- 2025-03-29
- 2025-03-30
音楽を再定義する可能性を秘めた壮大な芸術的実験。ポーランドの鬼才レシェック・モジジェル新譜
ポーランドのピアニスト、レシェック・モジジェル(Leszek Możdżer)は新作『Beamo』で、彼の前作『Passacaglia』(2024年)で試みた調性に対する実験をさらに大胆な形で更新している。彼はそれぞれ調律の異なる3台のピアノを用い、調性を放棄するのではなく、調性を拡張する形で音楽そのものを美しく再構築する。
ポーランドのピアニスト、レシェック・モジジェル(Leszek Możdżer)は新作『Beamo』で、彼の前作『Passacaglia』(2024年)で試みた調性に対する実験をさらに大胆な形で更新している。彼はそれぞれ調律の異なる3台のピアノを用い、調性を放棄するのではなく、調性を拡張する形で音楽そのものを美しく再構築する。
オランダ出身のドラマー/作曲家フィリップ・レム(Philippe Lemm)の4枚目となるスタジオ・アルバム『Echo The Sun』。今作ではトリオにインド出身ピアニストのシャーリク・ハサン(Sharik Hasan)を新たに迎え、太陽の恵みによる光と温かさ、回復力をテーマとした音楽的探求を特徴とした素晴らしい現代ジャズを展開する。
フランスのピアニスト/作曲家トニー・パエルマン(Tony Paeleman)の新譜『Wise Animals』は、この1981年生まれの鍵盤奏者が2021年にベースのジュリアン・エルネ(Julien Herné)とドラムスのステファン・ハチャード(Stéphane Huchard)とともに録音し高い評価を得た『The Fuse』の待望の続編であり、おそらくは彼のキャリアにおいてもピークに達した感のある傑作だ。
ベルギー人の父親と日本人の母親を持つベルギーのピアニスト、アレックス・クー(Alex Koo)の新作『Blame It on My Chromosomes』。長年共演してきたベースのレンナルト・ヘインデルス(Lennart Heyndels)とドラマーのドレ・パレマールツ(Dré Pallemaerts)とのトリオ編成を軸に、2曲では米国の人気トランペット奏者のアンブローズ・アキンムシーレ(Ambrose Akinmusire)がゲスト参加した充実の作品となっている。
ギリシャ出身のベーシスト/作曲家ペトロス・クランパニス(Petros Klampanis)の新作『Latent Info』。アルバムはエストニア出身のピアニスト、クリスチャン・ランダル(Kristjan Randalu)とイスラエル出身のドラマー、ジヴ・ラヴィッツ(Ziv Ravitz)との共同名義だが、収録曲は多くがペトロス・クランパニスの作曲クレジットとなっている。
カナダ・トロントを拠点とするピアニスト/作曲家ジェレミー・レッドベター(Jeremy Ledbetter)率いるピアノトリオの2024年新譜『Gravity』。スナーキー・パピー(Snarky Puppy)のドラマーとして知られるラーネル・ルイス(Larnell Lewis)と、スティーヴ・コールマン(Steve Coleman)との活動で知られるベーシストのリッチ・ブラウン(Rich Brown)とのトリオで、2018年のデビュー作『Got a Light?』以来の新作だ。
革新的なスタイルで知られるノルウェーのピアニスト/作曲家、シェーティル・ムレリド(Kjetil Mulelid)のトリオによる4枚目のアルバム『And Now』がリリースされた。ピアノ、ダブルベース、ドラムスという一般的なピアノトリオ編成だが、手数の多い攻めのピアノ、ときにフリージャズを思わせる高次元の絡みを見せるアンサンブル、それでいて北欧らしい叙情性を失わない好盤となっている。
ピアノのガディ・レハヴィ(Gadi Lehavi)、ダブルベースのタル・マシアハ(Tal Mashiach)、ドラムスのオフリ・ネヘミヤ(Ofri Nehemya)という現代イスラエル・ジャズ最高峰の若手3人によるピアノトリオ、GTO Trio が新作『Within』をリリースした。10年以上にわたるコラボレーションの中でトリオとしてのアルバムはこれまでに2018年の『From the Road』のみだったが、それぞれがリーダーとして、あるいはプレイヤーとして世界中の様々なミュージシャンらと共演してきた経験を再び長い友情の中に持ち込み、それぞれの成長を反映させたような素晴らしい作品となっている。
フランスの気鋭ピアニスト/作曲家バティスト・バイイ(Baptiste Bailly)の新譜『La Fascinante』は、欧州や地中海周辺の伝統的な音楽の影響を幅広く織り交ぜた、繊細で詩的な素晴らしい音楽作品だ。非常に映像的、物語的な印象を受けるアルバムで、楽曲の多様性は地中海周辺を巡る旅路のようにも感じられる。
米国シアトルのジャズ・ピアニスト/作曲家、ビル・アンシェル(Bill Anschell)の2024年作『Improbable Solutions』。自分にとって名前も演奏も初めて聴くピアニストで、とても瑞々しく若い感性が作曲やサウンドの随所に感じられたので若手かなと思っていたが、なんと1959年生まれの還暦過ぎのベテランだった。
米国のドラマー、アリ・ホーニグ(Ari Hoenig)の新譜『Tea for three』。ピアノのガディ・レハヴィ(Gadi Lehavi)、ベースのベン・ティベリオ(Benjamin "Ben" Tiberio)とのトリオ編成は前作『Golden Treasures』(2022年)と同じ面子で、長いキャリアを持つアリにとっても同じメンバーで2枚続けてアルバムをリリースするのは初めてのようだ。
ブラジルを代表するピアニスト/作曲家のサロマォン・ソアレス(Salomão Soares)の2024年新譜『Espirais』はシンプルに一般的なピアノトリオ編成のジャズ・アルバムだが、随所に“ブラジルらしさ”が散りばめており、特にブラジル音楽ファンには楽しめるジャズとなっている。
音楽の価値をその売上や再生回数で測ろうとするとき、フェデリコ・モンポウの初期作品『内なる印象』のまるまる全曲をピアノトリオでジャズアップして売り出したいという企画を提案すれば、おそらくそれは即却下となるだろう。極端に内気な性格故にその人生や作品にはほとんど光が当たらず、マニアを除いて語られる機会も少ないこの地味な作曲家が残した地味な曲たちは、今日でも殆ど顧みられることがない。
イスラエル・ジャズを象徴する存在であるベーシスト/作曲家のアヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)が、近年の活動の集大成ともいえる新譜『Brightlight』をリリースした。レギュラートリオであるロニ・カスピ(Roni Kaspi, ds)とガイ・モスコヴィッチ(Guy Moskovich)との演奏を軸に、ほかにも10名近いミュージシャンを迎え、独創的なコンポージングと豪快なアップライトベース演奏から生み出される彼独自の圧倒的なジャズを展開する。