イスラエル・ジャズのシーンを牽引する若手トリオ、GTO Trio 新作
ピアノのガディ・レハヴィ(Gadi Lehavi)、ダブルベースのタル・マシアハ(Tal Mashiach)、ドラムスのオフリ・ネヘミヤ(Ofri Nehemya)という現代イスラエル・ジャズ最高峰の若手3人によるピアノトリオ、GTO Trio が新作『Within』をリリースした。10年以上にわたるコラボレーションの中でトリオとしてのアルバムはこれまでに2018年の『From the Road』のみだったが、それぞれがリーダーとして、あるいはプレイヤーとして世界中の様々なミュージシャンらと共演してきた経験を再び長い友情の中に持ち込み、それぞれの成長を反映させたような素晴らしい作品となっている。
ラストの1曲を除き、収録曲は3人それぞれがオリジナルを持ち寄っている。3人それぞれの作曲家としての特徴的な個性が表れたものとなっており、とりわけベースのタル・マシアハがつくる曲(3,4,6曲目)は一際感性が豊かで輝いているように思える。
(3)「Merengue Mediterráneo」はベースのタル・マシアハの作曲で、彼がギタリストとしてリリースした初ソロ作『Tiyul』にも収録されていた非常に個性的な旋律を持った印象的な曲。(6)「Cachi」も中東〜アンダルシアの音楽が豊かに混在したような抒情的なジャズで素晴らしい。
唯一のカヴァーであるラストの(9)「A Man Within Himself」は、イスラエル・ロック史の最重要ミュージシャンであるシャローム・ハノフ(Shalom Hanoch)の代表曲。
アルバムはイスラエル出身のクラリネット奏者、アナット・コーエン(Anat Cohen)が2005年に設立した米国の独立系レーベル、Anzic Records からリリースされた。
GTO Trio プロフィール
ピアノのガディ・レハヴィ(Gadi Lehavi)は1996年テルアビブ生まれ。幼い頃より聴いた音楽をすぐさま再現する才能から“神童”と呼ばれ、8歳からクラシック・ピアノと音楽理論を学び始める。11歳でイスラエルの名門リモン音楽学校に入学。12歳で紅海ジャズ・フェスティヴァルに出演し、13歳で米国のバークリー音楽大学5週間プログラム全額奨学金を得て渡米し、チック・コリア、ボビー・マクファーリン、ロン・カーター、カート・ローゼンウィンケル、エディ・ゴメスといった錚々たる音楽家らと共演を重ねてきた。
ベースのタル・マシアハ(Tal Mashiach)はイスラエル北部の村ハラシムに1993年に生まれた。10歳からクラシックギターを習い、17歳でコントラバスを学び始め、エルサレム音楽アカデミーのクラッシックギター・コンクール国内部門第1位(2011 年)など数々の賞を受賞。テルアビブにあるイスラエル音楽学校でジャズを専攻したあと、クラシックとジャズの研究のための「アメリカ – イスラエル文化財団」からの年間奨学金を得てニューヨークの名門音楽学校ニュースクールに留学。
ドラムスのオフリ・ネヘミヤ(Ofri Nehemya)は1994年生まれ。ドラマーの父親、歌手の母親という家庭に育ち、彼も3歳からドラムスを始めすぐにその才能を開花させた。幼少期には3年間ピアノのレッスンも受け、その後テルマ・イェリン高等学校から米国バークリー音楽大学に進学。在学中にはイスラエルを代表するベーシストのアヴィシャイ・コーエンとツアーや録音を行なっている。これまでにシャイ・マエストロ・トリオを始め、国内外のさまざまなミュージシャンと共演するファースト・コールとなっている。
3人はもともと、2012年に結成されたオフリ・ネヘミヤ・カルテットで共演しており、2013年にエルサレムで開催された「インターナショナル・ミュージック・ショーケース・フェスティヴァル」に出演。アヴィシャイ・コーエンがプロデュースしたイスラエルの最新トレンドを紹介するオムニバス盤『All Original』(2014年)に同カルテットの曲が2曲収録されるなど早くから注目を集めた。
Gadi Lehavi – piano
Tal Mashiach – double bass
Ofri Nehemya – drums