- 2025-11-16
- 2025-11-16
ダファー・ユセフ、“人生のもっとも重要な出会い”を深淵なる美しさで描く新譜『Shiraz』
独自の表現の道を歩むチュニジア出身のウード奏者/歌手/作曲家ダファー・ユセフ(Dhafer Youssef)が、ドイツのレーベル、ACTからリーダーとして第一弾となるアルバム『Shiraz』をリリースした。伝統的なアラブ音楽を精神的な神秘とともにジャズの世界と融合させた稀有な音楽家である彼が、さらなる精神的・音楽的深化を見せた美しい作品だ。
独自の表現の道を歩むチュニジア出身のウード奏者/歌手/作曲家ダファー・ユセフ(Dhafer Youssef)が、ドイツのレーベル、ACTからリーダーとして第一弾となるアルバム『Shiraz』をリリースした。伝統的なアラブ音楽を精神的な神秘とともにジャズの世界と融合させた稀有な音楽家である彼が、さらなる精神的・音楽的深化を見せた美しい作品だ。
フランスを代表するピアニスト/作曲家、ソフィア・ドマンシッチ(Sophia Domancich)の新譜『Wishes』は、ピアノトリオによる即興表現のもっとも美しい側面を魅せてくれる素晴らしい作品だ。今作はピアノトリオ編成で、共演者にいずれもアメリカ合衆国出身、ベーシストのマーク・ヘリアス(Mark Helias)とドラマーのエリック・マクファーソン(Eric McPherson)を迎えての初の録音となっている。
1990年代以降、MPBの巨匠シコ・ブアルキ(Chico Buarque, 1944 - )のバンドでベーシストを務めたジョルジ・エルデル(Jorge Hélder)が、シコ・ブアルキの80歳を記念して制作した作品がこの『Samba e Amor: Jorge Helder Toca Chico Buarque』(2024年)だ。そのタイトルのとおりシコ・ブアルキ曲集となっており、ほかの誰よりもシコの音楽を支えてきたジョルジ・エルデルという職人的ベーシストによるアレンジが楽しめるアルバムとなっている。
ブラジルのベテラン・ピアニスト、ファビオ・トーレス(Fábio Torres)と、若手ドラマーのカイナン・メンドンサ(Cainã Mendonça)のデュオによる『Derivas』は、軽やかなブラジリアン・ジャズに魅了される良作だ。アルバムには7曲が収録されており、全曲が二人のオリジナル。
イスラエルのシンガーソングライター/マルチ奏者トム・コーエン・ショシャン(Tom Cohen Shoshan, ヘブライ語:תום כהן שושן)の新作『כאבי כמיהה』(日本語訳:『渇望の痛み』)が素晴らしい。ジャズ、クラシック、ブラジル音楽、プログレッシヴ・ロックといった様々なジャンルの音楽からの影響を感じさせる作編曲で、ピアノを中心に据え、適度なエレクトロニックも交えた洗練されたサウンドと、彼の自然体のヴォーカルが組み合わさって美しい音風景が繰り広げられる。
イスラエル出身、ニューヨークを拠点に活動するギタリスト/作曲家のナダフ・レメズ(Nadav Remez)のアルバム『Summit』は、イスラエルとアメリカの幅広い年代のメンバーからなるクインテットで硬派な”イスラエル・ジャズ”を聴かせてくれる好盤だ。
その実力と表現力について、世界が認めたブラジル新世代のデュオ、ヴァネッサ・モレーノ & サロマォン・ソアレス(Vanessa Moreno & Salomão Soares)が、11月下旬に遂に初来日を果たす。会場はビルボードライブ横浜だ。▶︎ ヴァネッサ・モレーノ & サロマォン・ソアレス × マルセロ木村 ~Brasil meets Brasil in Japan!~【ビルボードライブ横浜】(1日2回公演)2025/11/27(木)1stステージ 開場16:30 開演17:30 / 2ndステージ 開場19:30 開演20:30
