- 2025-01-01
- 2025-01-01
ドイツを代表するトランペッター、マルクス・シュトックハウゼンが描き出す壮大な祝福の抒情詩
ドイツのトランペッター/作曲家、マルクス・シュトックハウゼン(Markus Stockhausen)。彼が自身のカルテットに加え6人のゲスト・ミュージシャンを招いて録音した新譜『Celebration』は、ジャズ、現代音楽、プログレなどを境界なく内包した稀有な作品だ。
ドイツのトランペッター/作曲家、マルクス・シュトックハウゼン(Markus Stockhausen)。彼が自身のカルテットに加え6人のゲスト・ミュージシャンを招いて録音した新譜『Celebration』は、ジャズ、現代音楽、プログレなどを境界なく内包した稀有な作品だ。
私がこの1年間でもっとも感銘を受けた音楽作品を10枚、選びました。このリストは広く安心や共感を呼ぶものではないかも知れませんが、間違いなく刺激的で、好奇心をくすぐる世界の音楽への扉を開くものとなっているはずです。
ヴァイオリン奏者/作曲家のアルン・ラママーシー(Arun Ramamurthy)は米国生まれだが、南インドのベンガルール生まれの祖母アージによってカルナティック音楽を学び、その経験からジャズとカルナティック音楽を自然に融合させた独自の道を探求している。彼の新作『New Moon』は同じくインド系のドラマー/タブラ奏者のサミール・グプタと、世界中のトップ・ミュージシャンと共演歴のあるベーシストのデイモン・バンクスとのトリオ作で、独創的なカルナティック・ジャズが悠久の歴史の新たな交叉点を感じさせる内容となっている。
全編生バンドでのブラジリアン・ヒップホップ作『Direct-to-Disc』を2024年11月にリリースしたばかりのサンバ・ヒップホップの先駆者、マルセロ・デードイス(Marcelo D2)が、早くも新しいプロジェクトからの新譜『Manual Prático Do Novo Samba Tradicional, Vol. 1: DONA PAULETE』をリリースした。“新しい伝統サンバの実践マニュアル”という意味を持つ今回のプロジェクトでは、2025年のカルナヴァルまでに4枚のアルバムをリリースする予定。
韓国語で“遺産”(유산)の意味を持つフランスのバンド、ユサン(Yusan)の2024年新譜『Ba Yo』が素晴らしい。現代ジャズ、ネオソウル、アフロ・カリビアン、ゴスペルなど様々な要素が溶け込んだ技巧的かつ斬新な音楽性で、今作ではさまざまなリズム、声を組み合わせた万華鏡のような音楽観で強いインパクトを与える。
カナダを代表する女性ジャズ・ピアニストのリニー・ロスネス(Renee Rosnes)の2024年の新作『Crossing Paths』は、彼女のブラジル音楽への強い愛が存分に注がれた一枚だ。エグベルト・ジスモンチ(Egberto Gismonti)やエドゥ・ロボ(Edu Lobo)、アントニオ・カルロス・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)、ジョイス・モレーノ(Joyce Moreno)といったブラジルの偉大な芸術家たちの作品を9曲選び、曲によってはゲスト・ヴォーカリストとして作家自身(!)を迎え、本格的なブラジリアン・ジャズを披露している。
グアテマラ出身でメキシコシティを拠点に活動するチェロ奏者/歌手/作曲家のマベ・フラッティ(Mabe Fratti)の4枚目となるアルバム『Sentir Que No Sabes』。チェロとヴォーカルをサウンドの軸に据えた実験的な作風で現代エクスペリメンタル・ジャズの旗手に名乗りをあげた彼女の最新作は、これまで以上にロックやポップスの輪郭を浮かび上がらせつつも、アヴァンギャルドな音響空間に留まった魅力的な作品だ。
カーボベルデにルーツを持ち、ポルトガルで生まれ現在はロンドンを拠点に活動するディーヴァ、カルメン・ソウザ(Carmen Souza)は11枚目のアルバムとなる新譜『Port’Inglês』(イギリスの港)で、イギリスとカーボベルデの繋がりに焦点をあて、8つの物語を歌っている。
フランスのピアニスト/作曲家、ピエール=フランソワ・ブランシャール(Pierre-François Blanchard)の新作『#puzzled』。クラリネット奏者のトーマス・サヴィ(Thomas Savy)とともに、水鏡に映した自分自身との果てない対話のような哲学的な時間が流れる、とても美しい作品だ。
2024年末にリリースされたルーシー・アウヴェスの新作『Gato do Mato』には、ほぼすべてが彼女のオリジナルである10曲が収録されている。現代的なサウンド・デザインだが、根幹にあるのはブラジル北東部の音楽であるフォホーだ。アルバムタイトルは“ヤマネコ”を意味し、ルーシーは自分自身を山猫のイメージと重ね合わせている。
デュオとしてのデビュー作『Rosa de los Vientos』(2022年)が話題となったギタリストのメロン・ヒメネス(Melón Jiménez)とバンスリ奏者ララ・ウォン(Lala Wong)の異色デュオによる新譜『Confluencias』がリリースされた。名義はメロン・ヒメネス単独だが、実質はララ・ウォンとの双頭作品で、今作ではエレクトロニックの要素もほどほどに加えた魅力的なエスニック・フラメンコが展開される。
ブラジルの貧しいシングルマザーの家庭に生まれ、10歳からプロとして音楽活動を行い家計を支えてきたムニール・オッスン(Munir Hossn)が、ユニークなライヴ体験を提供する米国フロリダ州マイアミのブラック・ルーム・セッションズ(Black Room Sessions)での素晴らしい演奏を収録したライヴ盤『Munir Hossn & Elas (Live at the Black Room Sessions)』をリリースした。
イスラエル・テルアビブのSSW、アナット・モシュコフスキー(Anat Moshkovski)の初のフルレンス・アルバム『ANAT』が素晴らしい。1970年代前後のフォークロックやフレンチポップの手触りのある良質なポップスで、アコースティック楽器を軸にした室内楽的な優しいサウンドに英語やフランス語の歌詞を乗せて優美に歌う。
ブラジルのSSW/ピアニスト、デリア・フィシェール(Delia Fischer)の新作『Delia Fischer: Beyond Bossa』は、その名のとおりアントニオ・カルロス・ジョビンを参照するボサノヴァの雰囲気を残した良質な音楽だ。彼女がポルトガル語で書いた詩はすべてピアニスト/作曲家/ライターのアレン・モリソン(Allen Morrison)によって英語詞となり、デリア・フィシェールやその他多彩なゲストによって英語で歌われている。