性を追求するもので、ジャケットに描かれた“V字ジャンプの先駆者”であるスキージャンプ選手ヤン・ボークレブ(Jan Boklöv)が象徴するような自由と革新性を賛美している。

  • 2025-03-27
  • 2025-03-26

ギターとチェロ、魔法のように美しい。キケ・シネシ&アストリッド・モトゥーラ『La Magia』

アルゼンチンを代表するギタリストのキケ・シネシ(Quique Sinesi)が、同国のチェリストのアストリッド・モトゥーラ(Astrid Motura)とのデュオで新譜『La Magia』を発表した。収録の7曲はすべてキケ・シネシの作曲で、純粋で淀みのない、彼らしい澄み切った美しい音楽をたっぷりと堪能できる作品となっている。

  • 2025-03-25
  • 2025-03-08

バンドネオンの未来を示す。ルイーズ・ジャリュの温故知新プロジェクト『Jeu』

フランスの天才バンドネオン奏者ルイーズ・ジャリュ(Louise Jallu)の2024年作『Jeu』。ピアソラの生誕100周年を記念し絶賛された前作『Piazzolla 2021』(2021年)を経て、今作では自身の作曲を中心にシューマンやラヴェル、ブラッサンスといった影響を織り交ぜた多彩なアプローチを見せている。

  • 2025-03-21
  • 2025-03-21

知性派現代ジャズの最前線ピアノトリオ。太陽の恵みをテーマとしたフィリップ・レム最新作

オランダ出身のドラマー/作曲家フィリップ・レム(Philippe Lemm)の4枚目となるスタジオ・アルバム『Echo The Sun』。今作ではトリオにインド出身ピアニストのシャーリク・ハサン(Sharik Hasan)を新たに迎え、太陽の恵みによる光と温かさ、回復力をテーマとした音楽的探求を特徴とした素晴らしい現代ジャズを展開する。

  • 2025-03-18
  • 2025-03-17

動物たちをテーマにした斬新な現代ジャズ。気鋭鍵盤奏者トニー・パエルマン新譜『Wise Animals』

フランスのピアニスト/作曲家トニー・パエルマン(Tony Paeleman)の新譜『Wise Animals』は、この1981年生まれの鍵盤奏者が2021年にベースのジュリアン・エルネ(Julien Herné)とドラムスのステファン・ハチャード(Stéphane Huchard)とともに録音し高い評価を得た『The Fuse』の待望の続編であり、おそらくは彼のキャリアにおいてもピークに達した感のある傑作だ。

  • 2025-03-16
  • 2025-03-12

鋭くウィットに富んだ視点で社会を皮肉る強烈なアヴァン・ジャズロック。Kadawa 驚異の新譜

イスラエル出身、米国を拠点とするジャズ/プログレシーンで強い存在感を示すジャズロックバンド、カダワ(Kadawa)が2枚目のフルアルバム『Post Graduation Fees』をリリースした。今作はオーヴァーダビングを多用するなどトリオのコア・サウンドを拡張した野心的な作品で、尽きない音楽的探究心によって培われた技巧と芸術性、そして彼ら特有のウィットに富んだ表現力が炸裂する。合わせ鏡によって無限の深淵を覗かせるジャケットが象徴するように、独特の深みを持った傑作だ。

  • 2025-03-13
  • 2025-03-12

ヨルバ族の文化と現代UKジャズの革新的な融合。鍵盤奏者NIJIの新作『Oríkì』

ナイジェリアにルーツを持つロンドン生まれのピアニスト/作曲家/プロデューサーであるニジ(NIJI)の 新作『Oríkì』がリリースされた。自身のルーツであるヨルバ族の伝統文化や音楽をコンテンポラリー・ジャズと融合させる野心的なプロジェクトであり、その仕上がりはアフロビートの流れを汲みつつ、より現代的に洗練された彼の音楽的探求の優れた成果だ。

  • 2025-03-13
  • 2025-03-14

ジャズに魅了されたモロッコ出身の天才マルチ弦楽器奏者マフムード・ショウキが奏でる“交易の音”

モロッコ出身で現在は米国ニューオーリンズを拠点とするマルチ弦楽器奏者/作曲家マフムード・ショウキ(Mahmoud Chouki)。2024年リリースの『Caravan "From Marrakech To New Orleans"』は、ギターやウードを卓越した技巧で操り、マグレブ(北西アフリカ諸国)の音楽とニューオーリンズで生まれたジャズを融合した独創的な音楽で国際的に称賛される彼の新作だ。

  • 2025-03-10
  • 2025-03-09

内省と解放を繰り返す美しい欧州ジャズ。日系ベルギー人ピアニスト、アレックス・クーの音楽

ベルギー人の父親と日本人の母親を持つベルギーのピアニスト、アレックス・クー(Alex Koo)の新作『Blame It on My Chromosomes』。長年共演してきたベースのレンナルト・ヘインデルス(Lennart Heyndels)とドラマーのドレ・パレマールツ(Dré Pallemaerts)とのトリオ編成を軸に、2曲では米国の人気トランペット奏者のアンブローズ・アキンムシーレ(Ambrose Akinmusire)がゲスト参加した充実の作品となっている。

  • 2025-03-08
  • 2025-03-08

ガーナの伝統と未来を描く“フラフラ・ゴスペルの女王”フローレンス・アドーニ、傑作デビュー作

ガーナの“フラフラ・ゴスペル・クイーン”として注目される歌手フローレンス・アドーニ(Florence Adooni)による国際シーンにおけるデビュー作『A.O.E.I.U. (An Ordinary Exercise In Unity)』。伝統と革新の絶妙なバランス、力強いヴォーカルと洗練されたプロダクション、そして“団結”という普遍的なメッセージによって多くのリスナーに強いインパクトを残す作品となっている。

  • 2025-03-07
  • 2025-03-07

オーストラリア出身、“若手世界最高峰”と噂の超絶ギタリスト、待望のデビュー作『Tides of Time』

若手ジャズ/フュージョン系ギタリストの最高峰と注目されるオーストラリア・シドニー出身のジョシュ・ミーダー(Josh Meader)が、待望のデビュー・アルバム『Tides of Time』をリリースした。ジャズ、フュージョン、プログレッシヴ・ロックなどの影響を混淆したインストゥルメンタルで、彼の性格無比な超絶技巧が爽快な作品だ。

  • 2025-03-04
  • 2025-03-03

バーレーン系女性ジャズ・トランペット奏者、ヤズ・アハメドが切り拓くアラビック・ジャズ新境地

ロンドンを拠点に活動する女性トランペッター/作曲家のヤズ・アハメド(Yazz Ahmed)が、自身のルーツである中東の島国バーレーンの伝統的文化にインスパイアされた新作『A Paradise In The Hold』をリリースした。真珠産業に従事する労働者やアラブの女性達の強さを祝い、また数曲で自身の作品として初めて歌手とのコラボレーションも行うなど、アラビック・ジャズの新たな境地を切り拓いた作品となっている。