フランス・ニーム出身の鍵盤奏者ローラン・クーロンドル(Laurent Coulondre)、フランス海外県グアドループ出身の打楽器奏者アーノウ・ドルメン(Arnaud Dolmen)、そして同じくフランス海外県マルティニーク出身のピアニストグレゴリー・プリヴァ(Grégory Privat)のトリオによるアルバム『The Getdown』。それぞれが輝かしい経歴を持ち、フランスの若手〜中堅の中でもトップクラスに世界的知名度を誇る3人による新たなジャズ。
前作『Anouch』(2022年)で、アルメニア人の記憶に深く刻まれたジェノサイドの悲劇の歴史を、その被害者であった祖母の体験を通して生々しく描き出し芸術的な音楽物語へと昇華させたフランスのピアニスト/作曲家アンドレ・マヌーキアン(André Manoukian)の新作『La Sultane』。ジャズ・ピアノトリオを中心とし、東洋のパーカッションやストリングスなども交え、国境のない地平を描き出してゆく。
ダブルベースの奏法に革新をもたらしたフランスの伝説的なベーシスト、フランソワ・ラバト(François Rabbath, 1931 - )と、その息子であるピアニスト/作曲家/プロデューサーのシルヴァン・ラバト(Sylvain Rabbath, 1984 - )を中心としたプロジェクト、ラバト・エレクトリック・オーケストラ(Rabbath Electric Orchestra)のデビュー作『Amall』が素晴らしい。
イングランド・ソリハル出身のピアニスト/作曲家エリオット・ジャック(Elliott Jack)が、パートナーの妊娠が発覚した2023年1月から作曲を開始し、初めての息子が誕生したあとの2024年6月まで制作を続けた『Night Light』。父性の芽生えをテーマとし、息子への贈り物としても機能する楽曲が収められており、録音はアップライトピアノの演奏をペダルの動きまで克明に生々しく捉えている。ブラームスの子守唄をアレンジした(5)「Lullaby, Op. 49 No. 4」を除き、全曲がエリオット・ジャックのオリジナルで、ジャズからポスト・クラシカルへ転向したという彼らしい個性が滲む。
アルゼンチン・ブエノスアイレスのピアニスト/作曲家パンチョ・ラゴネセ(Pancho Ragonese) の2025年作『Mosaico』は、同地のフォルクローレと、ジャズや隣国ブラジルの音楽などが高度に融合した現代アルゼンチン・ジャズ(いわゆる“ネオ・フォルクローレ”)の魅力が凝縮された傑作だ。
クラシックを原点としながら、大胆なエレクトロニカやヴォイス・パーカッション、ポエトリー・リーディングや変則バンドなど様々な表現方法で毎回驚かせてくれるオーストリア出身の奇才ジャズピアニスト/作曲家、デヴィッド・ヘルボック(David Helbock)が新たにデュオの相手に選んだのは同郷出身のチェリスト/ベーシストのユリア・ホーファー(Julia Hofer)。相当名義の新譜『Faces of Night』は、冒険心と遊び心に溢れる二人のデュオ演奏に加え、フリューゲルホルンのローレンツ・ラープ(Lorenz Raab)、ダブルネック・ギターの鬼才マハン・ミララブ(Mahan Mirarab)、そして歌手ヴェロニカ・ハルチャ(Veronika Harcsa)というユニークな才能もゲストに迎えた楽しいジャズ・アルバムとなっている。
いずれも中東にルーツを持ち、音楽家としてヨーロッパで成功を収めた3人──イラン系フランス人の打楽器奏者ビジャン・チェミラニ(Bijan Chemirani)、アルバニア生まれで戦火を逃れイタリアに来たチェロ奏者レディ・ハサ(Redi Hasa)、そしてレバノン出身でやはり内戦から逃れてフランスに移住したピアニストのラミ・カリフェ(Rami Khalife)──。伝統音楽、ジャズ、クラシック、エレクトロなどそれぞれ専門分野は微妙に違えども、音楽的にも文化的にも重なる部分も多い彼らが初めてトリオを組み、“奇跡的”とすら形容したくなるほどに神秘的で感情を揺さぶられる音楽を生み出した。