アラバマ・シェイクスのブリタニー・ハワード、衝撃的ソロデビュー作
2011年にデビュー作となる4曲入りEP『Alabama Shakes』をリリースして以降、シーンに衝撃を与える鮮烈なサウンドや個性であっという間に頂点に登りつめたアラバマ・シェイクス(Alabama Shakes)。そのリーダーであり、ヴォーカリスト/ギタリストのブリタニー・ハワード(Brittany Howard)がソロアルバム『Jaime』を発表した。タイトルには病気のため13歳でこの世を去った4歳年上の姉の名が冠されている。
ブリタニー・ハワードはこの素晴らしいソロデビュー作の中で、アラバマ・シェイクスでは抑制していた個人的な感情を一気に解き放った印象だ。
奇抜なサウンドに乗せて歌われる歌は人種差別、政治問題、宗教といったようなアメリカ社会に確実に存在していながら、多くの人間が直視しようとしない事柄について彼女の個人的な経験や視点を大胆に晒け出している。
父親の車の後部座席に何者かによって置かれた羊の頭という過去のトラウマについて歌われた(9)「Goat Head」は特に鮮烈な印象を与える。彼女の父親は黒人、母親は白人だ。幼い日のブリタニーは、混血というだけで自身のアイデンティティを脅かされ、社会に対して不条理を感じてきたのだろう…。
奇妙にノイジーなサウンド処理がされた(7)「13th Century Metal」も非常に感じ入るものがある。彼女のポエトリー・リーディングが軸となる楽曲だが、彼女は「私たちは皆兄弟であり、姉妹だ(We are all brothers and sisters)」「愛に捧げる(Give it to love)」といった歌詞を連呼する。
ロバート・グラスパー、ネイト・スミスも参加
アルバムはロック、ソウル、R&B、ジャズといった要素が入り乱れ、もはやジャンル分けが無意味なレベルに達した独特のサウンドだ。特筆すべきはロバート・グラスパー(Robert Glasper, key)、ネイト・スミス(Nate Smith, ds)の全面参加。ジャズの最先端をゆく彼らの参加は、このアルバムに驚くほど大きな効果をもたらしている。
特にドラムスのネイト・スミスの存在感はすごい。(1)の冒頭で叩き出す重いグルーヴはアラバマ・シェイクスにはなかったものだ。ネイト・スミスの裏拍のタイム感はやはり独特で、ぎりぎりまで引っ張って叩くスネアの野性味が、ブリタニー・ハワードの個性とも相まって恐ろしいくらいにはまっている。
(7)「13th Century Metal」は、ロバート・グラスパーとネイト・スミスとのジャム・セッションから誕生した曲とのことで、作曲者としてブリタニーと並び二人の名がクレジットされている。
現代最高峰のSSW、ブリタニー・ハワードの進撃は止まらない。