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アメリカ合衆国

  • 2025-07-30
  • 2025-07-29

混沌の1930年代に芽生えた希望を現代社会に重ねる先鋭ジャズ・オクテット作『For These Streets』

キューバにルーツを持つトランペット奏者/作曲家アダム・オファーリル(Adam O'Farrill)が、気鋭の女性ギタリストのメアリー・ハルヴォーソン(Mary Halvorson)や革新的な女性ヴィブラフォン奏者パトリシア・ブレナン(Patricia Brennan)らを擁するオクテットでの新作『For These Streets』をリリースした。今作は1930年代の芸術、文化、社会的背景をテーマとし、現代的な感覚で再構築を試みた作品だ。

  • 2025-07-29
  • 2025-08-02

逆境とトラウマを乗り越え、現代ジャズシーンで注目を浴びるミレーナ・カサド 話題のデビュー作

『Reflection Of Another Self』は、スペイン出身で現在はニューヨークのジャズシーンで活躍するトランペット/フリューゲルホルン奏者ミレーナ・カサド(Milena Casado)の初リーダー作。自身のアイデンティティやトラウマ、自己発見を深く掘り下げた個人的なプロジェクトであり、伝統的なジャズと実験的なエレクトロニック音楽のテクスチャーを融合させた非凡な感性で創られた繊細なアルバムだ。

  • 2025-07-25
  • 2025-07-24

レトロな雰囲気が心地よい、シカゴ発アンビエント・ジャズ。Resavoir & Matt Gold『Horizon』

シカゴを拠点とする二人のマルチ奏者/作曲家、ウィル・ミラー(Will Miller)とマット・ゴールド(Matt Gold)のコラボレーション・アルバム『Horizon』。彼らの60〜70年代のブラジル音楽への深い愛情を基盤に、そのメランコリックな雰囲気や精神性を現在のシカゴの音楽シーンの音響感覚で再解釈したものとなっている。ジャズ、アンビエント、フォーク、クラシカルといった多様な要素が融合した穏やかで瞑想的なサウンドスケープが心地よい作品だ。

  • 2025-07-21
  • 2025-07-21

シカゴ出身、マルセイユで文化の多様性を吸収したロブ・クリアフィールド、初のリーダー作

マカヤ・マクレイヴン(Makaya McCraven)のバンドでの活躍などで知られるピアニスト/作曲家のロブ・クリアフィールド(Rob Clearfield)による初のリーダー作『Voice in the Wilderness』。ピアノトリオを中心に、いくつかの曲ではトランペット奏者イタマール・ボロホフ(Itamar Borochov)も参加し、オーセンティックなスタイルから、クラシックの影響を受けたヨーロピアンな雰囲気を持つ演奏まで、幅広いジャズを聴かせてくれる好盤だ。

  • 2025-07-11
  • 2025-07-12

NYで生まれた奇跡の魔法。アダム・ニーリー&ラウ・ノア、親密なデュオの対話が紡ぐ秘密の音楽

YouTubeでの活動などを通じて、ジャズの領域だけでなく多様なファンを獲得した人気ベーシストのアダム・ニーリー(Adam Neely)と、カタルーニャ出身で独自の現代ギター音楽を探求し、ジェイコブ・コリアーやシルビア・ペレス・クルス、シャイ・マエストロといった世界中の音楽家たちと共演するギタリストのラウ・ノア(Lau Noah)が、デュオによるEP『The Way Under』をリリースした。

  • 2025-07-08
  • 2025-07-07

パキスタン系米国人ギター奏者、レズ・アバシ新譜はスピリチュアル・アコースティック・ジャズ

パキスタン出身、米国育ちの熟練のギタリスト/作曲家レズ・アバシ(Rez Abbasi)の新譜『Sound Remains』がリリースされた。今作は国際的に高い評価を受けるRAAQに、ジョージア生まれのパーカッション奏者ハサン・バクル(Hasan Bakr)を加えた編成となっており、レズ・アバシが全編で弾くスティール弦のアコースティック・ギターと米国出身のビル・ウェア(Bill Ware)のヴィブラフォンをサウンドの中心に据えた、他ではなかなか味わうことの難しいジャズのサウンドを聴かせてくれる逸品だ。

  • 2025-07-04
  • 2025-07-03

シカゴのコルネット奏者/即興芸術家ベン・ラマー・ゲイ、現実の不条理に抗う新譜『Yowzers』

米国シカゴのシンガーソングライター/コルネット奏者のベン・ラマー・ゲイ(Ben LaMar Gay)が新譜 『Yowzers』をリリースした。アルバムのタイトルは驚き、興奮、喜び、あるいは時にはショックや不快感といった強い感情を表す間投詞で、日本語でいうと「おお!」「やべー!」といったニュアンスを持った英語のスラング。彼によると、このタイトルは現代社会の不条理や、環境的・社会的な課題に直面したときの感情を表現したものだという。

  • 2025-07-02
  • 2025-07-02

鬼才ジェネヴィーヴ・アルタディ新章!ビッグバンドとの共演で新たなマイルストーンを刻む『Another Leaf』

ノウワー(Knower)のヴォーカリストとして知られるSSW、ジェネヴィーヴ・アルタディ(Genevieve Artadi)が新譜『Another Leaf』をリリースした。今作はスウェーデンのノルボッテン・ビッグバンド(Norrbotten Big Band)との共演となっており、彼女の過去作からの再演曲を中心に、迫力あるアレンジが施されたジェネヴィーヴ・ワールドの新章を堪能できるアルバムとなっている。ノウワーの相棒であるドラマーのルイス・コール(Louis Cole)も半分以上のトラックで参加しており、実質的にはノウワーの新作と言ってもよい素晴らしい内容だ。

  • 2025-06-29
  • 2025-06-29

ペルシャとクルドにルーツを持つ新星SSWエラナ・サッソン、伝統文化と現代ジャズを繋ぐ美しい対話

ペルシャとクルドをルーツに持つアメリカ生まれ・スペイン在住の歌手/作曲家エラナ・サッソン(Elana Sasson)の2作目のアルバム『In Between』は、自身のルーツである中東音楽をベースに、現代ジャズやラテン、地中海音楽の要素も交えた作品。バンドはコロンビア出身のピアニスト、サンティアゴ・ベルテル、キプロス出身のベース奏者マノス・ストラティス、そしてベルギー出身のドラムス奏者ヴィクトール・ゴルトシュミットの国際色豊かなトリオ編成を中心としており、穏やかなジャズに乗せて歌う抒情詩のような美しさが印象的なアルバムとなっている。

  • 2025-06-27
  • 2025-06-27

気鋭ヴァイブ奏者サーシャ・ベルリナー、ジャズの虚像へのアンチテーゼを表現する新譜『Fantôme』

アメリカ合衆国の気鋭ヴィブラフォン奏者、サーシャ・ベルリナー(Sasha Berliner)はフランス語で「幻影」を意味するタイトルの新作『Fantôme』で、音楽を自由に表現し、伝統や現代性といった二元論にとらわれず、純粋に「あるがまま」の音楽を受け入れることを訴えている。ジャズという音楽は遥か昔からとかく批評の対象となり、外野によってあるべき姿、あるべきでない姿を語られ、それがある種の権威性に結びついたりする悪しき伝統があるが、彼女は従来の価値観に捉われカテゴライズをするのではなく、音楽をあるがまま受け入れてほしいと願う。

  • 2025-06-23
  • 2025-06-23

トルコ文化の革新的継承者メフメト・アリ・サンルコル、独創的な微分音鍵盤も用いた新譜

ジャズの文脈から自身のルーツであるトルコ音楽にアプローチする異才ピアニスト/作曲家メフメト・アリ・サンルコル(Mehmet Ali Sanlıkol)による2025年新譜『7 Shades of Melancholia』。トルコの伝統的な旋法であるマカームを演奏するために自身で開発したデジタル微分音キーボード「ルネッサンス17」も用い、民謡や詩、映画に至るまで、トルコ文化に深く根付いたメランコリーにインスピレーションを得た悲しみと美しさを同時に捉えた稀有な音楽体験を与えてくれる作品だ。

  • 2025-06-15
  • 2025-06-12

現代ジャズを象徴するバンド Kneebody、ベーシスト脱退の一大事を驚くべき発想で埋めた『Reach』

四半世紀にわたるキャリアとなった米国の現代ジャズを代表するバンド、ニーバディ(Kneebody)が6年ぶりとなる新作『Reach』をリリースした。今作は2001年のバンド結成時から低音を支えたベーシストのカヴェ・ラステガーが外部プロジェクトへの参加によって多忙を極めたことを理由に2023年にバンドを脱退して以降の初の作品となっており、ドラマーのネイト・ウッド(Nate Wood)がドラムスとベースを兼任するという割と非常識なカルテット編成での最初の録音となっている。

  • 2025-06-13
  • 2025-06-12

16分音符が乱舞! ベラ・フレック、エドマール・カスタネーダ、アントニオ・サンチェスによる驚異のトリオ

予想外の組み合わせのトリオが登場した。これだからジャズは面白い!今作『BEATrio』は、米国のバンジョー奏者ベラ・フレック(Béla Fleck)、コロンビア出身のアルパ奏者エドマール・カスタネーダ(Edmar Castañeda)、そしてメキシコ出身のドラマー、アントニオ・サンチェス(Antonio Sánchez)の3人による野心的なプロジェクトだ。ブルーグラスやラテンの影響を強く受けた熱狂的なジャズは、これ以上ないくらいの楽しい音楽体験になる。

  • 2025-06-11
  • 2025-06-13

EDM新時代を象徴する多才なデュオ、Sofi Tukker の新境地!新譜は全編、超良質なブラジル音楽

ニューヨークを拠点とする男女デュオ、ソフィ・タッカー(Sofi Tukker)が、2024年の前作『BREAD』の“ジャズ風の別人格”と呼ぶ新譜『butter』をリリースした。今作は『BREAD』収録曲の再構築が中心となっており、彼らのアイデンティティであるEDM1から一歩離れ、ブラジル音楽への深いリスペクトを根底に持つオーガニックなサウンドが特長で、ブラジルからは人気SSWのシウヴァ(Silva)やセウ・ジョルジ(Seu Jorge)、リニケル(Liniker)といったゲストを迎え、彼らの新境地を見せている。